2024年10月13日(日)
日本記者クラブ 党首討論
田村智子委員長の発言
日本共産党の田村智子委員長は12日、日本記者クラブの党首討論に出席し、総選挙の争点について、与野党党首と討論しました。
総選挙で何を訴えるか
共産党には政治を変える力がある
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冒頭、一番訴えたいことをフリップで掲げ、田村氏は「変える。」と書き、次のように述べました。
田村 裏金を暴き、これは自民党の組織的犯罪だと徹底追及してきました。企業・団体献金全面禁止を30年間訴え続けて、今、政治改革の焦点へと押し上げています。日本共産党には政治を変える力がある。大いに訴えていきます。
政治の責任で賃上げと労働時間の短縮を。消費税廃止に向けて直ちに5%へ。軍事費2倍ではなく、社会保障と教育の予算を増やす。暮らし応援こそ経済を元気にする道です。そして憲法9条を生かした平和外交を進め、軍事同盟強化に断固として立ち向かいます。
気候危機打開、ジェンダー平等を前へ、こうした「政治を変える。日本共産党の躍進で」と、大いに訴えます。
日本被団協がノーベル平和賞受賞
いまこそ核禁条約の批准を
続いて党首間の討論に移り、田村氏は石破茂首相に次のように質問しました。
田村 石破総理に核兵器についてお聞きします。日本被団協のノーベル平和賞受賞は本当に感動いたしました。
その授賞理由が大切だと思うんです。被爆者の皆さんが核兵器の非人道性を身をもって示してきた。このことが、核兵器は二度と使われてはならないという「核タブー」をつくり、そして過去80年近く核兵器を戦争で使わせていないという、大変重要な授賞理由です。
この「核タブー」は核兵器禁止条約に実っています。
核兵器は使われてはならないという立場に立つなら、被爆者の皆さんが切望する核兵器禁止条約を日本政府は批准すべきだと考えますが、改めて石破総理にこのことをお聞きしたいと思います。
石破 核がどんなに悲惨なのかを、もっともっと全世界の人が知らなければいけない。被爆国であるわが国は悲惨さを身をもって体験しています。その悲惨さをどれだけ訴えていくかということです。
もう一つは、なぜウクライナはロシアから侵略されたのか。(ウクライナは)ブダペスト合意で核を放棄した。ロシア、アメリカ、イギリス、フランス、中国。核兵器保有国が守ることに全くならなかった。核抑止力というものから目を背けてはいけない。そしてまた核のない世の中をつくっていかなければいけない。これをどう両立させるかです。
田村 その核抑止に対して「核タブー」が今国際世論になっているのですね。結局、核禁条約には背を向ける、答えられないわけです。
それどころか、日米同盟強化だと言って、アメリカの核抑止の強化を日米政府一体で進めようとしているわけです。この核抑止とは、いざとなれば、核兵器を使うぞという脅しですから、(核兵器は)二度と使われてはならないという被爆者の願いを踏みにじるものだということは厳しく指摘しなければなりません。
中小企業の賃上げ
直接支援に踏み切れ
田村氏はまた、中小企業の賃上げ問題について石破首相に質問しました。
田村 石破首相に賃上げについてお聞きします。自民党も最低賃金1500円を目標に掲げるようになったわけですが、本気で実現しようとすれば、中小企業への支援をどうするのか。ここが鍵になるというのは、もう誰もが認めていることです。
ところが、総理は先日、国会での私との討論のとき、中小企業への直接支援を求めましたら、「それは全体主義だ」とまで言って拒否された。
アベノミクスで始まった賃上げ減税は、賃上げに対する法人税減税ですから直接支援だと思うんです。これでトヨタ自動車は10年間で440億円ものを減税の恩恵が受けられたわけです。黒字大企業には賃上げの直接支援をしながら、なぜ赤字でも何とか賃上げに頑張ろうという、中小企業、小規模事業者への直接支援について「全体主義」とまで言って否定されるのか、お答えください。
