2024年10月30日(水)
主張
日米共同統合演習
「軍事対軍事」で戦火招く危険
自衛隊と米軍による最大規模の日米共同統合実動演習(キーン・ソード=鋭い剣)が23日から11月1日まで、沖縄県など南西諸島を中心に、全国各地で行われています。台湾有事での中国と米国の武力衝突を想定しているとみられ、最前線の南西諸島をはじめ、米軍のアジア最大の出撃・中継・補給拠点である日本が戦場になることを前提とした軍事演習です。自公政権が2022年に策定した安保3文書に基づく「戦争国家」づくりの一環です。
■日本の戦場化想定
キーン・ソードは、陸海空の3自衛隊と陸海空海兵の米4軍などがそろって参加し、実際の部隊を動かします。規模は、自衛隊と米軍を合わせ4万5千人に上ります。
戦場になることを前提にした訓練として象徴的なのは、台湾に近い与那国島や石垣島から沖縄本島への患者輸送訓練です。与那国島では、住民や観光客の島外への避難訓練も行うとしています。
このほか、沖縄本島での滑走路被害修復訓練やCBRN(化学・生物・放射線・核)兵器による攻撃に対処する訓練があります。滑走路修復訓練は、那覇空港や米空軍嘉手納基地が攻撃される事態を想定しているとみられます。
攻撃を受け空自基地が使用できなくなる事態を想定し、空自の戦闘機などが民間空港を使う訓練も実施しています。使用空港は、長崎、熊本、宮崎、奄美(鹿児島県)、徳之島(同)など九州全体に及びます。
空港の軍事利用に加え、部隊や装備の輸送などのため各地の民間港湾が使われているのも重大です。
患者輸送訓練では、米海兵隊と陸自の垂直離着陸輸送機オスプレイが初めて与那国島に飛来しました。
陸自のV22オスプレイは27日、与那国駐屯地を離陸しようとした際、機体が揺れ、一部が地面と接触して損傷する事故を起こしました。V22は23日にも海自鹿屋基地(鹿児島県)に緊急着陸しています。陸自は保有する全17機の飛行を中止しました。同機の欠陥ぶりを改めて示しています。
■対中国の攻撃拠点
南西諸島は、中国に対する日米の攻撃拠点にもなります。
米海兵隊は石垣島で、ミサイルも装備可能な高機動ロケット砲システム(ハイマース)を新石垣空港まで空輸し、陸自の石垣駐屯地に展開する訓練を初めて実施しました。
陸自は、沖縄本島、宮古島、石垣島、奄美大島、徳之島で、北海道や東北からも動員した地対艦ミサイル部隊などによる敵艦船への攻撃訓練を実施。これらの部隊が装備しているミサイル(12式地対艦誘導弾)は、相手国の領土に撃ち込む敵基地攻撃兵器として長射程化され、25年度に配備される予定です。
自衛隊トップの吉田圭秀統合幕僚長は「力による現状変更を決して認めない強い意志を示す」などと述べています(22日)。しかし、今回の演習をはじめ、敵基地攻撃能力の保有や5年間で43兆円にも上る大軍拡など「戦争国家」づくりは、中国との緊張を強め、日本に戦火を招く危険を高めます。今必要なのは、東アジアに平和を構築する憲法9条に基づく外交です。