2022年7月18日(月)
コロナ「第7波」
新規感染者11万人超 専門家はどう見る
検査拡充 早期治療へ転換を
「第7波」の到来―。参院選公示日の6月22日に全国で1万7182人にとどまっていた新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が、選挙期間後半に5万人を超え、16日には全国の新規感染者数11万675人となり、過去最多を更新しました。(田中智己)
急速な感染拡大について、専門家は感染力が強いオミクロン株の別系統「BA.2」から、さらに感染性が高いとされる「BA.5」への置き換わりを指摘します。
沖縄県でコロナ医療に携わる筑波大客員教授の徳田安春医師は、「BA.5」が免疫をすり抜ける性質をあげ、ワクチン接種をしていても感染することを強調。7~8月の感染拡大は、「かなり厳しい状況になる」と警戒感を募らせます。「重症者は少なくても軽症者が大量に発生すれば、結果的に医療崩壊につながる」
海外流入が加速
二木芳人昭和大教授は、オミクロン株の感染は重症化が少ないとした上で、「海外ではそういう状況のなかで経済活動を回していることもあって、(日本では)オミクロン株に対する警戒感が低下していた。それに伴う基本的な感染対策のゆるみがあった」と指摘します。6月1日以降、空港検疫など水際対策の緩和を一気に進めたことで、「外国からのBA.5」の流入を加速させたといいます。
二木氏は、社会経済活動の必要性を認める一方、「ウイルスは2週間に1度、変化する。常に変化をする相手だ。臨機応変に必要な対応も変化していく」と強調。ゲノム(遺伝子)解析によって、ウイルスの監視体制を維持する重要性を次のように語ります。
「新たな変異ウイルスが南アフリカやヨーロッパで広がってきていることは、わかっていた。アメリカでも一気に置き換わりが進んでいたことは、明らかだったにもかかわらず、日本の水際対策は一気に規制を緩め過ぎた。ゲノム解析など厳格な調査をして、規制を強めるのか、緩めるのか。そのタイミングを見極めていく必要がある」
ワクチン接種による感染力抑制の効果が低いとされる「BA.5」ですが、ワクチン接種をすることで重症化リスクを低くすることは可能だと指摘されています。しかし、東京大学医科研究所の佐藤佳教授らの研究によると、動物を使った実験ではウイルスが肺で増えやすい特徴が見られたとして、以前よりも「重症化リスクが高い可能性がある」ことがわかりました。
岸田文雄首相は14日の記者会見で、「現時点では行動制限することは考えていない」と表明しました。その背景について「いまのところ重症者や死亡者は低い水準にある」と述べ、これまでのコロナ対策を継続する考えを示しました。
アクセス不十分
こうした岸田政権の姿勢を専門家たちは、厳しく批判します。
徳田氏は「ウィズ検査」を提唱。無料検査を抜本的に拡充し、早期の治療へつなげる戦略へと転換すべきだといいます。しかし、現状では「検査へのアクセスが十分ではない」と指摘し、一部の治療薬についても一般のクリニックなどで簡単に投与できないなどの制限があることをこう批判します。「日本はアメリカ以上のワクチン接種率に到達したが、いままで検査を拡充することを怠ってきた。医療機関をパンクさせないために、いまやるべきは、検査・治療センターを各自治体につくり、検査と治療薬に誰もが簡単にアクセスできる体制を確立させることだ」
二木氏は「重症者数が増加してから慌てるのでは、これまでと同じことの繰り返しだ」と指摘します。その上で、行動規制を考える必要はあるものの、従来のような飲食店の営業時間短縮やアルコールの提供禁止などには「科学的根拠がない」と強調します。
「新規感染者が急拡大した後、重症患者は後追いで増える。増加した後に大変だと騒いでも手遅れだ。重症者病床が埋まらなければ大丈夫と甘く見ていれば、あっという間に満床になってしまう。だから、新規感染者数をある程度は抑制する必要はある。感染者を増やさないため何が効果的なのか。政府は科学的根拠に基づいた対策を打ち出すべきだ」