2023年3月23日(木)
撤退触れず「対話」強調
ウクライナ巡り 中ロ共同声明
【北京=小林拓也】ロシアを訪問した中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は21日、モスクワで会談し、ウクライナ情勢などを協議しました。両首脳は会談後、「新時代の全面的戦略協力パートナー関係の深化に関する共同声明」に署名。ウクライナ問題解決では、ロシアの撤退などには触れず、「対話」を強調しました。
習氏のロシア訪問は昨年2月のロシアのウクライナ侵略後初めてです。今年2月に、習指導部はウクライナ危機の解決のために和平と対話を促進する文書を発表。習氏は会談の中で、和平と対話の促進を繰り返し強調し、21日の会談後の記者会見でも「中国は平和の側、対話の側、歴史的に正確な側に確固として立ち続ける」と主張しました。
共同声明でロシアは、ウクライナ危機での中国の文書と解決に向けた中国の役割発揮に「歓迎」を表明。中国は、ロシアが「和平交渉再開に努力する」と表明したことを「称賛」しました。双方はロシア軍のウクライナからの撤退に言及することなく、「責任ある対話が着実に問題を解決するための最良の道だ」と強調しました。
一方で「情勢を緊張させ、戦争を長引かせる一切の行為を停止し、危機が悪化して制御不能になることを避けるべきだ」と、ウクライナを支援する欧米をけん制。一方的な制裁にも「反対」を表明しました。
ロイター通信によると、プーチン氏は記者会見で、中国の提案は「ロシアのアプローチとほぼ一致しており、平和的解決の基礎になりうる」と評価。その上で、「ただ西側諸国とウクライナが前向きであればだ。彼らは前向きには見えない」と、欧米の姿勢を批判しました。
共同声明は、米英豪3カ国の安全保障枠組み「AUKUS(オーカス)」を通じた原子力潜水艦配備計画に懸念を表明。日本政府が進める東京電力福島第1原発から発生する放射能汚染水の処理水を海洋放出する計画にも、一致して懸念を示しました。
また、「イデオロギーで線を引き、民主主義や自由を口実に他国に圧力を加えることに反対だ」と米国などをけん制。両国軍隊の交流の強化、軍事的相互信頼を深化することで合意しました。
双方は、「核心的利益」や主権、領土保全などを相互に支持することで一致。中ロ関係は「同盟ではなく、第三国に対抗するものでもない」と主張しました。