2022年3月27日(日)
主張
雇用保険法改定案
国庫負担引き上げこそ必要だ
岸田文雄政権提出の雇用保険法改定案が参院で審議されています。国庫負担を引き下げる一方、労使が負担する雇用保険料を引き上げることが盛り込まれています。
雇用保険には、失業者の生活を守るとともに、雇用の安定、労働者の福祉の増進など大切な目的があります。コロナ禍で雇用保険の役割は、ますます大きくなっているにもかかわらず、改定案は逆行した内容です。改定案は撤回し、雇用保険制度を抜本的に拡充することが求められます。
許されぬ国の責任放棄
改定案は、雇用保険への国庫負担率を原則25%から原則2・5%にするとしています。
政府は2007年の法改定で国庫負担の割合を暫定措置として13・75%にし、17年も暫定措置として2・5%に引き下げる法改定を行いました。今度の改定で、雇用情勢などが悪化したときのみ25%にし、それ以外は2・5%が原則となります。
国庫負担は、失業が政府の経済・雇用政策と密接にかかわっていることから、政府が責任を果たすべきとの考えにもとづいています。
政府は「機動的」に対応するためといいますが、時々の雇用情勢によって国の責任の所在が大きくなったり、小さくなったりするものではありません。
2年前、雇用保険法改定を審議した衆参の厚生労働委員会では、早期に財源を確保し、25%に戻すことを求める付帯決議をしています。2・5%を原則とするのは明白な決議違反であり、国の責任放棄です。
一方、失業給付も03年の法改定で、引き下げられました。厚労省は、国庫負担率を25%にした場合、失業給付は1人当たり月3万5千円増額できると試算しています。国庫負担を本則に戻し、給付を引き上げるべきです。
改定案では雇用保険料も労働者と企業の双方で引き上げます。
労働者の負担は10月に賃金の0・3%から0・5%に上げます。月収30万円の労働者の場合、現在の月900円の保険料から、月1500円に負担が増えます。
企業の負担は、企業のみが負担する雇用保険2事業(雇用調整助成金などの雇用安定事業と能力開発事業)の保険料率を4月に現在の0・3%から0・35%にします。企業の負担は、労使折半分と合わせて0・85%になります。
雇用保険料の引き上げによる労働者の負担増は、春闘の賃上げ分が消えてしまいかねません。企業負担増はコロナ禍でダメージを受けている中小零細企業などにさらなる追い打ちをかけるものです。実施すべきではありません。
制度の抜本的拡充こそ
長引くコロナ禍で、雇用調整助成金などで救済対象を広げた半面、現行の雇用保険制度がセーフティーネットとして機能していないこともあらわになっています。フリーランスや短時間の非正規労働者などが雇用保険の対象からこぼれ落ちている問題も指摘されています。制度の見直しが不可欠です。
同時に、失業者が安心して仕事を探せるように、失業給付期間の延長や、受給資格の取得に要する加入期間の短縮、退職理由による失業給付の差別をなくすことなど拡充を図ることが必要です。