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2024年4月2日(火)

主張

介護報酬の改定

訪問介護崩壊の危機を止めよ

 「訪問介護事業所がなくなれば住み慣れた家で暮らし続けられない」「親を施設に入れざるを得ない」。3年に1度の介護報酬の改定で、訪問介護の基本報酬が4月から引き下げられたことに不安と抗議の声が広がっています。身体介護、生活援助などの訪問介護は、要介護者の在宅での生活を支えるうえで欠かせません。このままでは在宅介護がかなわず、「在宅放置」を招きかねません。

 厚労省の調査をもとにした本紙入手の資料で、訪問介護事業所の約4割が2022年度以降3年連続で赤字であることが明らかになりました。ところが、政府はこの現状を無視して、今回の改定で訪問介護の基本報酬を2~3%引き下げるというのです。

■在宅介護壊滅的に

 介護報酬は介護保険から介護施設・事業者に支払われます。引き下げで、地域で訪問介護を支える小規模・零細事業所が経営難に陥って撤退し在宅介護の基盤が壊滅的になる恐れがあります。すでに23年の訪問介護事業所の倒産は67件と過去最多を更新、ほとんどが小規模・零細事業所です。

 厚労省は引き下げの理由に、訪問介護の利益率が他の介護サービスより高いことをあげています。これはヘルパーが効率的に訪問できる高齢者の集合住宅併設型や都市部の大手事業所が利益率の「平均値」を引き上げているもので、実態からかけ離れています。

 訪問介護はとくに人手不足が深刻で利用者の求めに応えられていません。長年の給付費抑制策で基本報酬が引き下げられた結果、ヘルパーの給与は常勤でも全産業平均を月額約6万円も下回ります。ヘルパーの有効求人倍率は22年度で15・5倍と異常な水準です。

■困難な人材の確保

 政府は介護職員の処遇を改善した事業所に加算をつけるとしますが、すでに加算を受けている事業所は基本報酬引き下げで減収になるだけです。加算も不十分で、基本報酬引き下げ分をカバーできない事業所が出ると予想されます。

 今回の改定では介護職員の処遇改善のため報酬を0・98%引き上げるとしています。これにより厚労省は職員のベースアップを24年度に月約7500円、25年度に月約6000円と見込みます。しかし、数字の根拠が明確でないうえ、仮にこの賃上げがされたとしても、これでは介護人材の確保は困難です。

 日本共産党の小池晃書記局長・参院議員は国会で、訪問介護の報酬引き下げ撤回のための財源は、年約1兆円の訪問介護総報酬に対し約50億円にすぎないと示し、引き下げ中止を迫りました。国民の安心を確保する気があるなら実行はたやすいことです。

 介護保険をめぐっては、利用料の2割負担の対象者拡大、要介護1・2の生活援助サービスの保険外しなどさまざまな改悪案が出されています。改悪を許せば在宅介護は崩壊し、親の介護のための「介護離職」を増大させ、「保険あって介護なし」を招きます。24年度予算の軍事費は約8兆円です。軍事でなく暮らしに予算を充てて介護保険の国庫負担割合を増やし、保険料・利用料の軽減、介護報酬の抜本的引き上げを実現させなければなりません。


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