2022年8月12日(金)
首相 第7波対策語らず
医療者の苦闘 無視
岸田文雄首相は、改造内閣を発足させた10日夜の会見で「政策断行内閣」と自ら命名しました。新内閣の五つの重点課題を掲げる中で、第一に挙げたのは「防衛力の抜本強化」。猛威を振るう新型コロナ第7波への対応をあげたのはようやく4番目でした。
しかし、そこで語ったのは「コロナ対策の新たなフェーズへの移行と対応の強化」だけ。第7波については「現在、第7波の荒波の中から、少しずつ感染者数が減少に転ずる地域が出てきています。国民の皆さんのご協力、医療・福祉関係者のご努力に心から御礼を申し上げます」と述べるだけでした。驚くべきことに、第7波に対し政府としてとるべき対策の中身は何ら語らなかったのです。
既に過去最大の感染拡大となる中で、クラスター発生件数も救急搬送困難事例も2週連続で最多を更新し、死者が急増して過去最多に迫っています。感染しても必要な医療を受けられず、救急隊が搬送するべき病院を見つけられない医療崩壊の現実があります。岸田首相には、その中で苦しむ患者とその家族、医療関係者者らの苦闘が全く見えていません。
「少しずつ感染者が減少に転ずる地域が出て」いるなどと、楽観論を振りまく場合ではないのです。国民や医療者に「御礼」を言う前に、医療体制をどう強化するか、現在の感染爆発をどうやって抑え込んでいくかの戦略と具体策を語ることが政府の最大の責任のはずです。
オミクロン株の病毒性の低さやワクチンの普及などから、全体として重症化リスクが低下しても、感染爆発を許せば、重症者・死者の絶対数も増え、医療崩壊を引き起こすことは、第6波における岸田首相自らの失政からの教訓です。
感染を抑止し、医療体制を強化し、被害を最小限に食い止める対策を緊急に示すときであり、そのためにも国会を早期に開き、野党とも意見をたたかわせるべきです。(中祖寅一)