石破 中小企業の皆様に対する賃上げが非常に重要だということは私もよく認識しております。いかにして価格の転嫁を容易にするか。そして中小企業と、ほとんどが下請けですから、それに負担をかけることがないように、きちんとそこを徹底した監視をすることをやっていきたい。田村さんがおっしゃるように、中小企業の方々にきちんと賃上げができる体制は必ず整えてまいります。
田村 言っていることと、やっていることが違うわけです。間接支援は言うけれど、直接支援は言わない。
岩手県はもう県独自の賃上げ助成をスタートさせました。徳島県も賃上げ助成を行うと表明しました。しかし県だけでは限界があって、国の直接支援が絶対に必要だという声が既にいくつも起こっている。大企業には減税で直接支援をしながら、中小企業には事実上、自助努力を求めるという逆立ちした政策を転換しなければ、賃上げが進まないと指摘したいと思います。
“閉鎖的イメージ”に答えて
共産党の党運営は最もオープンだ
続いて記者からの質問に移り、田村氏に対して「最近、共産党の中で委員長の公選制を主張する人を除名したり、党の問題を提起した地方党員が離党しているケースがある。共産党は、極めて閉鎖的な政党ではないかというイメージもどんどんでき上がっているのではないか」と質問され、田村氏は次のように答えました。
田村 私たちの党大会を見ていただければ、どれだけオープンかということはよくわかっていただけたのではないかと思います。一番大事な方針の決定のときの議案を、2カ月も前に国民の皆さんにも発表し、党内で議論を尽くし、党大会でも3日にわたる議論をオープンにして、どなたでも聞かれる状態にいたしました。その上で、方針を決定し、その決定を実践する上での役員を私、委員長も含めて選んでいただいた。そういう意味では党大会の運営見ていただければ非常にオープンな運営をやっていることをわかっていただけると思います。
同時に今、冒頭でご指摘いただいた問題はルールを守ろうということです。党の中のルールが守れない、守る意思がない党員は、党員でいることができないという当たり前の運営ではないかと思います。
一方、自民党の党首選挙を見ていて、果たしてこれが民主的な党運営だろうかと大変に疑問に思いました。国民の前であれだけ述べられたことが、次々と手のひら返しになっていく。やはり党内の政策決定、方針決定は、もっときちんと議論されて、そして団結ができる方針決定をやるべきではないかと思うところです。
総選挙での共闘
安保法制廃止を基礎に共闘を発展させるのが党の立場
今回の総選挙での共闘を巡り、記者が「どうして候補者を取り下げることができなかったのか。安保関連法の廃止が事実上棚上げになるようなことがあったとか、野党共闘の土台が損なわれているということは、責任は立憲にあって共産党にはないんだと聞こえる」と質問しました。
田村 まず裏金を暴いて追及の先頭に立ってきたのは私たち、日本共産党です。それが、日本共産党の候補者を降ろすことを前提として、裏金議員との対決というふうに話が進むのはいかがなものかと思います。
それから、事実として今、私たち約70の小選挙区に候補者を立てていません。岩手、宮城、長野、東京などです。中央での協議にならなくても、私たちはそれぞれの地域のこれまでの経緯を踏まえた対応をしているのが事実です。
先ほど安保法制の話がありましたが、やはり安保法制の廃止というのは、これは個々の政策とは全く次元の違う、まさに立憲主義が壊されたままでいいのかという、日本のあり方に関わる問題です。ここで、安保法制の廃止という市民と野党の共闘の基盤が損なわれているもとでは、これまでと同じ対応はできないのは、もう私たちの変わらぬ立場になります。新たな共闘の発展のために頑張っていきたいと思います。
ウクライナ戦争をどう見る
国連憲章での世界の結束を ブロック対立は最も危険な流れ
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安全保障問題を巡り記者から「ウクライナ戦争、ロシアの侵略は独立国が、圧倒的な軍事力を持つ国に一方的に侵略された。その場合、一体国民を守るためにどうしたらいいか。外交力は大事だと。しかし、ウクライナでは外交力なんか全然効いてない。当然ながら政治の責任として、国民を守るためにどうしたらいいか」と質問が。これに対し田村氏は次のように答えました。
