2022年11月2日(水)
穀物輸出国際合意
ロシア停止に批判噴出
食料危機悪化に懸念
ロシアが10月29日、黒海経由でウクライナ産穀物を輸出する国際合意の履行を「無期限停止」すると発表したことに、批判が噴出しています。小麦など食料価格の高騰や途上国の食料危機の悪化につながりかねないとして、国際社会はロシアへの非難を強め、合意の履行継続を訴えています。
国連安保理は31日、この合意をテーマに公開会合を開きました。国連のグリフィス事務次長は、ロシア側が履行停止の理由として挙げた「ウクライナ軍のテロ行為」には裏付けがないと指摘。「多くの国が(合意停止の影響を)懸念している。ロシアが合意を軍事的優位のために利用するのであれば重大だ」と強調しました。
トルコのアカル国防相は31日、ロシアのショイグ国防相と電話会談を行い、世界的な食料危機の解決のために「合意の継続が重要だ」と再考を求めました。
難民支援組織「国際救済委員会」(IRC)は30日、合意からのロシアの離脱は「すでに極度の飢餓がまん延している途上国の食料提供に壊滅的な影響をもたらす」と警告。ウクライナ侵略の影響による食料価格高騰や食糧供給の停滞により、低所得国の3億4500万人が食料不足に陥っていると試算しています。
ロシアはウクライナ侵攻後、同国南部・東部への攻撃を強めるなかで黒海の貿易港を封鎖。深刻な食料危機を引き起こしたため、国連とトルコの仲介で、7月、黒海に設定された海路からウクライナ産の穀物の輸出を再開することで合意していました。これまでに900万トンの穀物が輸出されています。
(吉本博美)