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2022年8月12日(金)

軍事強化より外交強化

BS11「リベラルタイム」 志位委員長縦横に語る

 日本共産党の志位和夫委員長は10日放送のBS11番組「リベラルタイム」に出演し、キャスターの渡辺美喜男氏(月刊『リベラルタイム』編集長)、サブキャスターの田代沙織氏の質問にこたえて縦横に語りました。主なやりとりの要旨を紹介します。


 冒頭、渡辺氏は「ロシアのウクライナ侵略を受けて、岸田政権は骨太方針2022で『防衛力を5年以内に抜本的強化する』としています。唯一の被爆国であるわが国に核共有議論も噴出しました。そこで、『軍事強化より外交強化』と題してお話をうかがいます。日本社会に広まってきた軍事には軍事の発想をどう考えるのか。創立から100年を迎えた共産党の志位さんにお話をうかがいます」と述べ、「軍事強化より外交強化」をテーマに番組が進行しました。

なぜ100年続いた?

不屈性、自己改革、国民との共同を貫く

 渡辺 共産党は創立から100年。なぜ100年続いたとお考えですか。

 志位 日本共産党の100年を貫く特質が三つあります。

 一つは、どんな困難があっても国民を裏切らず、社会進歩の大義を貫く不屈性です。日本共産党は、戦前の暗い時代に侵略戦争反対を貫いた唯一の政党です。だから戦前・戦後と一つの名前で通すことができた。

 二つ目は、科学の精神でつねに自己改革に取り組んできた。100年を振り返って一番の危機は、旧ソ連のスターリンらの干渉で党が分裂してしまった「50年問題」でした。この時に自分の国の革命運動の方針は自分たちで決める自主独立の路線を確立しましたが、これは本当に大きな改革であり、その土台の上にその後の発展があります。

 三つ目は、国民との共同で政治を変える。統一戦線です。いま取り組んでいる市民と野党の共闘もその精神に立ったものです。

 この三つが100年続いた特徴と思っています。今後も大事にしていきたい。

「軍事増強」論がものすごく多い?

憲法順守・平和外交を求める世論が多数になっている

 渡辺 ウクライナ問題などで、世論調査を見ると軍事増強論に賛成する人たちがものすごく多いのではないですか。

 志位 そう単純じゃないと思います。7月31日に日本世論調査会の「平和世論調査」が発表されていますが、「戦争を回避するために、あなたが最も重要と思うことは何ですか」という設問に対して、「日米同盟の堅持」「軍備増強」は合わせて23%にすぎず、「日本国憲法の順守」「平和外交」は合わせて56%に達しています。「軍事対軍事」になってしまったら(軍拡競争の)エスカレートになり、一番危険なことになるという冷静な見かたが、だんだんと国民の中に広がっています。

「台湾有事」をどう考える?

中国の軍事的威嚇に抗議、日米の軍事的関与も反対、平和的話し合いによる解決を

 田代 中国を念頭に置いた「台湾有事」なども言われていますが、どう対応しますか。

 志位 この間の中国の台湾に対する軍事的威嚇に対しては、談話を出し、断固抗議し、中止を求めると強く表明しました。台湾住民の民主的に示された意思を尊重し、平和的な話し合いで解決することを強く求めます。

 同時に、台湾問題に対して日米が共同で軍事的に関与していく動きがあります。これも「軍事対軍事」の悪循環に陥りかねない危険性をはらんでおり反対です。

 台湾問題を考える場合も、平和的な話し合いによる解決しかないんですよ。たいへんでもその努力を積み重ねることが必要で、万が一にも戦争にいってしまうことになったら破滅ですから、それを起こさないための外交努力こそが必要です。

安保条約がある限り、米国の敵は日本の敵になる?

