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2023年11月10日(金)

主張

G7声明とガザ

平和の国際秩序壊す二重基準

 日本が議長を務める主要7カ国(G7)外相会合が、パレスチナ自治区ガザの情勢やロシアによるウクライナ侵略をはじめ国際問題について共同声明を発表しました。ロシアの「国際違法行為」を非難する一方、国際法に違反するイスラエルの蛮行は批判しません。国連憲章、国際法はすべての国連加盟国が履行の義務を負っています。大国グループであるG7のダブルスタンダード(二重基準)は、世界の平和秩序を壊す重大な障害です。

イスラエルの攻撃は不問

 共同声明は、ロシアに対してウクライナ侵略を直ちにやめるよう要求し「すべての国際違法行為の法的帰結の責任を負わなければならない」としています。

 国連憲章、国際法は、すべての国の主権と領土保全の尊重を義務づけています。ウクライナ侵略が違法行為として非難されなければならないのは当然です。

 共同声明は、ガザのイスラム組織ハマスによるイスラエルに対するテロ攻撃は非難しましたが、イスラエルについては自衛権を強調し、ガザ攻撃にお墨付きを与えました。「国際法に従って」と言うものの、現にイスラエルが行っている無差別攻撃には一言も触れません。

 ハマスによる民間人殺害や拉致は国際法違反です。人質は直ちに解放しなければなりません。しかしハマスの不法行為に対してガザ地区の住民全体に攻撃をかけ、難民キャンプまで空爆することはどんな理由でも正当化できません。

 ガザ当局の発表で同地区の死者は1万人を超えました。イスラエル軍が地上侵攻を本格化させたことによって、地区のパレスチナ人全体にジェノサイド(集団殺害)の危険が迫っています。共同声明はこれをまったく問題にしていません。

 共同声明は、ガザの人道危機に対する緊急行動が必要だとしています。危機を引き起こしたのはイスラエルによる完全封鎖と空爆、それに続く地上侵攻です。住民の命を救うには、イスラエルに大規模攻撃をやめさせ、双方が即時停戦するしかありません。

 共同声明が提起したのは戦闘の「人道的中断」と「人道回廊」の設置です。中断は、イスラエルによる攻撃を容認した上で、一時的に止めることです。G7がイスラエルの国際法違反を批判しないもとで、イスラエルは戦闘をエスカレートさせています。

 共同声明はパレスチナ、イスラエルの「2国家解決」が公正で永続的な平和への道だとしました。ならば、ヨルダン川西岸地区でのイスラエルの入植拡大など、パレスチナ人迫害の歴史的不公正に目をつぶるべきではありません。

日本の責任が問われる

 議長を務めた上川陽子外相は「G7として初めて一致したメッセージをまとめることができた」としています。米国の顔色をうかがってイスラエルの国際法違反を不問に付し、即時停戦を求めない共同声明を「重要な成果」とする日本の責任が厳しく問われます。

 イスラエルを非難する一方、ウクライナ侵略を正当化するロシアの二重基準も許されません。

 どんな国であれ国連憲章、国際法に反する暴挙は許さない―この一点で国際社会が力を合わせることが急務です。


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