2022年10月4日(火)
ロシアのウクライナ一部「編入」
中立・途上国が批判
民族自決とは無縁な武力併合
ロシアのプーチン大統領は9月30日、ウクライナ東部・南部4州の「住民投票」の結果に基づいて4州をロシアに「編入」する条約に調印しました。調印に先立つ演説でプーチン氏は、編入が「数百万の住民の意思」であり、「国連憲章にうたわれた(民族自決に関する)不可分の権利」の行使だと主張しました。
これは国際法や国連憲章をねじまげた主張であり、「編入」は民族自決権とは無縁なむき出しの武力併合にほかなりません。
「核の破滅」恐れ
親ロシア派が組織したいわゆる「住民投票」については、同27日に開かれた国連安保理でも厳しい批判が出ました。批判は米国やその同盟国だけでなく、発展途上国や中立国からも出されました。
20世紀はじめ英国の植民地支配から独立した中立国アイルランドは、「住民投票」が国連憲章や、占領に関する国際法に反しており、「違法、不法」だと指摘。軍事侵略によって占領地から100万人以上がロシアに移送され、700万人が国内避難民となっていることを挙げて、「住民投票は、ウクライナの主権と領土保全をさらに掘り崩し、不正義の戦争を仕切り直ししようとする策略だ」と述べました。
ガーナは「住民投票」がウクライナ政府の正当な権威を解体しようとする試みだと指摘。このような行為に対して、国際社会が防波堤を築くために全力を挙げるよう訴えました。ロシアが強めている核脅迫についても、「誰も勝者がいない核の破滅の暗い奈落の底に落ち込む」として、最大限の自制を求めました。
紛争の激化導く
プーチン氏は演説で、奴隷貿易や植民地支配にも言及しながら、欧米批判を長々と展開し、ロシアが「反植民地闘争を主導した」などと自賛しました。しかし、実際は植民地支配を脱した諸国から、「住民投票」の欺まんを指摘されています。
ブラジルは「住民投票」について「紛争の激化を導くさらなるステップ」であり、「和平交渉の展望をさらに遠のかせる」と懸念を表明しました。
民族自決権に関しては、脱植民地化の過程で住民の自由意思を表明するために住民投票が使われ、安保理決議も、主権や領土保全の問題を決定する正当な手続きだと認めていると指摘。しかし、住民投票が正当性を持つためには一定の条件があるとして、「紛争地域の住民が自由に意思を表明できると想定するのは非現実的だ」と述べました。
そして主権に関する住民投票は、表現の自由への制限がなく、独立のオブザーバーによる監視を認めるなど透明性ある形で実施されなければならない、と指摘しました。
メキシコは「住民投票」に関して、国家の統一や一国の領土保全を引き裂こうとする試みは、国連憲章と両立しないと批判しました。さらに脅迫やその他の手段で国境を変更しようとする試みは、国連の目的と原則に反し、国際法違反だと強調しました。そして主権ある独立国家の領土保全を損なう行動を「認可、奨励」することは、民族自決権とはいえないと指摘しました。