2023年12月10日(日)
主張
自民党派閥の裏金
疑惑底なし 政権担う資格ない
自民党最大派閥の清和政策研究会(安倍派)の政治資金パーティーを巡る裏金疑惑が岸田文雄政権の基盤を揺るがす大問題に発展しています。1000万円超のキックバックの不記載が発覚し、国会で追及されている松野博一官房長官の辞任論が与党内で強まっています。松野氏に続き西村康稔経済産業相など重要閣僚や自民党役員らの裏金の実態も続々と表面化しており、疑惑の広がりはとどまるところを知りません。松野氏の辞任だけでは済まされません。疑惑解明に背を向け、説明責任も果たさない岸田首相に政権を担う資格はありません。
安倍派中枢幹部が次々と
松野氏は8日の衆参の予算委員会で疑惑について「答えを控える」と繰り返しました。岸田首相も「役割を果たしてほしい」と同氏をかばい続けました。事実関係の説明を拒み続ける松野氏や首相に厳しい批判が上がっています。
松野氏は2021年10月の岸田政権発足時から官房長官を務めてきました。松野氏が辞めるとなれば、04年に国民年金保険料未納問題で辞任した福田康夫氏以来、19年ぶりの官房長官の辞任です。
岸田政権では22年に「政治とカネ」や統一協会との癒着などで4閣僚が立て続けに辞任に追い込まれました。今年9月の内閣改造後も副大臣2人、政務官1人が疑惑と不祥事で職を辞しました。内閣の要である官房長官の進退が取りざたされる異例の事態を引き起こしていることで、首相の任命責任が一層厳しく問われています。
松野氏以外の安倍派中枢幹部の裏金疑惑も次々と明らかになっています。松野氏と同様に18~22年の5年間に1000万円超の未記載のキックバックを派閥から受けていたのは、高木毅国対委員長と世耕弘成参院幹事長だとされます。同期間に萩生田光一政調会長と塩谷立元文部科学相には数百万円、西村経産相には約100万円の記載のないキックバックがそれぞれあったと言われます。
塩谷氏は現在、事実上の安倍派トップの座長です。松野、高木、世耕、萩生田、西村の各氏は「5人衆」と呼ばれ、安倍派の実権を握っていると言われています。岸田政権は、政権と党の運営を安倍派に頼っています。高木氏が就任している国対委員長は、国会運営の司令塔です。萩生田氏の役職である政調会長は、党の政策立案の責任者です。政府と党の中枢が組織的な裏金づくりに関与していたとなれば、岸田政権の存続の是非にも直結します。違法行為がどのように行われ、捻出した資金が何に使われていたのか。全てを明らかにすることが首相の責任です。
捜査中の東京地検特捜部は、安倍派も含め数十人規模の自民党議員への事情聴取を検討しているとされます。不正をまん延させた自民党の金権体質に今こそメスを入れる必要があります。
真相を全て明らかにせよ
岸田首相が19年の自民党政調会長当時、党本部で米国の元下院議長とともに統一協会の関係団体「天宙平和連合(UPF)ジャパン」の議長らと面会していた問題も解明が欠かせません。首相は統一協会の関係団体と承知していなかったと主張しますが、記念撮影や名刺交換をしており、疑念は深まります。真相を隠さず語ることが首相の最低限の責任です。