2023年9月22日(金)
主張
SDGsの危機
戦争・軍拡やめ人類課題に力を
国連は18日、2030年までに達成を目指す「SDGs(持続可能な開発目標)」に関する首脳級会合を開きました。採択した政治宣言は、目標達成が「危機的状況だ」とし、緊急の行動を呼びかけました。コロナ禍による暮らしや経済の悪化に加え、世界の多くの場所で武力紛争が激化し、SDGsの取り組みを遅らせていることに強い懸念を示しています。各国が軍事的対決をやめ、喫緊の人類的課題を共同で解決する体制を築くことが急務です。
後退・不十分が8割以上
SDGsはすべての国連加盟国の共通目標として15年の国連サミットで採択されました。人類を貧困から解放し、地球を安全にすることを目指します。貧困・飢餓の根絶、健康的な生活や質の高い教育、ジェンダー平等をはじめ17の目標で169の課題を掲げています。今年は30年までの中間年として首脳級会合が開かれました。
政治宣言は「ほとんどの目標で進捗(しんちょく)が遅すぎるか、15年時点の水準以下に後退している」と警鐘を鳴らしました。
7月に国連が発表したSDGs報告によると、進捗を数値で評価できる課題のうち「順調」は15%にすぎず、「不十分」が48%、「停滞または後退」が37%です。
ウクライナでの戦争が物価の高騰、貿易のかく乱、難民の増加、食料・エネルギー危機など、SDGsに多くの困難をもたらしたと指摘しました。
このままでは30年になっても5億7500万人が、1日1・9ドル(約280円)以下で生活する極貧状態にあると予測しています。
追加措置を講じなければ30年時点で3億人の生徒が基礎学力を身につけられないと言います。
ジェンダー平等の課題については、児童婚がなくなるまで今のペースで300年、職場でのリーダーシップが男女平等になるまで140年かかると警告しています。
気候変動では、世界の気温上昇が35年までに1・5度を超え、今世紀末までに2・5度上昇します。縮小していた国家間の格差がコロナ禍によって20年から拡大に転じたことも指摘しました。
ロシアのウクライナ侵略を機に、世界で分断が広がっていることが課題に立ち向かう国際協力を妨げています。ロシアは無条件で直ちにウクライナから完全撤退すべきです。
国際社会が「ロシアは侵略をやめよ」の一点で団結することが何よりも重要です。軍事ブロックを強化して対抗することは、分断を世界に広げ、緊張激化の悪循環を招くことにしかなりません。
日本の取り組み問われる
岸田文雄首相は国連総会で「分断・対立ではなく協調に向けた世界を」と演説しましたが、同政権が進める43兆円の大軍拡は東アジアの分断・対立を深めています。
SDGsへの姿勢が問われています。ワーキングプアが1000万人を超えているのに、最低賃金を時給1500円に引き上げるのは30年代半ばとされています。ジェンダーギャップ指数は世界125位で、第2次再改造内閣の副大臣・政務官に女性は皆無です。石炭火力に固執し、気候危機対策で世界の足を引っ張っています。
日本自身が大軍拡をやめ、人類的課題の解決に向けて行動すべきです。