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2022年2月15日(火)

主張

トンネルじん肺

被害根絶と補償基金の創設を

 トンネル建設工事に従事して粉じんを吸い込み、じん肺を発症した元労働者ら62人が工事元請けのゼネコン69社に損害賠償と被害根絶などを求め全国7地裁にいっせい提訴しました。原告は被害補償基金の創設、そのための救済法制定を強く求めています。ところが、ゼネコン各社は基金に反対し法制化に背を向けています。全ての被害者の救済を迅速に進めるには、裁判を経ない仕組みをつくることが必要です。ゼネコン各社は姿勢を改め、基金創設に応じ、被害を引き起こした企業としての責任を果たすべきです。

問われるゼネコンの責任

 じん肺は、土ぼこりや金属・鉱物の粉じんなどを長年にわたり大量に吸引することで発症します。肺組織が線維化し、せきやたんが続き、呼吸困難を引き起こします。防じん対策や健康管理が不十分な労働環境に置かれた労働者が発病し、最古の職業病といわれています。症状は時間をかけて不可逆的に進行し、肺がんなどの合併症を伴うことも少なくありません。

 有効な治療方法はなく、重症化すると酸素ボンベを手放せず、横になって寝ることもできないほどの苦しみをもたらします。労災の適用対象ですが、苦痛に対する補償の仕組みはありません。

 鉄道や道路などのトンネル工事に従事し、じん肺になった労働者は相当な人数にのぼります。企業や国がじん肺に侵された労働者に謝罪も補償もしない中で、「泣き寝入りできない」と患者らが立ち上がり1980年代末からトンネルじん肺訴訟などを提起して全国各地でたたかいました。これまでの訴訟では、元請け企業であるゼネコンの安全配慮義務違反の司法判断をかちとり、和解を成立させて和解金支払いの統一基準を確立しました。

 国の責任をめぐっては、じん肺を防ぐ規制権限を行使してこなかったことを認める原告勝利の判決をかちとりました。判決を受けて、国が防じん対策の改善を約束して和解し、規制や対策の強化が進められるようになりました。

 しかし、裁判を起こさない患者は補償されません。裁判で賠償請求するには、元労働者が一つ一つの工事現場の作業歴の立証責任を負わされます。トンネル建設に携わった労働者は、掘削現場を転々とする出稼ぎが圧倒的に多く、職歴を証明するには、大変な時間と労力がかかります。発症するまで長い時間がたったことによって、必要な資料が散逸していたケースもあります。裁判を起こしても解決されないまま亡くなる原告も生まれています。裁判によらない救済の仕組みを急いでつくらなくてはなりません。

先延ばしは許されない

 全国トンネルじん肺根絶原告団・弁護団が実現を求める救済法は、工事の元請けゼネコンが、過去の工事額に応じ資金を拠出して基金をつくり、迅速に補償を支払う制度です。業界全体でじん肺予防の徹底をはかる法的仕組みも設けます。同法案には与野党の大多数の国会議員が賛同しています。

 救済法成立を拒むゼネコン各社と業界団体・日本建設業連合会に道理はありません。基金創設に応じて謝罪と償いの立場を明確にすべきです。それこそが再発防止と被害根絶への道です。先延ばしはこれ以上許されません。


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