2022年10月29日(土)
米 極限状況で核使用
核態勢見直し 先制不使用採用せず
【ワシントン=島田峰隆】バイデン米政権が27日に発表した「核態勢の見直し」(NPR)は「米国や同盟国、パートナー国が極限の状況に陥ったときにのみ核兵器の使用を検討する」とし、場合によっては核兵器を使う姿勢を示しました。中国やロシアの核兵器増強に対抗するとして、核戦力の強化を進める方針を打ち出しています。
NPRの策定はトランプ前政権時の2018年2月以来。21年1月に発効した核兵器禁止条約について、NPRは「効果がない」と敵視し、核抑止力に固執しています。
ロシアが核兵器使用の威嚇を行うなかで米国にとって核抑止力は「最優先事項」だと強調。「核兵器が存在する限り、核兵器の基本的な役割は米国や同盟国、パートナー国への核攻撃を抑止することだ」と述べています。
グテレス国連事務総長などが求めてきた核兵器の先制不使用政策や、核兵器の役割を敵の核攻撃抑止や核攻撃への反撃に限定する「唯一の目的」政策については、採用を断念したとしました。これらの政策は、競合国が開発する非核兵器戦力に照らして「受け入れがたいレベルの危険をもたらす」としています。
特に中国による核兵器の増強や近代化に懸念を表明しています。「同盟国やパートナー国への軍事挑発を含めて、高圧的な目的のために核兵器を活用する新たな選択肢を与えている」と警戒。中国に対する抑止力を高めるためとして、日本、韓国、オーストラリアとの「拡大抑止」協議を強めるとしました。
ウクライナを侵略するロシアについても核兵器の近代化を指摘。核軍事同盟としての北大西洋条約機構(NATO)を強化するとしています。