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2022年6月4日(土)

ウクライナ 農業活動停滞

世界で飢餓3億人超も

国連WFP日本事務所代表 焼家直絵さん

 ロシアによるウクライナ侵略開始から3日で100日がたち、世界の食料危機がいっそう深刻化しています。戦争で食料輸送が遮断され、ウクライナ国内だけでなく海外への物流が滞っています。国連世界食糧計画(国連WFP)の焼家直絵(やきや・なおえ)日本事務所代表は、「解決へまったなしの状況」だと危機感を募らせています。(小林圭子)


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 ―ウクライナへの支援状況は。

 ウクライナの国内に避難している人だけで約800万人に上ります。WFPは、ウクライナ全体でこれまでに430万人に支援を届けました。支援は大きく分けて、食料配給と現金支給で、避難状況で異なります。

 スーパーなどで食料を購入できる地域には、経済の活性化も考慮し現金を支給しています。購入が困難な戦闘地には、物資を届けています。戦況変化や避難民の移動もあるので、しっかり調査し流動的に支援ができるようにしています。

 WFPの調査では、東部と南部の国内避難民の62%が食料不安を抱え、半数が食事の量を減らすといった手段を取っています。状況が悪化しているため、支援者数を1カ月あたり450万人に拡大する計画です。戦闘の長期化でインフラや輸送網がさらに破壊されることも懸念されます。

 子どもや障害者など立場の弱い人への支援の強化もしています。子ども向けに栄養面に配慮した食料支援や、孤立しがちな障害者施設への支援など、誰も取り残さないことが大切です。

種や肥料不足

 ―世界的な穀物地帯であるウクライナの農業が危機的な状況です。

 昨年収穫した在庫が出荷できずに残る状態で、そろそろ収穫の時期を迎えます。保管先がなく、このままでは収穫されず畑で腐ってしまう事態も考えられます。WFPでは、小麦を購入し、国内のベーカリーに配給する活動もしています。

 農業従事者が戦闘員となったり、種や肥料などが不足したりするなど農業活動が停滞しています。来年の収穫量が大きく減少することを心配しています。

 輸出の拠点であるオデッサ港が戦争で閉鎖されており、WFPは港の再開を求めています。ただ、戦闘が停止しても、海に機雷があるため、撤去をしなければ港に入れない状況です。ブルガリアやハンガリーなど陸上経路の開拓も模索されています。

食料価格高騰

 ―世界の食料支援にどのような影響が出ていますか。

 これまでWFPが購入する小麦の半分は、ウクライナ産でした。ウクライナは地理的に支援先へのアクセスが良いのです。他の国から購入する場合、輸送にさらに費用が掛かります。

 輸入の停滞や資金不足で、イエメンなど食料配給の量を半減せざるを得なかった地域もあります。支援で最低限の食事を維持していた人びとは、命の危険にさらされています。ウクライナ産の小麦の依存度が高いエチオピアなど東アフリカでは、過去40年で最悪の干ばつに見舞われています。自国の生産も落ちるなか、すでに多大な影響が出ています。

 WFPは、戦争が続けば世界で今後、急性飢餓が4700万人増加し、3億人を超えると予想しています。一方で、支援ニーズに対し資金不足が拡大しています。輸送費や食料価格の高騰により、運営コストは2019年比で1・5倍になっています。

 WFPは、ウクライナ危機以前から新型コロナウイルス感染症や気候危機・紛争による食料危機を警告していました。それがさらに加速してしまった。国際社会が連帯し、早期停戦を訴えるとともに、食料支援の重要性にもっと目を向けてほしいです。


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