2023年7月14日(金)
主張
NATOと日本
二つの軍事同盟の危険な結託
リトアニアで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれ、ウクライナへの軍事支援の強化を決めました。岸田文雄首相も出席し、NATOと新たな協力文書を交わしました。会議がロシアによるウクライナ侵略を国際法や国連憲章に反するとして非難したのは当然です。しかしこの問題の解決は、国連憲章と、即時、無条件、完全撤退をロシアに求めた国連総会決議に基づかなくてはなりません。安保条約で米国と軍事同盟を結ぶ日本と、NATOが結託してロシアに力で対抗することは、軍事対軍事の悪循環をいっそう深刻化させます。
分断広げるブロック対決
NATOは、加盟国に武力攻撃があれば全加盟国に対する攻撃とみなして集団的自衛権を行使する軍事同盟です。昨年、全面改定した「戦略概念」でロシアを「最も重大かつ直接的な脅威」とし、軍事力を強化して対抗することを決めました。中国とロシアの戦略的協力関係が「われわれの価値、利益に逆らう」としています。
首脳会議のコミュニケはこの規定を繰り返し、国内総生産(GDP)比2%以上の際限ない軍拡を宣言しました。核兵器禁止条約はNATOの「核抑止」に合致しないとして反対しています。
岸田首相は首脳会議で演説し、NATOを「基本的価値と戦略的利益を共有するパートナー」と呼び、サイバー、新しい軍事技術、宇宙など多分野に協力を広げると表明しました。地元メディアのインタビューでは、新たな国家安全保障戦略を決めたことや、軍事費を2027年度までにGDP比2%に増やすことを強調しました。
日本の首相の首脳会議出席は、初めてだった昨年から2年連続です。6月にドイツで実施されたNATO軍の大規模演習に航空自衛隊が幕僚長を先頭に参加するなど、共同演習も活発化しています。
岸田政権は中国包囲を狙って「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)を進めています。今回の首脳会議ではNATO、岸田首相双方が欧州・大西洋とインド・太平洋地域の安全保障は不可分と主張しました。
特定の「価値」に賛同する国でブロックをつくり、ロシアに軍事的対応を強め、中国にも対抗することは世界に分断を広げます。
首脳会議の中で主要7カ国(G7)は、長期にわたってウクライナを軍事支援するとした共同宣言を発表しました。各国が憲法上の要件に従って参加するとしていますが、憲法9条を持つ日本が他国を軍事支援する枠組みに参加すること自体、許されません。
日本は非軍事に徹底を
岸田首相が無人機検知システムの提供を発表したことは憲法の平和原則に反しています。日本のウクライナ支援は非軍事の人道・復興支援に徹するべきです。
米国がクラスター爆弾のウクライナへの供与を決めたことには、禁止条約(オスロ条約)に加わる英国などのNATO加盟国が不支持を表明しました。クラスター爆弾は多数の小爆弾を放出し広範囲で無差別に殺傷する兵器です。
日本も批准国ですが、松野博一官房長官が記者会見で米国の説明を紹介しただけです。禁止条約に参加せず、戦場で使用させようとする米国に、ものを言えない姿勢は重大です。