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2022年2月20日(日)

主張

米軍再編交付金

住民分断の卑劣な手法やめよ

 岸田文雄政権が推進する、沖縄県名護市辺野古や鹿児島県西之表市・馬毛島での新基地建設をめぐり、計画の受け入れや協力を表明した地元自治体に支払われる米軍再編交付金が大きな問題になっています。同交付金は、自治体に新基地建設を押し付けるための「アメとムチ」の道具です。憲法が保障する民主主義や地方自治を著しく侵害し、住民の間に深刻な対立・分断を持ち込むもので、在り方が根本から問われています。

極めて露骨な利益誘導

 再編交付金は、2007年に第1次安倍晋三政権が成立させた米軍再編特措法に基づきます。日米が06年に合意した米軍再編計画の対象となる米軍・自衛隊基地などの周辺市町村に対し、その進捗(しんちょく)状況に応じ交付金を支払います。

 交付の条件は、防衛大臣が「再編の円滑かつ確実な実施に資するため必要であると認めるとき」(同法)とされます。具体的には「市町村長が再編に一定の理解を表明し、市町村(の対応)において当該姿勢を保持している場合」(防衛省)としています。再編計画を容認するか、少なくとも黙認すれば莫大(ばくだい)なカネを落とすという、極めて露骨な利益誘導の仕組みです。

 同省自身、再編交付金は「再編によって生じる負担そのものの防止・軽減・緩和を目的とするものではない」と認めており、基地を抱える自治体へのこれまでの補助金などとは全く異質のものです。

 名護市では、10年に辺野古の新基地建設に反対する市長が誕生し、政府は再編交付金を停止しました。前市政が同交付金を見込んで進めていた公民館や体育館の整備など事業の多くは他の財源で賄ったものの、一部は中止せざるを得ませんでした。

 山口県岩国市では、再編計画に基づく米空母艦載機部隊の岩国基地移駐に市長が反対し、建設中の新市庁舎への補助金がカットされました。再編交付金も支払われないことになり、08年の市長選では容認派が当選しました。

 岸田政権は、米空母艦載機の着陸訓練の移転先として馬毛島に自衛隊の新基地を建設するため、西之表市に対し再編交付金をちらつかせ、計画の容認を迫っています。防衛省は地元関係者に22年度から10年間で総額290億円超を提示したとも報じられています。

 同省は昨年12月、馬毛島での新基地建設に伴い支払われる再編交付金などについて西之表市に説明しました。その資料では、辺野古の新基地建設を現市長が事実上容認している名護市で、同交付金によって学校給食が無償化されたことが宣伝材料に使われています。

重くのしかかる基地負担

 重大なのは、市長が反対しても政府が再編計画をやめないことです。辺野古でも埋め立て工事が続けられ、馬毛島では環境影響評価も終わっていないのに基地本体工事の入札公告が行われています。

 狙いは、民意を無視して建設をごり押しし、既成事実化を進め、再編交付金によって基地への依存から逃れられないようにすることです。その結果、これらの基地は、中国などとの戦争をにらんだ米軍や自衛隊の最前線拠点となり、過重な基地負担が住民にのしかかることになります。

 再編交付金に頼らない豊かで平和な町づくりと新基地断念を求める声を広げることが重要です。


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