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2023年6月28日(水)

ロシア内戦寸前 ワグネルの反乱

プーチン独裁政権下 矛盾が噴出

腐敗と汚職と人命軽視

 ロシアの民間軍事会社ワグネルの戦闘員と車両がモスクワまで200キロの地点まで迫り、あわや内戦ぼっ発かと思われた事態が起きたことが波紋を広げています。ロシア軍の腐敗や内部対立と、人権や生命を軽視するプーチン独裁政権下で、矛盾が火を噴いた形だからです。(片岡正明)


 反乱を起こしたワグネルは戦闘員2万5000人と自称し、23日夜から24日未明にかけて、ロシア南部ロストフ州ロストフナドヌーにある同国軍南部軍管区司令部を無血で占拠しました。しかし同日夜には急展開し、ワグネルの創設者プリゴジン氏はSNSで撤退したと伝えました。

 ロストフナドヌーはロシア内陸と黒海、クリミア、ウクライナをつなぐ要衝であり、南部軍管区はもともと対ウクライナ作戦本部としての性格が強いところです。その司令部がほとんど抵抗することなく民間軍事会社に占拠される事態は、現地軍のワグネルへの共感なしには考えにくいことです。

武器供給不満示す

 ワグネルが要求に掲げたものは何なのか? プリゴジン氏が最初に掲げるのは、軍の腐敗・汚職です。同氏はかねてウクライナ東部でたたかうワグネルへの武器補給がまったく不十分だと不満をぶちまけていました。

 ロシア国民にワグネルが英雄的にたたかっていると訴えて人気を得る一方で、ロシア正規軍の連携のなさや新兵の扱いを非難。ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を腐敗・汚職の頂点に立っていると批判を繰り返しました。

 プリゴジン氏は23日のビデオ・メッセージで、ウクライナへの侵略の「大義」に踏み込みました。「国防省が、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)とともにロシアを侵略しようとしていると、国民と大統領をだまして戦争を始めさせた」―。

大統領説明を否定

 ウクライナがロシアに侵攻をしようとしていたから戦争に踏み切ったとするプーチン大統領のこれまでの説明を、否定する発言です。

 さらに、軍の人命軽視が軍指導部への反感を強めたといえます。ロシア軍はウクライナ侵略開始以来、民間人への残酷な処刑を行っていたことは広く知れ渡っています。命を軽く扱うのはロシア軍兵士に対しても同じです。

 2022年9月には30万人の若者などが新兵として動員されましたが、この間の報道では、新兵はろくに武器も与えられず敵の位置を知るための標的にさせられ、多くの青年が命を落としたといいます。

 腐敗・汚職、人命軽視、戦争の正当性のなさ、プリゴジン氏が軍の問題とするのは、実はプーチン政権そのものへの批判に直結します。プリゴジン氏の部隊撤退表明、ベラルーシへの亡命の事情が何にせよ、プーチン政権そのものへの国民の信頼は揺らぎ始めています。


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