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2023年5月23日(火)

G7サミットの報道

全国紙 欠落する本質的批判

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(写真)G7広島サミットを報じる22日付の各紙社説。左から、「産経」「読売」

 「国際秩序を守る強い決意示した」(「読売」)、「秩序の維持へ結束示した」(「産経」)―。22日付の全国紙の社説・主張には、こんな見出しが並びます。被爆地・広島で開かれた主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、G7の深刻な限界と矛盾を浮き彫りにしましたが、各社の報道にそうした視点はなく、本質的な批判が欠落しています。

 「読売」が、「世界の主要国とウクライナの首脳が一堂に会して、ロシアの侵略からウクライナを守り、国際秩序を維持する決意を示した意義は大きい」と評価したように、多くのメディアがウクライナとG7の「結束」を強調。「日経」は、岸田文雄首相がウクライナ支援の議論をけん引したとし、「ウクライナの要望を受け、欧米と協力してゼレンスキー氏(ウクライナ大統領)来日の環境を整えた労も多としたい」とねぎらいました。

 一方で、G7諸国がこれらの問題で、ロシアや中国包囲のための軍事ブロックの強化で対応していることへの批判や告発はありません。世界の分断を深め、軍事対軍事の悪循環をつくりだしていることには目をつぶり、「結束」の固さを証明するために、「日本も殺傷力を持つ兵器の提供を実現するときである」(「産経」)とまで主張する始末です。

 核兵器廃絶をめぐる議論については、「『核なき世界』の理想に向けて現実を近づける具体的な道筋は提示されなかった」(「朝日」)、「核軍縮に関する共同文書『広島ビジョン』は、『核兵器なき世界』に近づく新たな策を示していない」(「毎日」)など、一定程度、「核抑止」に縛られるG7を批判した報道も。しかし、各社そろって、肝心の核兵器禁止条約には一言も触れず、破綻した「核抑止力」論の根本的な見直しを問う報道はありません。日本の主要メディアの多くが世界の本流がどこにあるかを見失っています。

 とりわけ「産経」は、「核軍縮に関するG7広島ビジョン」を「G7として必要な表明で結束を示した」と礼賛。加えて、「核の惨禍を避けるために、G7側が核抑止体制を整えざるを得ない点を岸田文雄首相らG7首脳は正直に説くべきだった」と、さらなる「核抑止力」論の強化を主張しました。

地方紙には批判も

 一方で、地元紙の中国新聞は、「広島ビジョン」について、「(核兵器)保有国や米国の傘の下にいる同盟国の立場を肯定し、忖度(そんたく)するような記述には目新しさもない。ビジョンが、多くの原爆死没者が眠る広島の地名を冠するにふさわしいとは思えない」と指摘。西日本新聞も「(広島ビジョンは)被爆地の願いとは懸け離れていることを岸田首相は自覚しなければなるまい」と断じています。

 広島の被爆者でカナダ在住のサーロー節子さんは、G7広島サミットは「失敗だった」と痛烈に批判。被爆地・広島から核兵器に固執する宣言が出されたことに、多くの被爆者が怒りの声をあげています。メディアが重く受け止めるべきは、こうした声ではないでしょうか。


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