2022年5月23日(月)
主張
世界の食料危機
侵略の即時停止と国際協力を
ロシアのウクライナ侵略の影響で世界の食料危機が悪化し、アフリカを中心に餓死の危険に直面する人が増えています。ロシアの責任は重大です。ただちに侵略をやめ、全軍が撤退しなければなりません。飢餓を防ぐには国際的な協力が必要です。各国は国連の呼びかけに応えて、食料供給の回復や人道支援に力を尽くすべきです。
飢餓から救う支援が急務
世界食糧計画(WFP)によると、飢餓の瀬戸際にある人はコロナ危機前の1億3500万人から今年初めには過去最多の2億7600万人に倍増しました。ロシアのウクライナ侵略によってさらに4700万人増えると警告しています。
世界の農業生産は近年、干ばつや巨大な暴風雨など異常気象の被害を受けてきました。コロナ危機は食料の生産・供給に打撃を与えるとともに、所得が減って食料を十分手に入れられない人を増やしました。ロシアの侵略はこの状態を一段と悪化させました。
ロシアとウクライナは合わせて世界の小麦輸出の3割を占めています。化学肥料の原料であるカリウムの有数の輸出国です。
しかし侵略は農地を破壊し、侵攻された地域では春の作付けができませんでした。ウクライナの南部海域が封鎖され、積み出し港が攻撃を受けたことで輸出も妨げられています。
国際市場で農産物価格が高騰し、国連食糧農業機関(FAO)が公表している食料価格指数は3月には、基準としている2014~16年平均の1・6倍に達し、過去最高となりました。ロシアが経済制裁に対抗するため、食料の輸出制限を示唆していることも価格をつり上げています。
影響は経済的に貧しい国ほど深刻です。エチオピア、マダガスカル南部、南スーダン、イエメンについてWFPは餓死を防ぐ緊急の行動が必要だとしています。
国連児童基金(ユニセフ)によると、世界で少なくとも1360万人の5歳未満児が栄養不足で重度の衰弱状態です。お金を得る目的での少女の強制結婚や学校へ行けない児童も増えかねないと指摘されています。
18日には国連で世界の食料安全保障に関する閣僚会合が開かれ、グテレス事務総長がロシアにウクライナからの穀物輸出を妨げないことやロシア産農産物・肥料に輸出制限をかけないことを求めました。世界各国には途上国への食料支援、生活インフラ整備への協力、政府開発援助(ODA)の増額、自国での食料増産を呼びかけました。
日本も要請に積極的に応えるべきです。また、今こそ海外依存をやめ、抜本的な食料増産に踏み切らなければなりません。農業経営への支援強化が不可欠です。
日本は海外依存転換せよ
岸田文雄政権は「食料安全保障の強化」を言いますが、史上最低の37%に落ち込んだ食料自給率の向上について首相は今年の施政方針演説で言及しませんでした。米価大暴落を放置し、麦や大豆の生産に欠かせない水田活用交付金の大幅カットまで進めています。世界が食料不足にある中で国産を減らすことは許されません。
農業を国の基幹産業に位置づけ、食料自給率を早期に50%に回復することが重要な国際貢献です。