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2022年9月10日(土)

「人間開発」世界で後退

国連機関 9割の国 指数低下

コロナ・戦争・気候危機 深刻

 貧困削減や民主主義促進などを任務とする国連機関、国連開発計画(UNDP)は8日、2021―22年版「人間開発報告」を発表しました。平均余命、識字率や就学率、生活水準などを加味して計算される人間開発指数(HDI)は、3年目に入った新型コロナのパンデミック、ウクライナ侵略など各地の戦争・紛争、エネルギー・生活費の高騰、気候災害の頻発などで9割の国で低下したと指摘。報告書の発行が始まって以来初めて、世界全体の指数が2年連続で低下し、5年前の時点まで後退したとしています。

 今回の報告書は、世界の不安、不確実性が主要テーマ。人間活動が地球にもたらしている危険な変化、産業社会の新たな変容、政治や社会の分断・二極化が重なり合って、「新しい不安の複合体」を形成していると分析しています。

 報告書は、「人新世」の表現も使いながら、人間活動が引き起こした危険に言及。気候変動が不平等をさらに拡大していることや、「人類の歴史の中で、人間活動がもたらす絶滅の危険が、自然災害の危険を初めて上回った」として核兵器の危険を警告しています。

 報告書は世界の不平等の一例として、新型コロナワクチンの接種率をあげています。7月27日時点で、富裕国では72%が1回以上接種しているのに対し、低所得国は21%にとどまっています。

 各国で政治的二極化が強まり、民主主義や対話の機運が後退していると指摘。このことが、「危機」や「不安」を打開していくための、「連帯や集団的行動」を阻害していると述べています。

 他方で、地球に大きな負担をかけないで高いHDIを達成した国はないと述べ、「1人当たりの国内総生産(GDP)の高さや、HDIの上昇を追求するだけでは不十分だ」と指摘。再生可能エネルギーや感染症予防などへの投資、福祉や社会保障など社会的保護の強化、技術・経済・文化の各方面での新たなアイデアを通じて、人間開発をさらに進めていくことを目指すべきだと結論付けています。


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