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2022年5月24日(火)

主張

日米首脳会談

平和も国民生活も壊す約束だ

 岸田文雄首相が、来日中のバイデン米大統領と会談しました。会談やその後に発表された共同声明で、岸田氏は「敵基地攻撃能力」の保有検討をはじめ軍事力の抜本的強化と軍事費の大幅増額を図ることをバイデン氏に約束しました。日米同盟をいっそう強固にし、覇権主義の行動を強める中国に対抗するためです。中国の覇権主義に断固反対するのは当然です。しかし、軍事力のさらなる強化に乗り出せば、果てしない「軍事対軍事」の悪循環を生み、戦争の危機につながりかねません。東アジアの平和に逆行する危険な戦略に突き進むことは許されません。

軍事費「相当の増額」へ

 岸田氏は会談で「日米同盟の抑止力と対処力」を強めるため、「日本の防衛力を抜本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する」と表明しました。さらに、ミサイルの脅威に対する「反撃能力」を含め、あらゆる選択肢を検討するとバイデン氏に説明したといいます。

 これは、岸田政権が年末に予定する「国家安全保障戦略」改定に向けての自民党の提言を踏まえたものです。

 同党の提言は、相手国のミサイル発射拠点を直接たたく「敵基地攻撃能力」の名称を「反撃能力」に変えてその保有を求め、「反撃」の対象を「敵基地」だけではなく「指揮統制機能等」にまで広げるもので、全面戦争につながる危険極まりない内容です。

 提言はまた、対GDP(国内総生産)比2%以上を念頭に置いた軍事費の増額も求めています。GDP比2%は11兆円超で、2022年度の日本の軍事予算5兆4000億円の2倍以上になります。その財源として消費税の増税などが強行されることになれば、国民生活が大きく圧迫されるのは間違いありません。

 会談で両氏が、米国の核戦力による「拡大抑止」、日本への「核の傘」の提供が「信頼でき、強靱(きょうじん)なものであり続けることを確保することの決定的な重要性を確認した」としていることも重大です。

 核兵器による「抑止」とは、核戦力によって相手国が核攻撃することを思いとどまらせるという議論です。相手国が核攻撃してきたいざという時には、核の報復でこたえるというものです。核兵器の使用を前提にし、広島・長崎のような非人道的な惨禍が再び起こるのも辞さないということにほかなりません。

 しかも、ロシアによるウクライナ侵略をめぐり、自国民に犠牲が出ても核の使用をためらわない姿勢をあらわにするプーチン大統領の登場によって、「核抑止」論はますます無力になっています。

「核抑止」にしがみつく

 岸田氏は会談後の記者会見で、日本が議長国を務める来年の主要7カ国首脳会議の開催場所を広島にすることを明らかにしました。「核兵器の惨禍を人類が二度と起こさない」との誓いを世界に示すためだと述べました。しかし、そうした立場と、「核抑止」にしがみつく立場は決して両立しません。共同声明は中国に対し核軍縮への取り組みも求めていますが、通用するものではありません。

 今、日本に必要なのは、「核抑止」論から抜け出し、核兵器禁止条約に参加することであり、憲法9条を生かした外交で東アジアに平和をつくることです。


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