2022年3月9日(水)
主張
ロシアの言論弾圧
侵略の事実隠蔽は許されない
ウクライナを侵略しているロシアのプーチン政権が国内の反戦デモを弾圧し、報道にも新たな抑圧を加えています。デモ参加者を拘束して国民を黙らせ、事実を隠蔽(いんぺい)しようとするのは、ウクライナ侵略に大義がないことの証明です。無法な行為を直ちにやめ、軍を撤退させるべきです。
内外の声恐れ強権振るう
ウクライナ侵略に抗議する大規模な行動が世界に広がり、ロシアの主要都市でも取り組まれています。首都モスクワ、第2の都市サンクトペテルブルクでもデモが行われ、人権団体によると、6日には65の都市・町で四千数百人が治安当局に拘束されました。警察官が警棒でデモ参加者を殴ったり蹴ったりする映像がSNSなどで拡散しています。
侵略反対の声が広がるなか、プーチン大統領は4日、ロシア軍に関して「偽情報」を流した記者に最高15年の禁錮刑を科す法律に署名しました。何が偽情報かを決めるのはロシア当局です。軍事行動の停止を呼びかけることや、軍の名誉を傷つける行為も刑罰の対象とされます。ウクライナ侵略をはじめ、政権や軍の行動に対する批判を強権的に封じようとしていることは明白です。
ロシア憲法は思想・言論の自由の保障、情報伝達の権利を明記しています。言論弾圧やデモ参加者に対する暴力は自国の憲法さえ無視する重大な人権侵害です。
海外メディアも取り締まりの対象とされています。記者に危険が及ぶことを避けるため、ロシアからの報道を中止する外国報道機関が相次いでいます。
偽情報を流しているのはプーチン政権の方です。ウクライナの原発に対する攻撃を同国の工作員の仕業などと何の根拠も示さずに主張して各国から批判されています。そもそも今回の侵略そのものがうそで塗り固められています。
ウクライナ東部の親ロシア勢力支配地域の「独立」を一方的に承認し「平和維持」のために派兵するという主張は開戦を正当化する口実にほかなりません。国連のグテレス事務総長は「一国の軍が同意なしに他国の領土に入るなら公正な平和維持部隊ではない」と一蹴しています。
ウクライナの政権指導者を「ネオナチ」と中傷し「非ナチ化」を要求するのも、デマ宣伝の上に政権転覆を狙っているからです。
侵略戦争は常に国民を欺き、真実を語る人を投獄、殺害して遂行されました。ナチスドイツや日本軍国主義はまさにそうして戦争を引き起こし、人類に惨害を与えました。国連憲章が世界平和の実現と人権尊重を目的に掲げたのは痛切な教訓を得たからです。
世論の力で戦争止めよう
今日の国際社会は、戦後の平和秩序を根底から覆そうとする暴挙を決して許しません。
国連人権理事会は4日の緊急会合で、ウクライナ侵略に伴う人権侵害調査委員会の設置を賛成多数で決議しました。理事会を構成する47カ国中32カ国が賛成し、反対はロシアを含むわずか2カ国でした。国連総会での非難決議に続きロシアはここでも孤立しました。
プーチン政権が戦争批判を厳罰で禁止したことはいかに世論に追い詰められているかを示しています。侵略反対の声で世界を覆うことが戦争を止める最大の力です。