2023年4月6日(木)
フィンランドがNATO加盟
ロシアは対抗措置を示唆
【ベルリン=桑野白馬】北欧のフィンランドが4日、北大西洋条約機構(NATO)に正式加盟しました。ロシアと1300キロの国境を接するフィンランドは、昨年2月のロシアによるウクライナ侵略を受け、軍事同盟不参加政策を転換。NATOの31番目の加盟国となりました。
ブリュッセルのNATO本部で正式加盟の手続きが行われ、NATOのストルテンベルグ事務総長は、「もっとも重要なのは、(1加盟国への攻撃を全加盟国への攻撃とみなす)条約5条に基づくゆるぎない安全保障が今日からフィンランドに適用されることだ」と述べました。フィンランドのニーニスト大統領は「加盟によってフィンランドは安全保障を得られる。フィンランドは、NATOの全加盟国の安全保障に強くかかわり、地域安定を強化する信頼できる同盟国となる」と述べました。
フィンランドでは、ロシアのウクライナ侵略を経て、国民のNATO加盟の支持が、それまでの2~3割から8割にまで激増。国会の議決を経て昨年5月、スウェーデンと同時にNATO加盟申請を行いました。新規加盟には全加盟国の同意が必要でしたが、両国で活動する亡命クルド人グループを「テロリスト」とみなすトルコが最後まで批准に応じず、3月末にようやくフィンランドについて加盟を承認していました。
同時加盟を目指したスウェーデンについてはトルコとハンガリーが承認しておらず、加盟には至っていません。
ロシア外務省は4日の声明で「NATOはロシアの領土に近づく一歩を踏み出した」と指摘。フィンランド政府が取ってきた軍事同盟非加盟の政策に関し「バルト海地域や欧州大陸全体における信頼醸成の重要な要因だったが、もはや過去のものとなった」と述べました。ペスコフ・ロシア大統領報道官は、NATO拡大がロシアの安全保障を脅かすとして「戦術的、戦略的に対抗措置を講じる」と述べました。
解説 NATO拡大
ロシアの侵略が招く
フィンランドの北大西洋条約機構(NATO)加盟で、欧州におけるNATOとロシアの対立はいっそう先鋭さを増しました。ロシアは、1991年のソ連崩壊後のNATO東方拡大によって安全保障を脅かされたことを、ウクライナ侵略の理由にあげていましたが、逆にNATOの拡大を引き起こしたことになります。
フィンランドは19世紀初頭から帝政ロシアの支配下に置かれ、レーニンの指導したロシア革命後の1917年にロシアから独立しました。第2次大戦中、ナチスドイツと勢力圏分割を秘密合意したソ連と2度にわたって戦争となった経験から、戦後は中立政策をとりました。
91年のソ連崩壊後は中立政策を転換し、95年に欧州連合(EU)加盟。「軍事的非同盟」を維持しつつ、欧米と関係を緊密化しました。ロシアがウクライナのクリミアを侵略した2014年以来、NATOの「高次の機会が提供されるパートナー国」となり、軍備共通化や共同演習を進めてきました。
ウクライナ侵略発生時、マリン首相(当時)は、「もしロシアが国際法を破り、独立国の自治、主権を尊重しないなら、これまでのようなロシアとの関係は持てない」と明言。NATO加盟へとかじを切りました。
フィンランドは、軍事費が国内総生産(GDP)2%を超え、18歳からの兵役もあり、兵力は陸海空あわせて約2万人、有事動員可能兵力は約28万人とされます。
(伊藤寿庸)