2022年5月13日(金)
デモ敵視 安保法制前から
陸自、09年作成教科書に
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防衛省陸上幕僚監部が「反戦デモ」と「報道」を敵視する資料を作った問題で、少なくとも2015年まで使用されていた陸幕の教範(教科書)に、自衛隊の海外派兵に反対する国民の運動を「行動阻害勢力」とみなして「探知」し、「無力化」すると書かれていることが12日までに、分かりました。
15年に成立した安保法制は、敵国による武力攻撃に至らない事態を「グレーゾーン事態」と位置づけています。陸幕は、テロなどとともに「反戦デモ」と「報道」を「グレーゾーン事態」と文書に記載しています。
国会で鬼木誠防衛副大臣は「これまで、合法的に行われる反戦デモをグレーゾーンの事態の一つとして位置づけたことはない」と敵視したことがないかのような答弁をしています。しかし、この教範は、陸幕が安保法制以前から国民の運動を敵視していたことを示しています。
教範は、「しんぶん赤旗」日曜版が15年に情報公開請求で入手したもの。陸幕監部が09年11月に作成した「情報科運用(試行案)」で、情報科部隊関係の教科書とみられます。15年に日曜版が取材した際、防衛省は「現在、教育訓練において使用している」と認めています。
教範には「行動阻害勢力」という言葉がひんぱんに出てきます。「行動阻害勢力」とは、陸幕監部が11年6月に作成した資料『情報』によると、「国内において、自衛隊の作戦行動に反対し、その行動を阻害しようと企図する組織及び当該組織に所属する個人」を指すとしています。
行動阻害勢力について教範は「国内外において妨害、宣伝等を実施することから国内での状況とともに(中略)情報資料を収集する」としています。
また教範は、自衛隊の活動として「探知活動」とともに「無力化活動」があると明示。「無力化」とは、「敵部隊等の撃滅、施設・機材の破壊等により敵の情報・謀略活動そのものを排除する」と実力行使を含むものとなっています。
さらに「平時において収集・整理された膨大な情報資料があって初めてその活動を遂行することができる」と強調。自衛隊の国民監視部隊である情報保全隊の日常的な情報収集の必要性を記述しています。
教範と『情報』は、情報保全隊のプライバシー侵害を認めた国民監視の差し止め訴訟でも提出されました。
本紙は、防衛省に対し、現在、使用されている教科書の中で「反戦デモ」と「報道」は、探知活動と無力化活動の対象とされているのか、質問しました。12日までに防衛省は「確認中」としています。