2024年10月28日(月)
主張
現行保険証の廃止
混乱招く愚策は直ちに撤回を
政府は12月2日から現行の健康保険証の発行を停止するとしています。9月時点でマイナ保険証(保険資格情報とひもづいたマイナンバーカード)の利用率は13・87%と低迷しています。医療現場の実態や保険証存続を求める国民の声を無視した健康保険証の廃止はやめるべきです。
マイナ保険証をめぐって医療現場では現在もトラブルが続いています。開業医の6割が加入する全国保険医団体連合会の調査では、5月以降トラブルがあったと回答した医療機関が約7割、資格確認ができずいったん10割負担となったり、受診を諦めるケースもありました。トラブルがあった医療機関の約8割が現行の保険証で対処しています。
■期限切れのおそれ
今後さらに混乱をもたらすと予想されるのは、マイナ保険証は5年ごとの更新が必要で、更新には3カ月以内に役所に出向く必要があることです。更新を忘れて医療機関にかかった時に資格情報が無効となり、窓口で10割負担を求められる事例が頻発しかねません。
現行の保険証は期限が来れば新しい保険証が送られてきます。公的医療保険制度では、すべての被保険者に遅滞なく保険証を届けることは国と保険者の責任だからです。マイナ保険証では、それが被保険者の責任にされてしまいます。
マイナ保険証ではカードの券面に資格情報が記載されていないため、マイナ保険証が読み取れないなどのトラブルに備えて、マイナ保険証を持つ人には、紙の「資格情報のお知らせ」が届けられます。「お知らせ」には現行の保険証と同様の資格情報が記載されており、トラブルの際はこれを提示します。マイナ保険証を持たない人には「資格確認書」が送付されます。
保険証を廃止しながら、保険証と同じ「資格情報のお知らせ」「資格確認書」を配るのは支離滅裂です。しかも、資格確認書は当面は申請なしで届きますが、法令上は申請が必要です。「当面」がいつまでかは決まっていません。
そもそもマイナンバーカードをつくるか、マイナ保険証として使うかは任意です。マイナカードの取得を事実上、強制するために強引に保険証を廃止することは許されません。
■利点を宣伝するが
厚労省はマイナ保険証の利点を▽本人の同意があれば他院で処方された薬など情報共有できる▽手続きなしで高額療養費制度の減免が受けられる―と宣伝します。しかし、情報共有は「おくすり手帳」で済むし、オンライン資格確認設備がある医療機関ではマイナ保険証でなくても高額療養費制度は手続きなしで受けられます。政府の宣伝は誇大と言わざるを得ません。
ではなぜ、政府が固執するのかと言えば、国民の所得・資産、税・保険料負担、社会保障給付を一体的に把握し、徴税強化と給付削減を狙っているからです。財界も個人情報の活用を狙って要求しています。
マイナンバー制度で政府が国民一人ひとりに番号をつけ、多分野の個人情報をひもづけして利用できるようにすること自体、プライバシー権の侵害の危険をもつ重大な問題です。保険証廃止、マイナ保険証強要の中止を求めます。