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2022年8月22日(月)

検証 ウクライナ侵略半年 日本共産党の平和の論陣

大逆流に立ち向かう

勇気ある大奮闘 情勢動かす

 2月24日にロシア・プーチン政権がウクライナ侵略を開始してから、まもなく半年。日本ではロシアの蛮行に乗じて、日本共産党や憲法9条への攻撃が荒れ狂い、軍事力大増強の大合唱が始まりました。この「大逆流」に日本共産党はどのような論陣を張り、どう立ち向かってきたのか、それはどういう意義をもったのか。シリーズで検証します。

国際世論で包囲 侵略を止める道

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(写真)ロシアによるウクライナ侵略を糾弾する志位和夫委員長(右)。(左へ)紙智子参院議員、笠井亮衆院議員=2月25日、東京・新宿駅西口

 ウクライナ侵略開始直後に日本共産党の志位和夫委員長は、ロシアの侵略を「国連憲章、国際法を踏みにじる、紛れもない侵略行為」と糾弾し、軍事作戦中止を求める緊急声明を発表しました。志位氏は2月25日に緊急街頭演説を行い、ロシアの侵略を批判するとともに、「侵略やめろ」「国連憲章を守れ」の国際世論でロシアを包囲することが侵略を止める道だと訴えました。

 一方で、この危機に乗じて大軍拡や「敵基地攻撃能力」の保有、「核共有」の議論など「力対力」の立場からの平和に対する大逆流が始まりました。

 ウクライナ侵略の直後の同月27日、安倍晋三元首相はフジテレビ系の番組に出演し、ウクライナ侵略で「教訓を得なければならない」として、日米同盟の強化を強調するとともに、「防衛力の強化」や「軍事を司(つかさど)るインフラを破壊する」ための「敵基地攻撃能力」の保有、さらには「核共有」の議論を始めることを主張。コメンテーターの橋下徹氏(日本維新の会創設者)が賛意を表明しました。

 4日後の3月3日、日本維新の会は「ロシアによるウクライナ侵略に関する緊急提言」を発表。提言は、事実上の非核三原則の見直しや防衛費の2倍化を主張していました。さらに、改憲・右翼団体「日本会議」のフロント組織が「読売」「産経」に「岸田政権は国防政策を大転換せよ」という意見広告を掲載(3月4日)し、憲法改定を主張しました。

 「力対力」の論理は政府・与党に広がっていきました。

 自民党の安全保障調査会は、「反撃能力」=敵基地攻撃能力の保有や軍事費の2倍化など、大軍拡を求める「提言」を岸田首相に提出(27日)しました。

 さらに、岸田政権は5月23日の日米首脳会談で、「日米同盟の抑止力・対処力を強化」で両首脳が一致。岸田文雄首相は、「反撃能力」の保有や軍事費の「相当な増額」を表明しました。

 自民党は、参院選公約で、「専守防衛」を投げ捨て、相手国に先制攻撃を加える「反撃能力」の保有や軍事費倍増、憲法改定の「早期実現」を盛り込みました。

「力対力」でなく「平和外交」こそ

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(写真)大学人と日本共産党のつどいで講演する志位和夫委員長=4月29日、党本部

 こうした大逆流に抗して日本共産党は理性的論陣を張ってたたかってきました。

 日本共産党の志位和夫委員長は、維新などの「核共有」の議論に対しては「核による威嚇に核で対抗しようというもので、プーチン政権と同じ立場に身を置くことになる」と厳しく批判。「21世紀のメインストリーム(主流)にあるのが、核兵器のない世界、核兵器禁止条約だ」(3月3日の記者会見)と主張。同17日の記者会見で、「力対力」での対応を批判し、「憲法9条を生かした外交努力によって平和な東アジアを築いていくことに力をそそぐべきだ」と主張しました。

 日本共産党は4月7日に開いた参院選勝利全国総決起集会への幹部会報告で、ウクライナ問題と日本共産党の立場を詳しく解明しました。さらに、「大学人と日本共産党のつどい」(同29日)で志位委員長は、バイデン米大統領などが唱えている「民主主義対専制主義」などという特定の「価値観」で世界を二分する軍事ブロック的な対応を批判、「『国連憲章を守れ』の一点で団結を」と訴えました。

“安全保障への危機意識”表れ

 「『9条を変えてよい』という『赤旗』の元読者、党員の中にも『9条では守れない』という声が出ていた」―日本共産党の田中まさや渋谷区議は侵略直後から4月にかけての街の様子をこう語ります。

 「選挙は共産党を応援しますが、他の人に広げることはできないという方もいました。4月までは『軍拡が必要ですよね』という反応が多かった」と言います。

 ウクライナ危機の直後の世論調査には国民の“不安からくる安全保障への危機意識”が表れていました。ウクライナ侵略が日本の安全保障上の脅威につながると「思う」が81%に上り(「読売」3月7日付)、日本の安全保障が脅かされる「不安を感じる」が87%となりました(「毎日」3月19日付)。

