2024年3月13日(水)
3年目迎えたロシアのウクライナ侵略
戦争終結へ いま何をすべきか
ロシアのウクライナ侵略が3年目に入りました。この戦争を終わらせるために、国際社会はいま何をすべきでしょうか。また、私たちは今後の展望をどこに見て、どういう態度をとるべきでしょうか。
日本共産党平和運動局長・国際委員会事務局次長 川田忠明
蛮行包囲する国際的団結を
ロシアの行為は主権国家に対する侵略であり、あからさまに国連憲章を踏み破る暴挙です。国連総会はこれまで4度にわたって、ロシアの国連憲章違反を非難する決議を140カ国以上の賛成で採択し、ロシア軍の「即時、完全かつ無条件」の撤退を要求してきました。
昨年9月の主要20カ国首脳会議(G20)は、2022年3月2日と23年2月23日の国連決議(ES―11/1、ES―11/6)を「再確認」し、「国連憲章に沿って、全ての国は(中略)武力による威嚇又は武力の行使は慎まなければならない」とする宣言を満場一致で採択しました。これにはロシアも反対できませんでした。
「国連憲章を守れ」の一点での国際的団結を実現し、ロシアの蛮行を包囲することこそ、戦争を終わらせる道であることを強調したいと思います。
「即時停戦」の議論をめぐり
ウクライナでの戦闘が続くもとで、「即時停戦を要求すべきだ」との意見もあります。しかし、これにはいくつかの問題があります。
ロシアの侵略に対する、ウクライナの抵抗と自衛の行動は、基本的に国際法に照らして正当なものです。世論調査ではウクライナ国民の圧倒的多数は、大きな犠牲を被り、葛藤を抱えながらも、侵略をやめさせるまで戦うことを支持しています。ロシアとウクライナに「即時停戦」を要求することは、違法な侵略者とそれに抵抗する者を同列におくことになり、道理のある態度とは言えません。
ウクライナのある女性団体はこう述べています。「私たちは、抵抗の権利を支持する。もしウクライナ社会が武器を捨てれば、ウクライナ社会は消滅するだろう。ロシアが武器を捨てれば、戦争は終わる」(「フェミニスト・イニシアチブ・グループ」22年7月7日)。
侵略に抵抗している人々に「直ちに武器をおけ」と要求するのが適切だとは思えません。ウクライナの人々が求めているのは、ロシアの即時撤退です。国連決議の要求も「即時停戦」ではありません。
ロシアは現在、ウクライナ領土の約2割(クリミアを含む)を不法に占領しています。「即時停戦」は、これを維持する危険をはらんでいます。ロシアは、これまで占領した地域は交渉の対象にしないと、「現状維持」の立場をとっています。国連憲章の原則からも、他国領土を占領し続けることはけっして認められません。侵略1年に際してウクライナを含め141カ国が賛成した国連決議(ES―11/6)も「武力による威嚇又は武力の行使の結果生ずるいかなる領土取得も、合法的なものとして承認してはならない」と表明し、即時、完全かつ無条件なロシア軍の撤退を求めました。この決議の方向にこそ公正な解決の道があります。
ロシアとウクライナが交渉の前提とする要求は、現時点では大きくかけ離れており、「即時停戦」どころか、交渉の兆しも見えません。しかし、戦争は最終的には、交渉をはじめ外交的、政治的な解決によって終結させる以外にありません。
今回のような事態の再発を防ぐには、ウクライナと欧州の安全保障のあり方についても、諸国間での検討が必要です。このように戦争終結にむけては、軍事だけでなく、外交的、政治的解決でのプロセスの前進と国際世論の発展が決定的に重要です。
国連決議(ES―11/6)も、「(国連)憲章に合致した、ウクライナにおける包括的、公正かつ永続的な平和を達成するための外交努力への支援を倍加する」ことを訴えました。両国が交渉に踏みだし、その合意が国連憲章の原則に沿った前向きな内容になるかどうかは、戦況だけではなく、ロシアの蛮行を包囲し、国連憲章の秩序回復を求める世論の発展にかかっています。そのために力を尽くすことが、戦争終結への道を開く上で重要となっているのです。
しかし、それを阻んでいる要因の一つが、米バイデン政権の「二つの害悪」です。一つは「民主主義対専制主義」という、国連憲章という共通のルールとは異なる「価値観」で世界を分断していることです。もう一つは、ロシアの侵略を批判する一方でイスラエルのガザ攻撃を擁護するダブルスタンダード(二重基準)をとってきたことです。これらを一刻も早く克服しなければなりません。日本政府も米国追随の姿勢を直ちに改めるべきです。
ガザをめぐってはイスラエルが、国際法が固く禁じたジェノサイド(集団殺害)ともいうべき大規模攻撃を続けていることに対し、わが党は即時停戦を強く求めています。これは、無法なイスラエルの攻撃を止め、ガザの人々を深刻な人道的危機から救う緊急かつ絶対に必要な措置だからです。
国連総会も23年12月12日、「即時の人道的停戦」を求める決議を、全加盟国の8割にあたる153カ国という圧倒的多数の賛成で採択しました。決議は、人質の無条件・即時解放も要求しました。しかし、米国とイスラエルはこの決議に反対し、停戦を拒んでいます。それだけに、即時停戦を求める国際世論のいっそうの強化が急務となっています。
「国連憲章守れ」の共同広げ
日本国憲法第9条は「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」としています。それだけにわが国は、米国の軍事戦略への加担をやめ、ウクライナでも、ガザでも、そしてこの東アジアでも、問題の平和的、外交的解決のために力を尽くすべきです。
ウクライナでの戦争を一刻も早く終わらせ、平和を実現するために、「侵略やめよ」「国連憲章守れ」の一致点で、思想・信条、政治的立場の違いを超えた共同を広げていくことを今改めて訴えたいと思います。