2022年6月3日(金)
ウクライナの母子支えるワルシャワの幼稚園
難民も地域の仲間
ロシアによるウクライナ侵略から逃れ、新しく定住した母子をどのように支援するのか。ポーランドの首都ワルシャワでいち早く難民の雇用と児童の受け入れを表明した、ブロフィー区の民間幼稚園を訪ねました。(ワルシャワ=吉本博美 写真も)
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ワルシャワ中央駅からバスで約20分。新緑が茂る遊歩道を抜けた先に一面ガラス張りの建物が見えます。リハビリセンターやセラピー教室を併設する幼稚園です。
子ども守る仕事
優しい自然光が入り込む穏やかな園内。130人の児童のうち、10人がウクライナから逃れた難民です。
笑顔で出迎えてくれたマドレーナ・シクルスカ園長。「ニュースを見ると暗い気持ちにはなりますが、私の仕事は子どもたちを守ることだと、居てもたってもいられず児童の受け入れを始めました」と振り返ります。
ポーランドには一時避難所を経てすぐ別の国や地域に移動する難民もいる一方、受け入れ先の一般家庭や、借りたアパートで定住を始める人も多くいます。
「『難民だから助ける』ではなく、共に地域で暮らす仲間として支えているだけ」と話すシクルスカ園長。難民用のクラスは設けず、一般の子どもと同じように3~6歳の年齢別のクラスに所属しています。教室をのぞくとみんなで楽しそうに遊ぶ姿も見えました。
地域を知ってもらい、気分転換を兼ねたレクリエーションも大切な支援だといいます。ワルシャワ市内の博物館見学、ピクニック、ケーキ作り、イースター(復活祭)行事を企画。児童だけではなく、避難した母親たちにも参加を呼びかけました。
母親に寄り添う
「なぜなら母親のほうが精神的に不安定になりやすいからです。ウクライナに残る夫と離れ、幼児と外国で暮らすのは本当に大変なことです。子どもを預けた後に、私や保育士たちの前で泣くことも少なくありません」
「近況をよく聞き、困ったことはないか会うたびに尋ねる。ささいなことでも何かできたら褒め、共に喜ぶ。こうしたささいな積み重ねが、心の支えになるのだと感じています」
同園では財団法人ポーランド国際救援センター(PCPM)の難民雇用プログラムを通じて、職員の採用も始めました。英語教師として働きはじめたウクライナ難民のビータ・ラシュチュクさん(38)。西部リビウ近郊のストレミルシェ村から3人の子どもを連れて避難し、現在はポーランドの建設会社で働く夫の社宅で暮らしています。
支援団体による食べ物や生活物資に感謝しながら、いつまでも頼るわけにはいかないと就職活動を開始。「難民が仕事を得るのは難しいと感じました。ですが今は、かわいい子どもと素晴らしい先生たちに囲まれながら働けて幸せです」と、シクルスカ園長と目を合わせてほほ笑みました。
「親戚がリビウに残っているので、ウクライナには早く戻りたいです。皆が戦争について真剣に考え、中止を望めばきっと一日も早く終わると信じています」