2023年5月26日(金)
赤旗はいま
サミット報道
“限界と矛盾”本質突く
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主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)は、「核なき世界」を掲げながら「核抑止力論」に固執して被爆者や市民の核廃絶への願いを無残に裏切りました。「しんぶん赤旗」は、核兵器禁止条約の発効と参加国拡大はじめ核廃絶へ強まる世界の本流の立場に立ち、岸田政権の欺瞞(ぎまん)と裏切りを厳しく批判。サミット礼賛報道に明け暮れた大手メディアとの対比が鮮明となりました。
開幕当日の19日深夜、「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が発表されました。ビジョンはロシアによるウクライナ侵略に関し「核兵器のいかなる使用も許されない」と批判する一方、米英仏などサミット参加国の核兵器について「防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止」するものだと正当化し、「核抑止力論」をあからさまにうたいました。
被爆地で核抑止 首相の姿勢批判
「赤旗」(21日付)は、志位和夫委員長の談話「被爆地から核に固執する宣言は許しがたい」を掲げ、「広島ビジョン」の重大な問題点を指摘。「核抑止力論」を被爆地から発信したことは、「被爆者と被爆地を愚弄(ぐろう)するもの」と批判しました。核兵器の非人道性にも、NPT条約6条に基づく「自国核兵器の完全廃絶への明確な約束」にも触れず、核兵器禁止条約への言及がないことをあげ「首脳らは、原爆資料館で何を見たのか」と糾弾しました。
現地取材にあたった赤旗サミット取材団は、被爆者や市民、NGOの怒りの声を伝えるとともに、独自の論評も掲げ「どこが核なき世界なのか」と岸田文雄首相の姿勢を厳しく批判しました。
さらにサミット全体をどう見るかについて22日付の志位委員長談話で、米国中心の軍事ブロックに参加する諸国で構成されるG7が、グローバルな諸課題に対処するうえで深刻な限界と矛盾に直面していると指摘しました。その中でG7サミットがロシアや中国を念頭に、軍事ブロック強化の対応を強めていると批判。同時に、ASEANインド太平洋構想(AOIP)に沿った「協力を促進」すると明記せざるを得なかったことに着目し、包摂的枠組みを主張するASEANの協力なしに地域の安全保障を語ることができなくなっていることを示したとしました。
サミット取材団は、岸田首相が原爆碑前で広島ビジョンを自賛し「核抑止力論」を語る姿勢を批判。「G7は失敗した」と批判したサーロー節子さんなど被爆者や市民、NGOの声を特集するとともに、ジェンダー、気候危機、食料問題でも課題を残したことや、日本の大きな立ち遅れを指摘しました。
またコラムでは、原爆ドームのある平和公園が白い幕で覆われ、メディアでさえ入場できなかったこと(21日付)や、市民社会を代表するNGOが「古びた小さい公民館に押し込められ」ていたこと(22日付)など、サミットの舞台裏を紹介しました。
持ち上げ報道の全国紙
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これに対し全国紙の報道姿勢はどうだったか。
右派メディアは「米国が核戦力を含む軍事力で同盟国を守る『核の傘』は、日本など同盟国にとって欠かせない」(「読売」20日付社説)、「米国の核の傘など日本と国民を守る核戦力の充実が課題」(「産経」20日付主張)などと「核抑止」を当然視し、その強化さえけしかけました。
「朝日」は「広島ビジョン」について「核廃絶への長期的な視点を欠く文書は、被爆地の名を冠したビジョンと呼ぶに値しない」(21日付社説)と批判。「毎日」も22日付社説で「『広島ビジョン』は、『核兵器なき世界』に近づく新たな策を示していない」としました。
しかし、両紙とも1面トップで「G7『核軍縮の努力強化』」(朝日)、「G7『国際秩序守り抜く』」(毎日)と全体としてG7を持ち上げ、特に岸田首相については「『被爆の実相』こだわり 重ねた交渉」(「朝日」24日付1面)、「資料館視察 首相譲らず」(「毎日」20日付3面)と礼賛しました。(つづく)