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2024年4月22日(月)

皆の願いでつくる学校 奈良教育大付属小(1)

どの子にも居場所

 奈良市にある奈良教育大学付属小学校(付小)は「みんなのねがいでつくる学校」を掲げている学校です。いま、その教育が「不適切」とされ、教員の強制的な入れ替えが行われました。保護者からは「先生を早く戻して」との声があがっています。何が起きたのか、連載で考えます。(染矢ゆう子)


写真

(写真)山室さんが教えた付小の子どもの絵「働くお母さんはすごい」(5年)(喜楽研『奈良教育大学附属小学校の豊かな教育』から)

 付小では入学者を学力選抜でなく、抽選と発達調査で決めています。1965年に決めた「どの子をも大事にする」方針を約60年続け、「子どもの発達を信じて徹底的に待つ」ことを学校づくりの原則にすえています。

小さい時のおれやねん

 相愛大学(大阪市)教員の石本日和子さんは教員志望の学生たちと何回も付小の授業を見学しました。彼らは日頃は大阪で学校支援ボランティアをしています。教室に入らない子を「手を引っ張って入れろ」と教員から言われ、悩んでいました。ある時、付小の授業を見て「こういう教育がしたい」と、石本さんを誘うまでになりました。

 見学に行くと、6年生が描き残しておきたい自分の姿を表現する“卒業の絵”を描いていました。しばらくすると1年生が1人教室に入ってきました。6年生の担任も子どもたちも頭ごなしに追い返したりしません。

 絵をのぞいている1年生に「靴下の色やけどな、何色がいい?」と一人の6年生がたずねました。1年生が「黒」と答えると「そうかあ」と言いながら黒を塗りました。

 その絵は小さい1年生が6年生のノートをのぞき込んでいる絵でした。石本さんが聞いてみると「おれとこの子は“ペア”やから。集会の時この子と一緒に活動した」。よく教室にも訪ねてくるそうです。

 この6年生は4年生のときまで教室でじっと座ることが苦手だったといいます。「だから、この子は、小さい時のおれやねん」と石本さんに伝えました。「付小はおれがどんなことをしても認めてくれた。だから落ちつけた」

手をつなぎ教室に戻る

 チャイムが鳴ると、6年生は絵の具の片づけをして1年生に「教室に戻ろうか」と声をかけ、手をつないで出ていきました。

 「自分のペースで学んでいく場所と時間を、権利として保障する学校だと思った」と石本さんは話します。

 付小の図工科では、学年ごとに子どもの興味をひく題材で、表現する力やつくる力をつみあげています。「6年生になると誰もが、人や物を丁寧に観察し、構図を考えた絵を描けるようになります。色と形や画面作りを工夫して表現することで、世の中の出来事を見つめ、自分事とすることをめざします」と付小で教えていた山室光生さんはいいます。

 しかし、付小の教育は突然、「不適切」とされました。

 (つづく)


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