そこに軍事同盟の本質がある。国民合意で解消することが平和の道

 渡辺 日米安全保障条約がある限り、米国の敵は日本の敵ということになってくるので、日本もたたかわないといけなくなるのではないですか。

 志位 渡辺さんの言われたことは軍事同盟の本質です。軍事同盟というのは、米国が敵対し戦争を始めたら、日本もそれに協力していくことにならざるを得ない仕組みです。

 ベトナム侵略戦争の際には日本は(米軍に)基地提供で協力しました。アフガン・イラク戦争の際には自衛隊を出しました。米国が敵対する国に対しては、日本も一緒になって敵対することになる。仮にベトナム侵略戦争のときにベトナム側が反撃能力をもっていたら、日本の米軍基地が攻撃されることにもなる立場に置かれたのです。

 このように(日米安保条約は)日本を守るものではなく、逆に米国の戦争に日本を巻き込んでいくという仕掛けです。私たちは、軍事同盟そのものを国民の合意で解消して、対等・平等、友好の日米関係に切り替えていく。これこそ平和の道だと主張しています。

「民主主義対専制主義」で区分けしていいのか?

世界に分断を持ちこむのでなく、「国連憲章を守れ」という「平和の論理」で団結を

 渡辺 米国のバイデン大統領がロシアのウクライナ侵攻に対して「民主主義対専制主義のたたかい」と言った。そういう区分けを世界でしていいのか。

 志位 これも軍事ブロック的対応の問題点なんです。

 ロシアの侵略に対しては、「国連憲章を守れ」の一点で世界が団結すべきです。「民主主義対専制主義のたたかい」と、特定の「価値観」で世界を二分する対応をすると団結ができなくなってしまう。国連総会でロシアの侵略を非難した国は141にのぼりました。これを増やす努力が必要だったのに、「価値観」で世界を二分する主張にはついていけないという国が広がり、国際的包囲網が弱まってしまっている。

 シンガポールのリー・シェンロン首相、ニュージーランドのアーダーン首相も「民主主義対専制主義」という二分論に反対するとのべています。

 ロシア・プーチン政権は最悪の「力の論理」をふりかざして侵略をやっているわけですが、それに対して同じ「力の論理」で立ち向かうということになれば、「力対力」の悪循環になります。そうではなく「平和の論理」――国連憲章と国際法を守れという「平和の論理」で包囲していくことが解決の一番の道です。

周辺国との協力が必要では?

東アジアを平和の地域にしていく9条を生かした外交こそ

 渡辺 日本も声をあげて周辺国を巻き込むということが必要ですね。

 志位 東アジアの平和をどうつくるかということを考えたら、徹底した話し合いで東南アジアを平和の地域に変えたASEAN(東南アジア諸国連合)に注目する必要があります。

 ASEANがいま力を入れているのが東アジアサミット(EAS)を強化して、ゆくゆくは東アジア規模の友好協力条約を展望しよう、東アジアの全体を東南アジアのような平和な地域にしていこうという大構想です。2019年の(ASEAN)首脳会議で決めた「ASEANインド太平洋構想」(AOIP)です。私は大賛成です。ASEANと協力して、東アジアを戦争の心配のない地域にしていくための憲法9条を生かした平和外交こそ必要です。

 渡辺 9条があるから日本は信頼されているというところがありますからね。

 志位 ASEANの有識者を対象にした世論調査で「最も信頼できる主要国はどこか」は日本がトップクラスです。日本は経済力が大きくなっても核兵器を持たず、軍事費のGDP(国内総生産)比1%の枠もあった。自衛隊は一人の戦死者も出さず、一人の外国人も殺していません。9条によって平和の歴史をつくってきたことに信頼が寄せられています。9条の資産を生かした外交こそ必要です。

核武装すると他国から攻撃の標的に?

