2022年1月24日(月)
第6波 保健所は今
拠点・職員増やして
「その日のうちに対応できない」
新型コロナウイルス感染症が第5波を超える勢いでいま、広がっています。「いつまで続くのか」…。感染者が増え続け、先が見えない保健所職員らは不安を抱えています。(小林圭子)
|
連絡3日がかり 東京
感染の急拡大で、保健所が新規感染者に聞き取りを行うための連絡が滞っています。東京都は、感染経路や濃厚接触者などを特定する疫学調査を縮小する方針を決めました。
保健師の西川佳代さん=仮名=が応援に入る都内の保健所では、「18日は新規感染数が400件近くあり、2日後の20日にやっと18日分が終わった」といいます。
保健所の予防課職員は約20人で、応援に入る職員は50人以上です。保健師のほかに歯科衛生士や栄養士、役所の事務職員がいるといいます。
患者の療養先の決定を最優先にして、調査項目を最低限にしぼっています。「1人あたり10分を目安にするよう指示されました」
調査では氏名などの基本情報を確認し、発症日、症状、基礎疾患、同居家族、配食やパルスオキシメーターの必要の有無を聞き取ります。最低でも20分以上はかかるといいます。
不安で話を聞いてほしい人や日本語がわからない外国人もいます。「調査の連絡をお待たせしていることが申し訳ない。少しでも早く症状を確認して安心させたい。でも、調査を10分に縮小することは無理です」
調査は朝8時半から夜8時まで約12時間つづき、休憩もろくに取れない状況です。
感染者は次々に増えピークが見えません。現場では「どこまで、いつまで続くのか。約2年間、毎日遅くまで同じことを繰り返している」と疲弊の声が上がります。感染者への連絡を終えても、事後処理などで帰宅が深夜近くになる職員も。
全国の保健所は、1996年度の845から470に減らされました。東京23区では53から23に削減されています。
「保健所が半減されたことが大きな問題です。拠点を増やし職員を確保してほしい。公衆衛生の体制をつくり直してほしいです」
現場から陽性者 大阪
1日あたりの新規感染者数が連日、過去最高を更新している大阪府。大阪府関係職員労働組合がつくる保健所職員らの交流サイトには、朝から深夜遅くまで現場の悲痛な声が届きます。
「夜9時を過ぎて100件近い新規感染者の報告が届くので、とてもその日のうちに対応できない」「子どもが休校になったけど休めずに連日遅くまで残っています」…。
小松康則執行委員長は「濃厚接触者への対応など府の方針がコロコロ変わり、そのたびに保健所は振り回されている」と指摘します。府の方針が定まらず、住民から自宅療養の期間や濃厚接触者の待機期間などの問い合わせも多いといいます。
現場からは「連日100人、150人と陽性者が増え、必死に頑張っても対応が追いつかなくなっている。職員の中にも陽性者、濃厚接触者が出て、さらに体制が取れなくなっている」という悲鳴も。保健所では感染症のノロウイルスや結核の発生の対応など他にもやるべきことが多くあります。
府職労は昨年末、府に対し第6波に備えた応援体制の整備などを要請。第5波と比べ、早期に応援職員が各保健所に3人配置され、今は6人が配置されています。
しかし、小松委員長は現場は回っていないといいます。「国や府はこれまでに公務員を減らしてきた。抜本的に職員を増やし体制の強化が必要だ」と訴えます。