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2023年10月27日(金)

小池書記局長の代表質問 参院本会議

 日本共産党の小池晃書記局長が26日の参院本会議で行った、岸田文雄首相の所信表明演説(23日)に対する代表質問は次の通りです。


写真

(写真)質問する小池晃書記局長=26日、参院本会議

「賃金が上がらない国」からの転換こそ

 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、岸田文雄総理に質問します。

 総理は所信表明で、「経済、経済、経済」と連呼し、「コストカット型経済」の「30年ぶりの変革を果たす」と大見えを切りました。しかし、コストカットのために非正規ワーカーを増やし、先進国で唯一、「賃金が上がらない国」にしたのは誰か。大企業減税を繰り返し、その穴埋めに消費税を立てつづけに増税したのは誰か。どれもこれも自民党が、財界言いなりにやってきたことです。必要なのは「反省、反省、そして転換」ではありませんか。

内部留保を賃上げに環流させる施策を

 経済対策の第一のポイントは「供給力の強化」ですが、具体策はもっぱら大企業向け減税です。しかしこれでは、大企業の内部留保が500兆円を超えて積み上がる一方、30年にわたり働く人の賃金が上がらないというゆがみを、ますますひどくするだけです。

 内部留保を賃上げや設備投資に環流させる、具体的で実効性のある施策こそ必要ではありませんか。

 わが党は、「経済再生プラン」で、大企業の内部留保に時限的に課税し、5年間で10兆円程度の税収を中小企業支援に回す、最低賃金を、総理が言うような2030年代半ばでなく、速やかに時給1500円に引き上げることを提案しています。

 総理は「二重課税に当たるから慎重に」と言いますが、法律上、二重課税の定義はなく、禁止されていません。財界が「二重課税だ」と反対するから、手を出せないのですか。お答えください。

女性の低賃金なくし、男女賃金格差の是正を

 男女賃金格差の是正も急務です。

 今年から始まった男女別の賃金公表制度の結果、日本経団連役員企業の女性の賃金は男性の4~8割と軒並み低く、企業規模が大きくなるほど、男女格差が大きいことも判明しています。大企業は、コース別採用や全国転勤等を要件とした雇用管理、派遣、非正規化などさまざまな形で、「安上がりの労働力」として女性差別を続け、女性の低賃金構造を温存してきました。

 男女賃金格差の公表は一歩前進ですが、同一価値労働同一賃金の原則を徹底し、女性の低賃金をなくし、男女賃金格差を是正すべきではありませんか。答弁を求めます。

 自公政権は「女性活躍」を掲げてきました。しかし、その結果は非正規雇用の増大でした。なぜ女性が非正規雇用の7割を占めているのか。なぜ男性より賃金が低いのか。総理には、その原因が、男性には長時間労働、女性には家事・育児・介護という、性別役割分業を前提とした雇用慣行にあるという認識はありますか。

 日本共産党は、非正規ワーカーの待遇改善と賃上げのために、「非正規ワーカー待遇改善法」を提案しています。フリーランスやギグワーカーを含め、非正規ワーカーに焦点をあてた待遇改善に踏み出すことは、ジェンダー平等を推し進め、男性も含むすべての人に人間らしい働き方、生き方を広げることにもつながります。

 総理。この課題に、政府をあげてとりくむべきではありませんか。

場当たり的な「所得税減税」でなく消費税減税を

 総理は、経済対策の第二のポイントとして、「国民への還元」をあげています。しかし、期限付きの所得税減税は、場当たり的な対応にすぎません。しかも、減税の後には、大軍拡のための増税が狙われています。「1年限りの減税の直後に恒久的な増税」などというのは、国民を愚弄(ぐろう)するものではありませんか。

 「国民に還元する」なら、なんといっても消費税の減税です。

 消費税減税は、確実に消費に結びつきます。家計支援になるのはもちろん、景気対策、とりわけ中小企業支援になります。政府は、「消費税は社会保障の財源だ」といいながら、導入以来34年間の消費税収509兆円に対して、法人3税の税収は317兆円減り、所得税と住民税は289兆円減りました。結局、大企業や富裕層減税の穴埋めになっただけではありませんか。

インボイス制度は廃止せよ

 10月から始まったインボイス制度で、課税業者になった小規模事業者やフリーランスには、年間15万円もの負担が加わり、「1カ月分の収入が消える」と悲鳴が上がっています。これは税率引き上げを伴わない大増税です。政府が激変緩和措置などを打ち出してからも、反対の声は広がり、「ストップ・インボイス」のネット署名は56万を超えました。総理はどう受け止めていますか。地域を支える業者の仕事や、文化芸術にとりくむ人たちの夢が、税制によってつぶされることなど、あってはならないのではありませんか。