 こうしたなか、軍事費のGDP(国内総生産)比2%以上の増額に「賛成」64%(「日経」4月25日付)、「大幅に増やすべきだ」「ある程度増やすべきだ」合わせて76%(「毎日」5月24日付)など軍事費増を容認する世論調査結果が相次ぎました。

「外交ビジョン」語りぬき変化が

 これに対して、日本共産党は全国で、大軍拡と改憲は「軍事対軍事」の悪循環をもたらす危険な道であること、暮らしを押しつぶす道であることを指摘し、憲法9条を生かした外交で東アジアに平和をと、党の「外交ビジョン」を語りぬきました。この論戦と全国での奮闘が、情勢の変化を作り出していきます。

 高知市の日本共産党小高坂支部の支部長(81)は「マスコミの影響もあって『9条変えなあかん』という雰囲気があった。9条署名と一体で対話を広げる中で、『やっぱり軍事対軍事では駄目だ』『戦争にさせない努力が政治の任務だ、憲法が指し示す方向だ』と、共産党の北東アジアを含めた平和の構築が非常に説得力を持ってきた」と語ります。

 前出の田中区議は「外交でしか平和をつくれないことは理解してくれました。軍拡は戦争への道だと考えるきっかけを対話でつくれた。大きな財産です」と語ります。

 5月29日のNHK日曜討論で、軍事費の増額について、自民、公明の与党だけでなく、立民、維新、国民なども反対しない中で、日本共産党の小池晃書記局長は「『軍事対軍事』の危険な道に踏み込む、暮らしを押しつぶす」と明確に反対しました。

 翌30日放送のTBSラジオ番組で、日曜討論での議論が話題になり、コメンテーターが、軍事費増額に反対しているのは「小池書記局長が唯一と言っていい」と指摘。メインパーソナリティーの森本毅郎氏は「(増額反対の選択肢は)もう共産党しかないんじゃないか」と語ったほどです。

 軍事費をめぐる安全保障の議論が深まるにつれ、各社の社説や世論にも変化があらわれはじめました。

 世論調査で軍事費について「いまのままでよい」との回答が37%で最多に(「読売」6月6日付)なりました。

 岸田首相が一切の財源を示そうとしないことに、「無責任だ」(「毎日」6月27日付)と断じる全国紙の記事も。「周辺国の警戒を招いて軍事競争に拍車をかけ、逆に緊張感を高める『安全保障のジレンマ』に陥りかねない」「現実的な選択肢とは言えまい」(「東京」6月27日)と批判しました。

生きて力を発揮 共産党外交政策

 さらに、日本共産党の外交ビジョンに注目したのが『サンデー毎日』(7月3日号)の「倉重篤郎のニュース最前線」です。日本共産党の外交政策をテーマに、「参院選各党公約の中で、唯一注目すべき『外交ビジョン』を掲げている」と述べて、志位委員長へのインタビューを掲載しました。

 選挙後の世論調査では、軍事費について「今のままがよい」「減らす方がよい」合わせて59%(「朝日」7月19日付の調査)と、増額に否定的な回答が多数になりました。7月31日に発表された日本世論調査会の「平和世論調査」では、戦争を避けるために「最も重要と思うことは何ですか」という設問に対して、「安保条約を堅持」と「軍備を大幅に増強」と答えた人はあわせて23%にすぎず、「日本国憲法を順守する」「平和に向け外交に力を注ぐ」と答えた人はあわせて56%に達しました。

 志位和夫委員長が出演したBS11番組「リベラルタイム」(8月10日)では、「軍事強化よりも外交強化」がテーマに。憲法9条の果たす役割について質問された志位氏は、「日本は経済力が大きくなっても核兵器を持たず、軍事費のGDP比1%の枠もあった。自衛隊は1人の戦死者も出さず、1人の外国人も殺していません。9条によって平和の歴史をつくってきたことに信頼が寄せられています。9条の資産を生かした外交こそ必要です」と述べました。

 「大軍拡でなく、外交で東アジアに平和を」という日本共産党の訴えは、国民世論を変え、情勢を動かし、今も生きて力を発揮しています。

大逆流に対する日本共産党の平和の論陣(声明など)
2月24日 「ウクライナ侵略を断固糾弾する ロシアは軍事作戦を直ちに中止せよ」
3月4日 「ロシアの原発への攻撃を糾弾し、攻撃中止を求める」
25日 「ロシアは国際社会の総意に従え――国連総会での人道決議の採択を歓迎する」
4月7日 参議院選挙勝利全国総決起集会への幹部会報告
19日 参議院選挙予定候補者会議への報告
29日 「大学人と日本共産党のつどい」の講演
5月23日 「日米首脳会談後の岸田首相とバイデン米大統領による記者会見について」
6月3日 第5回中央委員会総会での報告と結語

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