核兵器問題の一番の肝は「核抑止」にとらわれていいのかにある

 田代 唯一の被爆国であるわが国にも「核共有」の話が出てきました。核武装すると他国から攻撃の標的にされてしまう可能性はありませんか。

 志位 核兵器を持っていれば平和が守れるというのは全くの幻想です。「核共有」に対して、日本被団協のみなさんは「日本を核戦争に導き、命を奪い国土を廃墟(はいきょ)と化す危険な提言」として撤回を求めており、とんでもない議論です。

 核兵器問題の一番の肝は「核抑止」にとらわれていいのかにあります。「核抑止」とは、いざという時には核を使う――広島・長崎のような非人道的惨禍を引き起こすことをためらわないという議論です。核兵器の非人道性を身をもって体験した日本の政府が唱えるのは恥ずかしいことではないでしょうか。

 そしてこの議論は、国際的には乗り越えられている。核兵器禁止条約は、核兵器の保有や使用を禁止しているだけでなく、「核抑止」も禁じています。6月の第1回締約国会議で採択された「ウィーン宣言」でも「核抑止」はいよいよもって成り立たないと強く批判されました。

プーチン氏がトップに立つ怖さ

「車の両輪」で地球的規模での核廃絶に進むことが急務に

 渡辺 プーチンを見ていると、核の行使も辞さない態度をとっている。全人類の破壊もちゅうちょしない人物が国家のトップに立つ怖さがあります。どうしたらいいか。

 志位 プーチン氏の出現によって、いよいよ「核抑止」が無力になったことがはっきりしたということをいいたいですね。「核抑止」というのは、双方が自分の国の国民の命を犠牲にしないという合理的な判断をするという前提に成り立っています。ところがプーチン氏はロシアの国民にどれだけ被害が出ても意に介さない。それどころか「ロシアが存在しない世界に意味はない」と、ロシアが破滅する場合には全人類の破滅も辞さないと言っている。こうしたもとで「核抑止」はいよいよ無力です。

 いまNPT(核不拡散条約)再検討会議で大議論になっていますが、地球的規模での核兵器の緊急の廃絶に進むことがますます必要です。

 もともとNPTというのは、6条で核兵器国に核兵器をなくすための交渉を行うことを義務づけているんです。NPT6条と核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」に進む「車の両輪」です。ところが岸田首相は再検討会議で演説をしましたが、このどちらにも一言も触れない。「両輪」とも言わなかったら車は前に進みません。

 渡辺 米国を気にして言えない。

 志位 そうです。米国にしっかり言わなくてはいけない。NPT6条をしっかり守り、6条にもとづくこれまでの再検討会議の前向きの合意をちゃんと守って、前に進むように努力しなさいと米国に言うべきです。

どうすれば「戦争のない世界」「核兵器のない世界」をつくれる?

平和を願う諸国民のたたかいこそ、その扉を開ける力となる

 田代 どうすれば「戦争のない世界」「核兵器のない世界」を実現できますか。

 渡辺 それを望みたいですね。

 志位 大きな視野で見る必要がある。平和を願う各国人民のたたかいが歴史を動かしています。

 1世紀の単位で考えると、20世紀の初頭は、戦争は国家の合法的権利とされ、弱肉強食が支配していました。第1次世界大戦の惨禍を経て、1928年のパリ不戦条約で戦争は違法になった。

 第2次世界大戦の惨禍を経て、1945年の国連憲章で武力行使が違法になり、「戦争のない世界」が目標になりました。

 そのあと、世界の植民地体制が崩壊して、独立国家がたくさん生まれました。その国々が国連に加盟し、国連が活力を発揮しだしたのが80年代ごろからです。国連憲章に違反した米ソの侵略に対して、国連総会で非難決議が採択されるようになります。今度のロシアの侵略に対しても非難決議があがりましたが、(大国の国連憲章違反の無法に対する非難決議としては)国連総会史上で最多の賛成となりました。

 長い目でみると、ジグザグはあっても「戦争のない世界」の方向に人類は歩んでいます。核兵器については、核兵器禁止条約という人類史上初めて核兵器を違法とする条約ができて広がっています。それをつくってきた力は、平和を願う諸国民のたたかいです。人民のたたかいが平和のルールをつくり、「戦争のない世界」「核兵器のない世界」の扉を開ける力だということを言いたいですね。


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