2023年12月18日(月)
主張
統一協会と岸田氏
「認識ない」では済まされない
岸田文雄首相が統一協会関係団体幹部と4年前に接点を持っていた疑惑が浮上し、大きな問題になっています。首相は自民党政調会長時代の2019年に党本部でニュート・ギングリッチ元米下院議長と面会した際、統一協会の偽装団体「天宙平和連合(UPF)」のトップと会っていました。国会で追及された首相は、関連団体トップがその場にいたと認識していなかったと繰り返しましたが、写真撮影や名刺交換もしており、疑念は払拭されません。首相には面談の経過や事実関係について全てを公にする責任があります。
写真撮影や名刺交換も
疑惑の面談は「朝日」4日付が報じました。19年10月4日、岸田氏が党本部でギングリッチ氏と面談した場にUPFジャパンの梶栗正義議長が同席していました。梶栗氏は反共謀略活動をする「国際勝共連合」の会長でもあります。
面談にはUPFインターナショナル会長のマイケル・ジェンキンス氏もいました。岸田氏はギングリッチ氏や梶栗氏ら4人で一緒に写真を撮っていました。岸田氏がジェンキンス氏と握手したり、名刺交換をしたりしている様子も撮影されていました。ギングリッチ氏自身もUPFの「平和大使」を務めています。
「朝日」(7日付)や「毎日」(8日付)によれば、ギングリッチ氏は、梶栗氏らが同行していた事実を認め、岸田氏と会話していることも明らかにしています。面談はUPF側が手配し、当初は安倍晋三首相(当時)と会う予定だったが、国会日程で時間が取れなくなった安倍氏にかわって岸田氏が面談したとも説明しています。
岸田首相は国会答弁で、梶栗氏らの同席について、名刺交換などをしたことは認めつつも、元米下院議長との会談であり、統一協会関係者という「認識はなかった」「同行者にどなたがいたのか承知していない」などと主張しました(8日の衆参の予算委員会)。しかし、詳しい経過についての質問に対しては、党本部などに面会の記録や資料が残されていないとして、具体的には答えません。
UPFは2005年、統一協会創設者の文鮮明氏と妻・韓鶴子氏が共同で設立し、その活動には自民党政治家らが関わってきました。統一協会被害対策にあたってきた弁護団は、反社会的活動にお墨付きを与えないよう自民党国会議員に求めるなどしてきました。
UPF側は、岸田氏と会った翌日、名古屋市で行事を行い、自民党の細田博之衆院議員(当時)らが出席・講演しました。岸田氏との面談も統一協会をアピールするイベントの一環であったことが濃厚です。日本共産党の塩川鉄也衆院議員と山下芳生参院議員は8日の予算委で、「広告塔」にされたことへの責任を感じないかと首相をただしました。しかし、首相から反省の言葉はありませんでした。
逃げ続けるのは許されぬ
岸田首相は昨年、自分自身は統一協会とは関係がないと表明し、自民党議員に自主的な点検を求めました。岸田氏は自身のことをどれだけ厳格に点検したのか。それが厳しく問われます。
事実関係すら調べようとせず、「認識がない」の一点張りで逃げ続けることは許されません。統一協会との癒着を断つと言うなら真相を語るべきです。