 総理は「複数税率のもとで適正な課税を行うため」とインボイス実施を正当化しますが、複数税率になってから4年間、インボイスなしで対応できています。重大な支障があったというなら、具体的にお示しください。政府が反対の声に耳を貸さず、インボイス制度に固執するのは、今後さらなる消費税増税を行うための「地ならし」だからではありませんか。

 消費税は廃止をめざし、5%に緊急減税し、複数税率をやめ、インボイス制度は廃止すべきです。お答えください。

医療現場の声は「健康保険証の存続」

 マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」は、利便性の向上どころか手間が増大し、トラブル続出です。マイナ保険証の登録件数は増えていますが、利用率は低下する一方で、8月はわずか4・7%でした。利用率が減り続けている原因はいったいどこにあるのですか。国民がマイナ保険証を信頼していないことの表れではありませんか。

 全国保険医団体連合会の調査では、回答があった7070の医療機関のうち87・8%が、来年秋以降も健康保険証の存続を求めています。総理に「聞く力」が残されているなら、現場の声に応えるべきではありませんか。答弁を求めます。

介護負担増やめ、人材確保へ処遇改善を

 政府は来年度の介護保険改定にむけ、現行では1割負担となっている人の利用料を2倍にすることなどを検討しています。物価高騰と年金の目減りにあえぐ高齢者に、医療費に続く負担増の追い打ちをかけようというのですか。

 政府はこれらを、「現役世代の負担軽減のため」と説明していますが、介護を必要とする高齢者が、負担増によってサービスの利用を減らしたり、断念したりすれば、そのしわ寄せは、介護離職などで現役世代にのしかかります。総理にはそうした認識がありますか。

 厚生労働大臣が、来年度の報酬改定による介護職の賃上げについて、「月6000円程度が妥当」と発言したことが、介護関係者の驚きと失望を呼んでいます。厚労省の統計でも、介護職の平均給与は、全産業平均より月7万円も低くなっており、「月6000円では1桁足りない」という声が上がるのは、当然ではありませんか。介護人材の確保と定着のためには、抜本的な処遇改善策が必要ではありませんか。お答えください。

「食料自給率の目標達成」を政府の責務とすべきだ

 持続可能な経済社会にする上で、食料の自給は最重要課題です。

 しかし、日本の農業は深刻な危機に直面しています。低い米価に苦しむコメ農家、搾れば搾るほど赤字になる酪農家。豪雨被害、夏の猛暑、干ばつ、高温障害が追い打ちをかけ、生産者は悲鳴を上げています。いま政府に求められているのは、懸命に頑張っている生産者を離農に追い込まないような緊急支援ではないか。答弁を求めます。

 コロナ危機に加えて、ロシアによるウクライナ侵略で、世界の農産物需給は不安定化し、食料危機が現実的になっています。ところがわが国の食料自給率はカロリーベースで38%、6割もの食料を外国に依存しています。しかも、この10年間で農業者は3割減少し、東京都に匹敵する面積の農地が失われました。危機的な状況ではありませんか。

 食料・農業・農村基本法は食料自給率の向上、国内生産の増大を掲げていますが、今まで食料自給率目標を一度も達成したことがなく、その検証や分析もされていません。「自給率の目標達成」を政府の責務にすべきではありませんか。答弁を求めます。

国民に負担を強いる大阪・関西万博は中止、カジノ計画は断念せよ

 大阪・関西万博は、工事が遅れ、建設費用も膨れ上がっていますが、総理は、「オールジャパンで進める」と述べています。しかし、日本国際博覧会協会は、遅れ解消に向けて、来年4月からの建設労働者の時間外労働の上限規制を、万博工事だけ適用除外するよう政府に要請したといいます。法律を守れば建設ができない、労働者の命を犠牲にしなければならない。こんな事業は、すでに破綻しているのではありませんか。

 会場建設費用は、2350億円と当初見積もりの2倍近くに膨らみ、これで収まるかどうかもわかりません。国民の「身を切る」ような事業に、理解が得られると思いますか。お答えください。

 そもそも、建設工事の遅れと費用の上振れの原因は、軟弱地盤と土壌汚染の夢洲(ゆめしま)での開催に固執したことにあります。その狙いは夢洲カジノ計画の推進です。莫大(ばくだい)な費用がかかり、カジノ業者だけではとうてい不可能なインフラ整備を、国策である万博を口実に、公費ですすめるためにほかなりません。

 命と安全が守られず、多大な負担を国民に押し付ける大阪・関西万博は中止し、カジノ計画はきっぱり断念すべきです。答弁を求めます。

統一協会問題――財産保全と自民党との癒着の実態解明が必要

 政府が、統一協会への解散命令を裁判所に請求したのは、被害者の声が動かした結果です。二つのことを求めます。

 ひとつは、財産保全のための、特別な法律制定に向けた与野党協議です。被害者を泣き寝入りさせてはなりません。統一協会の持つ財産を、海外に流出させずに、急いで保全しなければなりません。総理は「各党の動きを注視する」といいますが、それでいいのか。党派を超えて実現する先頭に立つべきではありませんか。