田村 ウクライナへのロシアの侵略戦争は、国連憲章違反。そして大ロシア帝国時代の領土拡張という考え方にプーチン大統領が立って行ったものであって断じて許されない。
これを本当に終わらせ、許さない力はどこにあるかと言えば、やはり国連憲章違反を許さない、国際法違反を許さないという一点での世界の一致結束だと思うのです。
ところが、一方でイスラエルのガザ攻撃については、イスラエル擁護にアメリカが動く。こういうダブルスタンダード(二重基準)が世界の中に広がって、どっちの大国につくかというブロック対立になっていくことが最も危険だと思います。
ロシアのウクライナ侵略戦争はなぜ起きてしまったのか。本当に検証が必要で、最も検証されなければならないのは、旧ソ連が崩壊し、ワルシャワ条約機構がなくなったときに、いかにブロック政治ではないロシアも巻き込んだ連携を、つくっていくか努力が求められたと思います。
もう一点、東アジアには、そういう軍事ブロック対立になっていないのです。だからそれを持ち込んでは駄目だと。ASEAN(東南アジア諸国連合)は包摂です。それを進めていきたいと思います。
自衛隊への態度
最大の問題は集団的自衛権行使容認 すぐになくせという立場ではない
続いて、「共産党だけが自衛隊違憲論だ。災害があれば自衛隊に出動を求める。救助を求めながら、一方で“あなたの存在は違憲なんだ”と。これは極めて不健康、不道徳だ。これは一気に自衛隊を憲法上位置づけるっていう具合に考えたらすっきりする」と質問。これに対して田村氏は次のように述べました。
田村 いまの自衛隊は、集団的自衛権行使容認のもとの自衛隊なのです。日本はどこも攻撃されていなくても、在日米軍などの軍事行動によって、米軍を守るということで自衛隊が活動する。こういう自衛隊を憲法に書き込んでしまったら、それはもう憲法9条の精神が丸ごと覆されてしまうと思います。
いま問題になっているのは、この集団的自衛権行使容認のもとの自衛隊が、これでいいのか。ここが政治の焦点だと思うんです。そういうふうに自民党政治が進めてきたために、ますます自衛隊は憲法違反の存在になっている。事実として、もう武力を持っていますから。これは軍隊ではないと見なすことはできないでしょう。
いま(自衛隊を)なくせと言っているわけじゃないです。まずこの集団的自衛権行使容認の「閣議決定」もなくす、安保法制もなくす、そして、本当に平和で大丈夫だと、いわば軍隊、武力で守らなくて大丈夫だという国際情勢をつくっていきながら、解消に向かうのが私たちの立場です。
◇
最後に、総選挙での獲得議席の目標を聞かれ田村氏は次のように述べました。
「小選挙区では沖縄1区の議席を必ず守り抜き、もちろんオール沖縄ですので1区から4区の勝利のために貢献したいと思います。そして比例は、現有9議席を必ず守り抜いて、空白の比例ブロックの議席獲得、そして現有のところは躍進を目指してですね、頑張るということです」
公明 裏金議員推薦「地元は納得」
維・国 自公連立政権入り否定せず
12日の日本記者クラブの討論会で、公明党が自民党の裏金議員にも推薦を出している点について「徹底した『政治改革』を掲げながら、裏金問題で自民党から公認すらされなかった方に推薦を出すことが国民の理解が得られると本気で思っているのか」などの質問が出されました。公明党の石井啓一代表は「自民党の公認・非公認と、われわれの推薦の基準は違う。地元の党員・支持者の納得感を最大限重要視している」と答えました。
また、自民・公明が過半数割れした場合に自公連立政権に加わる可能性について問われ、日本維新の会の馬場伸幸代表は「選挙が終わって、それぞれの政党の議席数がどうあったかということが今後の判断に大きく影響してくる」と回答。国民民主党の玉木雄一郎代表は「これまで掲げてきた政策をしっかり進めていくことで一致できれば協力するし、一致しなければ、おかしいものにはおかしいといっていく」などと述べ、両代表とも自公連立政権入りを否定しませんでした。