2022年6月12日(日)
守ろうくらし 2022参院選
命・暮らしの守り手 ケア労働 賃上げを
政府策月9000円 全然足りない
長引く新型コロナウイルス感染症の流行は、自公政権が社会保障の改悪を重ね脆弱(ぜいじゃく)にしたことを浮き彫りにしました。命と暮らしを守るためには、ケア労働者の処遇改善、賃金引き上げが喫緊の課題です。(田中真聖)
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「(賃上げは)月4万円から5万円でなければ足りない」
名古屋市内の介護老人保健施設で働く介護福祉士の小島誠司さん(48)=同市=はそう語ります。ケア労働者に対する賃上げ制度は今年2月から始まりましたが、介護職員へはわずか月9000円の引き上げにとどまります。
他業種から転職し、勤続7年目の小島さん。月給は月5回の夜勤手当を含め、手取りで22万~23万円ほどです。コロナ禍でもテレワークできず、医療や介護など現場で、命や暮らしを守る職種であるにもかかわらず、賃金が低いことに憤ります。
「私は単身ですが、子どもがいるケア労働者は大変です。『子どもがやりたい習い事をさせられない』『私学受験したいといっても厳しい』といった声は一緒に働く同僚から聞こえてきます」
物価高に危惧
ロシアのウクライナ侵略などによる物価上昇で、今後ますますケア労働者やその家族の選択肢が狭まるのではと危惧します。
「生活必需品が上がれば、他の選択肢を削ることしか考えられなくなります。まして軍拡のために消費税を上げてケア労働者の給与は据え置くなど、もってのほかです」
小島さんが働く施設はコロナ第6波の時に利用者や職員複数が感染しました。
「利用者が感染してもすぐに入院できませんでした。多床部屋に入居する利用者は休憩室に隔離させるしかありませんでした。職員も感染したため残った職員の業務量は増えました。疲労は限界まで達し、毎日自宅までタクシーで帰りたくなるくらいでした」
自公政権による新自由主義的な政策で、介護分野をはじめとする社会保障分野は市場化が進められました。政府は「労働生産性の向上」として、介護施設の職員の配置基準を緩和し、IT技術の活用をねらいます。
「活用することは否定しませんが、それですべては補えないでしょう。2人体制の夜勤で1人の職員が休憩に入れば完全に1人です。夜間は転倒事故などが起きやすく、一晩で複数起きたときや救急搬送につながるような場合には休憩が取れなくなります」
高齢者施設での虐待など痛ましい事件が起きてしまう背景にも職員の人手不足が背景にあると語る小島さん。「『人を減らしてもシフトを回せるようにしよう』ではなく、余裕のある人員配置が求められます」
政治転換こそ
日本医療労働組合連合会(日本医労連)の森田進書記長は、ケア労働者の賃金引き上げについて「額面で9000円以上になっているところはほとんどないです。ふたを開ければ不十分なのは明らか」と指摘します。
介護は根本的に人と人との接触で成り立っているとした上で、「IT技術で部分的に活用できる側面があることは否定しません。でも機械が代行できる範囲は限られます。政府が進めるIT活用は人員削減の狙いが透けて見える」と批判します。
「今こそ人に対する投資が重要です。コロナ禍3年目を迎えても政府の無為無策は変わっていない。対策が打てる政治への転換が必要です」