2022年8月12日(金)
2022NPT再検討会議に参加して
「核兵器のない世界」へ日本も
日本共産党 笠井亮衆院議員に聞く
日本共産党は1日から米ニューヨークの国連本部で開催中の第10回核不拡散条約(NPT)再検討会議に笠井亮衆院議員・国際委員会副責任者を団長とする代表団を派遣しました。NGO(非政府組織)セッションでの発言や会議議長らへの要請活動を終え帰国した同議員に聞きました。
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ロシアがウクライナ侵略で核兵器使用の脅しをかけ、他の核保有国も核戦力の維持・強化を図っている最中の緊迫する会議でした。
私たちは第1に、被爆者の声に真摯(しんし)に耳を傾け、核兵器の非人道性を共通認識とし、核兵器の使用も威嚇も断じて許されないという明確なメッセージを発すること、第2に、これまでの再検討会議で確認されてきたNPT第6条に基づく「核兵器のない世界」をめざす一連の合意を再確認し、実行に踏み出すことを強く求める要請を行い、前向きな成果を収めるよう力を尽くしました。原水爆禁止日本協議会(日本原水協)の土田弥生事務局次長、広島県被団協の佐久間邦彦理事長とも連携して活動しました。
一変 条約と市民社会の力
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再検討会議への私自身の参加は3度目ですが、5日間の活動を通じて肌で感じたのは、これまでと状況が一変していたことです。6月の核兵器禁止条約第1回締約国会議の「ウィーン宣言」に触れる国が相次ぎ、再検討会議の前進に結びつけようという流れが大きな影響を与えています。
「ロシアのウクライナ侵略、核威嚇は許されない」「人道的アプローチが最終文書に含まれるべき」「NPT第6条は核兵器のない世界への枠組みを提供し、核保有国は明確な約束をしたのだから実行しなければならない」との発言が相次ぎました。日本共産党の要請内容と響き合う流れを実感しました。
5日には、公式プログラムの一つ国連本会議場でNGOセッションがありました。被爆者や長崎の田上富久市長、世界の反核平和活動家や学者など21人が意見表明しました。トップに日本原水協が議長から指名され、私が大画面に映し出されて発言したのです。
このなかで核保有国が「核抑止力」論に固執していることを「理性の崩壊であり、その無法が許されるなら不拡散の枠組みも完全に崩壊する」と強調。原水爆禁止世界大会参加者の声を紹介し、再検討会議への要請をおこない、核兵器禁止条約をNPT履行の努力として尊重することを求め、大きな拍手を受けました。
「日本共産党国会議員が国連本会議場で発言するのは史上初」といわれましたが、何より市民社会と日本原水協の国際的地位と役割が画期的に大きくなっている変化を感じさせるセッションでした。
白熱 ロシア副代表と議論
私たちは、核保有国にも直接アタック。米国は「都合がつかない」と断ってきましたが、ロシア、英国とは会いました。ロシアのジュネーブ国連代表部副代表は「20分間だけ」と言っていたものの、議論が白熱し45分間におよびました。
ロシア副代表は「あなた方の要請はわが国の考えと非常に近い」「(侵略は)他国が軍事力を強化したから」であり、プーチン大統領は核威嚇していないが他国がロシアに核使用や威嚇すれば対抗すると正当化しました。さらに「第6条を実行する用意がある」が、「他国が威嚇する限り一方的に削減はできない」と強弁しました。
私は、ロシアの考えとは「全く違う」、ウクライナへの侵略自体が国連憲章と国際法違反であり、多くの日本国民も世界も反対している、プーチン大統領は核使用の可能性に明確に言及している、「どんな理由であれ核使用も威嚇も許されない」と反論しました。
事実をねじ曲げ、言い訳に終始するロシアによる「核抑止力」論を聞きながら、冷戦時代に激しく論争したことを思い起こしました。会議では、米ロ英仏中の核五大国が追い詰められている姿が際立ちました。
焦点 弱体化をさせず前へ
会議の焦点は、「核兵器のない世界」へと前進していこうという世界の本流と、もはや成り立たない「核抑止力」にあくまでしがみつき、核兵器に固執する逆流の激しいせめぎ合いのなかで、これまでの再検討会議の合意を弱体化させず前にすすめるかどうかです。
核兵器禁止条約第1回締約国会議のアレクサンダー・クメント議長は、「『ウィーン宣言』は核廃絶への明確な道を示した。再検討会議でこれまで勝ち取った前進を弱体化させないよう、あらゆる努力をしなければならない」と、来年11月の第2回締約国会議につなげたいと意欲を語っていました。
再検討会議のグスタボ・スラウビネン議長(アルゼンチン)には、要請書を直接渡す機会があり、被爆2世であることを自己紹介しながら、「議長のイニシアチブで前進する成果があがるよう期待しています」と要請しました。議長は記者会見で、一つのシンプルな文書採択を追求するが、部分合意の政治宣言などさまざまな可能性があり、少なくとも何を実践しなければならないか締約国が認識してニューヨークを後にすることを望んでいると述べています。
原点 原爆の非人道性こそ
日本から岸田文雄首相が、被爆国総理として会議に初参加しました。一般討論で最初に発言した核実験被害国フィジーが、「第6条が肝心」と主張した、その直後に2番手で登壇したのが岸田氏でした。広島出身と鳴り物入りの登場でしたが、会議の焦点の第6条にも核兵器禁止条約にも触れず、これまでの合意も無視しました。すかさずブリンケン米国務長官は発言冒頭で、岸田演説を「パワフルなメッセージ」と褒めそやしました。米国への最大の援軍の姿ここにあり、でした。
それだけに、日本政府へのいら立ちはすごいものがありました。各国要人との懇談でも、「どうしたら日本は核兵器禁止条約に入るのか。国民投票できないのか」と外交官には珍しく熱く語る代表もいたくらいです。
5日には、国連本部で日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)が主催する4度目の「原爆展」の開幕式がありました。木戸季市(すえいち)事務局長が自らの被爆体験を証言し、「絶対に二度と起こってはいけない」「武器を持たない、戦争をしないと示すことで命を守れる」と憲法9条の意義を力説しました。
あいさつに立ったスラウビネン議長は「三十数年の外交官歴で初めて被爆者の証言を直接聞き、見方が大きく変わった。会議の前進につなげていきたい」と語りました。
非人道性こそ、世界を奮い立たせ核兵器を国際法違反とさせた原点です。メキシコ政府代表との懇談で、核兵器禁止条約の採択にも貢献した中南米カリブ海核兵器禁止機構(OPANAL)は、原爆の非人道性を訴えるサマースクールで毎年、被爆者を招いて各国の外交官が研修していると聞き感心しました。
いまだに米国の「核の傘」に頼り、いざというとき核兵器の使用もためらわない「核抑止」にしがみつき、大軍拡と9条改憲へとひた走る恥ずべき岸田政権。NPTと核兵器禁止条約という二つの条約を「車の両輪」として「核兵器のない世界」へ前進させるためにも、日本政府を変えねばなりません。
歴史的な役割を果たしてきた原水爆禁止運動の役割がいよいよ大きい。「核戦争の防止と核兵器の廃絶」を綱領に掲げる党の真価を発揮し、引き続き頑張る決意です。