 今ひとつは、統一協会と自民党との、癒着の全体像を解明することです。文部科学大臣は、「遅くとも昭和55年ごろから」被害があったと述べています。ならば、癒着の実態も、過去にさかのぼって、徹底調査すべきではありませんか。お答えください。

くらし・平和・財政を危機にさらす大軍拡は中止せよ

 来年度概算要求における軍事費は、米軍再編経費を加えると8兆円です。30年近く5兆円前後で推移してきたものが、岸田政権発足後わずか2年で2・5兆円もの増加です。2・5兆円あれば、いったい何ができるか。義務教育の給食費を無償化し、高校授業料の完全無償化をし、大学入学金を廃止し、大学学費を半分にすることができます。税金の使い方が完全に間違っています。

 イージス・システム搭載艦は、昨年、安保3文書を決定したときには、今後5年間で4000億円と説明していたのに、今年度2200億円、来年度3800億円、計6000億円もすでに盛り込んでいます。1年もたたないうちに、なぜ2000億円も上回ることになったのか。GDP(国内総生産)2%という総額ありきの大軍拡で、完全にタガが外れているのではありませんか。

 くらしも平和も財政も危機にさらす大軍拡は中止すべきです。答弁を求めます。

沖縄を再び戦場にするな。辺野古新基地建設は断念を

 いま沖縄では、敵基地攻撃可能な長射程ミサイルの配備によって、再び戦場にされることへの不安と怒りが広がっています。

 今月14日から行われている日米共同訓練では、沖縄県の2度にわたる自粛要請を無視して、陸上自衛隊のオスプレイが初めて新石垣空港に降り立ち、負傷兵を後方に輸送する訓練が行われました。まさに沖縄が戦場になることを想定した訓練ではありませんか。

 玉城デニー知事は6月、敵基地攻撃を可能とする装備の県内配備を行わないよう政府に要請しました。沖縄への配備はもちろん、敵基地攻撃能力の保有そのものをやめるべきではありませんか。

 政府は、辺野古新基地建設のための設計変更を知事に代わって政府自ら承認するための代執行訴訟を提起しました。強権的なやり方を絶対に認めるわけにいきません。

 沖縄の米軍基地は、米軍占領下で、国際法にも違反して、住民の土地を一方的に奪ってつくられたものです。そのもとで沖縄県民は、米軍機の墜落や昼夜を分かたぬ爆音、環境汚染、米軍関係者が引き起こす事件・事故に苦しめられてきました。

 沖縄県民が辺野古新基地建設に一貫して反対の意思を示してきたのは、こうした歴史を無視し、新たな基地を押し付け、将来にわたって固定化するものだからです。

 政府の計画自体に根本的な問題があるにもかかわらず、それを受け入れないからといって、国が強権を発動し、知事の権限を取り上げ、基地建設を強行するなど、決してやってはならないことではありませんか。

 玉城デニー知事は、政府に対し沖縄県との話し合いに応じ、対話によって解決策を見いだすことを求めています。代執行に向けた手続きを中止し、県との話し合いに応じるべきではありませんか。

 県民は、3度の県知事選挙や県民投票などで、新基地建設反対の意思を明確に示してきました。県民の民意を正面から受け止め、普天間基地の即時運用停止・閉鎖・撤去、辺野古新基地建設の断念を決断すべきです。以上、総理の答弁を求めます。

イスラエルとパレスチナ双方との関係を生かし、停戦交渉を促せ

 イスラエル・ガザ紛争による人道危機が深刻です。

 日本政府は、無差別攻撃を行ったハマスを非難するだけでなく、イスラエルがガザ地区を封鎖し、水も食料も断ちきり、住民を大量に殺りくしていることをなぜ厳しく批判しないのですか。最悪の人道危機をもたらす大規模侵攻の中止を求めるべきではありませんか。

 政府はイスラエル、パレスチナ双方に関係を持っていることを生かし、停戦に向けた交渉を促すべきではありませんか。答弁を求めます。

改憲でなく憲法の実現こそ日本政治の最優先課題

 日本国憲法前文は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と平和的生存権を定めています。そして、憲法9条は、一切の戦争と武力の行使・武力による威嚇を放棄し、他国に先駆けて戦力の不保持、交戦権の否認を規定し、国際社会での積極的な軍縮推進を憲法上の責務として、わが国に課しています。

 今こそ、この憲法の理念に基づく平和外交が必要ではありませんか。お答えください。

 憲法を変えるのではなく、実現することこそ、日本政治の最優先課題であることを訴えて、質問を終わります。


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