2022年5月30日(月)
NHK「日曜討論」 小池書記局長の発言
日本共産党の小池晃書記局長は29日のNHK「日曜討論」で、ウクライナ危機のもとでの安全保障政策などについて各党の代表者と議論しました。小池氏の発言は次の通りです。
ウクライナ危機と安全保障
地域のすべての国包摂する集団的安全保障の枠組みを東アジアで
「ウクライナ危機で浮き彫りになった日本の安全保障上の課題をどう考えるか」というテーマで、自民党の小野寺五典・安全保障調査会長(元防衛相)は「いくら平和といっても、ロシアのような国がある以上、防衛力をしっかり整備し、同じ考えを持つ国と連帯を組むことが重要だ」と話しました。
国民民主党の大塚耕平代表代行は「自分の国は自分で守るという公約を発表しているし、必要な防衛費は増やす必要がある」と述べました。
これに対し小池氏は「政治の最大の役割は戦争を未然に防ぐ外交努力だ」と述べたうえで、「これまでの議論に外交がほとんど出てこない」と指摘しました。その上で、米中韓ロなど関係各国を巻き込み、徹底した対話で平和と協力の地域をつくる努力を重ねてきた東南アジア諸国連合(ASEAN)のとりくみを紹介。「地域のすべての国を包摂するような集団的安全保障の枠組みを東アジアでつくることが必要だ。日本は憲法9条を生かした積極的な外交で役割を果たすべきだ」と強調しました。
軍事費増額
GDP比2%なら11兆円超 世界第3位の軍事大国に――暮らしを押しつぶす
日米首脳会談で岸田文雄首相が「防衛費の相当な増額」を約束し、軍事費のGDP(国内総生産)比2%への増額という議論が続いていることについて、自民・小野寺氏は「防衛予算の増額という総理の発言は重要だ」と歓迎し、増額の金額については「積み上げてみないと分からない」とごまかしました。公明党の北側一雄副代表も「防衛費増額は避けて通れない。しっかり議論したい」と述べました。
立憲民主党の渡辺周・外交・安全保障・主権調査会会長代行は、条件付きで「防衛費の増額の議論はすべきだ」と発言。国民・大塚氏は「必要な防衛費は増やす必要がある」と述べました。維新の青柳仁士・外務・安全保障部会長は「防衛費は1%の枠にとらわれている。見直すべきだ」とあおりました。
小池氏は「積み上げる前に首相は『相当な』と言い、米国に約束している」と指摘。GDP比2%とは11兆円超で、世界第3位の軍事大国になってしまうと批判。「財源をどうするのか、首相は国会でまったく答えようとしない。安倍晋三元首相が言うように国債でまかなうとなると、戦前のような歯止めのない戦費調達につながる。日本を軍事対軍事の危険な道に引き込み、暮らしをも押しつぶしかねない」と警告しました。
さらに、「沖縄復帰50年にあたっての沖縄県の新しい建議書で基地のない平和な沖縄を言った直後に、それを一顧だにせず、辺野古の新基地建設で一致をしたということも許されない」と厳しく批判しました。
一方、自民・小野寺氏は「防衛費で必要なのは研究開発費だ。防衛分野の研究開発からいろいろな技術が出た」と主張しました。
これに対し、小池氏は「研究開発というなら研究開発そのものの予算削減をやめて、増額すべきだ」と反論。「教育費に対する公的支出はGDP比ではOECD平均は4・1%、日本は2・8%だ。そういうところにお金を使わずに、研究開発を防衛費増額のだしに使うべきでない」と主張しました。
また、防衛省の武器購入先の1位は常に米国政府で、FMS(有償援助)で米国言いなり価格の高額な兵器を購入することに参院で全会一致で警告決議があがっていることを指摘し、「アメリカ兵器の爆買いのための莫大(ばくだい)な費用を、さらに対米公約で増やしていくことなど、許されない」と語りました。
「敵基地攻撃能力」
安保法制下では先制攻撃に――相手が反撃すれば日本中に戦火が広がる
自民党や維新が主張する「敵基地攻撃能力」をめぐって、自民・小野寺氏は「日本が攻撃されたときの話だ」と弁明し、公明・北側氏は、自衛隊と米軍による「盾」と「矛」の関係に触れた上で「基本的な役割分担は変えないまでも、全く矛の能力を維持しないでいいのかが問われている」と理解を示しました。維新・青柳氏は「憲法の議論、専守防衛の定義の議論を逃げずにすべきだ」と主張しました。
小池氏は「与党の2人は“日本が攻撃された場合”とおっしゃったけど、それは2015年の安保法制までの話だ。安保法制のもとで、日本に対する直接の武力攻撃がなくても、同盟国への攻撃や、それへの着手があれば攻撃できるとされた。相手国からみれば日本の行為は先制攻撃となる。相手が反撃してくれば日本中に戦火が広がってしまう」と指摘しました。
また、「相手国に脅威を与えるような攻撃的兵器は保有できないというのが、これまでの憲法解釈だ。専守防衛の大原則を投げ捨て、相手国の基地だけでなく、指揮統制機能=中枢まで含めてたたくというのは9条のもとで到底許されるものではない」と強調。「維新が言うような9条改憲は、危険な道を何の制約もなく進めるためのもので、絶対に認められない」と主張しました。
自民・小野寺氏は「先制攻撃は国際法違反だし、専守防衛の考え方は堅持する」などと述べながら、「(日本が)平和といっても、ミサイルを撃ち込み、侵略する国があるのだから、まず自らの力を高めて攻撃されないよう抑止力もいる」と「敵基地攻撃能力」保有を主張しました。
小池氏は「先ほどの指摘に答えていない」と述べ、安保法制のもとでは日本に対する直接攻撃ではなくても、「存立危機事態」で日本が攻撃をするということになれば、日本に対する報復が及んでくると指摘し、「安保法制のもとで、ますます危険になっている」と主張しました。
自民・小野寺氏は「存立危機事態になっても必ず反撃能力を行使しないといけないということではない」と述べ、「敵基地攻撃能力」については「日本が攻撃を受けている場合だ」と繰り返しましたが、小池氏は「直接攻撃を受けていない場合もあり得るということだ」と主張しました。
「拡大抑止」、核軍縮
プーチン大統領の出現で核抑止力論は無力に――核禁条約への参加決断こそ
議論は「核兵器をめぐる現状」に。日米共同声明で米国の核戦力による「拡大抑止」の重要性を確認したことについて、小池氏は「拡大抑止とはいざとなったら核を使うことを前提とする議論で、『核兵器のない世界』に逆行するものだ」と批判。「核兵器は人類と共存できない、絶対に使ってはいけない悪魔の兵器だ」と力を込めました。
そのうえで、「ロシアのプーチン大統領のように核の先制使用をためらわない核大国の指導者が出ているもとで、核抑止力論は無力になっている」と強調。「世界は、核戦争を止めるため、核抑止と決別し核なき世界を目指す方向だ。核兵器禁止条約に86カ国が署名し、61カ国が批准しているのに、唯一の被爆国の日本がこれに背を向けている」と非難し、「6月に開かれる同条約の第1回締約国会議に日本政府は参加すべきだ。被爆の実相を世界に訴え、核禁条約に参加する決断をすべきだ」と述べました。
自民・小野寺氏は「核は悪魔の兵器というのは小池さんと同じだ」と言いつつ、「日本が核攻撃されないようにするためには、日米の関係で抑止を働かせるしかない」と核抑止力論に固執。公明・北側氏も「米の核抑止力は必要だ」と述べました。