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2023年1月22日(日)

主張

コロナ「5類」移行

引き下げありきは危険すぎる

 岸田文雄首相が新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを、今春に季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げると表明しました。首相は「平時の日本を取り戻す」と主張します。しかし、感染状況は予断を許しません。いま第8波の感染急拡大で医療・救急体制は逼迫(ひっぱく)し、1日の死者数が過去最悪の500人超となるなど深刻な事態が続きます。まだまだ警戒を強めなければいけない時に、首相が5類への引き下げに前のめりとなることは、「コロナは終わった」との誤ったメッセージを社会に広げ、感染状況をさらに悪化させる危険があります。

患者負担増への懸念の声

 感染症法は、感染症を1~5類と「新型インフルエンザ等」などに分類しています。新型コロナは、新型インフル等と同じ位置付けで「2類以上」の措置がとれるとされています。5類に移行すれば、行動制限や入院勧告などができる法的根拠がなくなります。

 岸田政権は5類への移行の際、医療の公費負担を段階的に見直す方針を明らかにしています。ワクチン接種や、患者の入院・外来診療、検査などでの国民負担増が懸念されます。医療費の負担増によって受診控えが広がれば、患者の命と健康にかかわるだけでなく、感染拡大を抑制する上でも大きなマイナスです。医療現場からは公費負担を縮小することに強い懸念が相次いでいます。

 政府は5類移行後、コロナ患者に対応する医療機関の制限をなくすので、受診できる医療機関が増えるという見通しを立てています。しかし、実際に政府の思惑通りにいかないと声が上がります。発熱外来の設置などをためらった医療機関の多くは、一般患者と動線が分けられない設備上の問題などがあったためです。その打開の方策は示されていません。むしろ政府はコロナに対応する医療機関を支える補助金の削減・廃止をすすめるなど、医療体制強化に逆行する動きを強めています。

 入院調整に保健所や自治体が関わらなくなるため、入院先の確保が一層困難になるとの不安は消えません。公的な支援から手を引き、現場に苦難を押し付けることなどあってはなりません。

 政府は4~5月の5類引き下げをめざすとしていますが、春までに感染が収束する根拠は全くありません。なぜ今春なのか、首相のまともな説明はありません。この時期は、年度替わりで入学や就職のシーズンで多くの人が移動します。人の移動が増える時期に感染が広がったことはこれまで何度も経験しています。政治的な思惑から時期を決めて感染対策を緩めることは許されません。

無為無策の政治の転換を

 政府のコロナ対策の専門家有志はコロナのオミクロン株の感染力は季節性インフルよりはるかに高いと警告しています。高齢者を中心に死亡数が増加しているのは、感染力の強さが要因だとされています。その危険を直視せず、国民に正確な情報発信を怠るなど無為無策で感染を拡大させた岸田政権の責任が厳しく問われます。

 コロナ感染が広がってから3年、3人の首相の下で国民の命と暮らしは危機にさらされました。自公政権をこれ以上続けてはなりません。感染症から国民を守る政治への転換が急がれます。


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