2022年4月4日(月)
主張
研究力危機の打開
大量雇い止めの放置許されぬ
自然科学や人文社会科学などの研究は、人類が直面する課題を解決するとともに未来社会をつくる基盤となります。ところが日本の研究力は危機にひんしています。
日本共産党の田村智子副委員長は3月28日の参院決算委員会で、科学や技術、経済の発展にかかわる重要な問題として、その打開は政治の責任だと提起しました。
運営費交付金削減の結果
各国の研究論文数で見ると中国や韓国が急速に伸ばし、欧米も右肩上がりの中で、日本だけが2000年代半ばに減少に転じています。質の高い論文数の世界ランキングでは04年に4位でしたが18年は11位に転落しました。論文数がとりわけ減少しているのは国立大学です。03年まで伸びていましたが、その後に大幅に減少します。
原因は、国立大学が04年に法人化され、人件費や自由な研究費にあてられる運営費交付金が13年間減らされ続け、12%も削減されたことです。政府はその一方で競争的資金を増やしました。これでは短期的な成果が求められ、長期的な研究は困難です。国立大学の任期なしの常勤教員は01年に6万人弱でしたが、現在4万人まで減少し、代わりに任期付き教員が2万人以上増えました。
政府は、大学ファンドによる支援で研究力の向上を図るといいますが、わずか数校への支援です。研究力低下の根本的要因を取り除くことはできません。
田村氏が質問で「運営費交付金の削減で大学の財政基盤を掘り崩した。ここを変えなければ日本の研究力の向上などあり得ない」と迫ると、末松信介文部科学相は「重要な点をご指摘いただいた」「終身雇用を増やしていくことは重要」と答弁せざるを得ませんでした。
看過できないのは、研究者の雇用を不安定にする危機が迫っていることです。23年3月末、国立大学や国立研究機関で研究者の大量雇い止めがされようとしています。
雇用の安定を図るためとして労働契約法が改定され、非正規雇用の労働者は13年4月1日を起点として、雇用契約が通算5年を超えると本人の申し出により無期雇用に転換されます。研究職は特例法により通算10年とされました。任期付き研究者には23年4月に無期転換の権利が発生します。
ところが理化学研究所は、無期転換権を与えないために就業規則を一方的に変更し、10年の雇用上限を設けました。これは違法な不利益変更で、雇い止めの合理的な理由になりません。理研はあくまで、労働組合の要請を無視して約600人の雇い止めを強行する構えです。約60の研究室が含まれており、研究が中断し、研究装置が廃棄となり、所属する大学院生の学位取得も困難となる危険があります。
東北大学でも約240人が雇い止めの危険にあり、他大学からも同様の訴えが寄せられています。
人件費抑制などをやめよ
違法で大量の雇い止めを政府が放置するなら、日本の研究に未来はありません。社会全体にも無期転換逃れの雇い止めが横行します。文科相は「無期転換ルールの適切な運用について周知徹底を図る」と答えましたが、雇い止めを撤回させるまで指導すべきです。
研究力の回復は急務です。人件費抑制、雇用の非正規化を進めた新自由主義の転換が必要です。