2024年11月1日(金)
主張
フリーランス新法
労働者性を認め権利の保障を
2023年4月に全会一致で成立した「フリーランス・事業者間取引適正化等法」(フリーランス新法)が1日から施行されます。同法は、フリーランスと発注事業者間の取引の適正化を図り、フリーランスが安心して働ける就業環境の整備を目的としています。
■適正取引一歩前進
発注者の義務として、▽書面などによる取引条件の明示▽報酬支払期日の設定と期日内の支払い▽募集情報の的確表示▽中途解除などの事前予告と理由の開示―を定めています。
また、発注者に対し▽注文した物品や成果物の受領拒否▽報酬の減額▽費用負担をせずに注文内容を変更する―など七つの禁止行為を例示しています。育児や介護との両立への配慮や、相談担当者を設けるなどハラスメント対策の体制整備も盛り込みました。
フリーランスの多くが報酬カットや一方的な契約打ち切りなどに苦しむもとで適正な取引のルールを設定するのは一歩前進です。
しかし、フリーランスは個人請負方式で、仕事の発注者と雇用契約でないことを理由に労働法制の保護の対象外にされ、無権利状態に置かれてきました。新法も公正な取引確保のための最低限のルールにすぎません。この状況を改善し、フリーランスの労働者性を認め、権利保障することが必要です。労働者としての保護法制の確立が急務です。
テレワークやプラットフォームビジネスなど時間や場所の拘束性が低い働き方が増えるなか、世界では請負・委託契約でも、仕事の指示関係、経済的従属性などを基準に労働者性を認める方向が強まっています。
■雇用関係広く推定
国際労働機関(ILO)「雇用関係に関する勧告」(第198号、2006年)は偽装請負などと闘う措置を各国政府に求めるとともに14の指標を示し、そのうち一つ以上が認められる場合は雇用関係があると法的に推定すると定めています。欧州連合(EU)が今年採択した「プラットフォーム労働指令」も、「支配と指揮」を示す事実が認められる場合、雇用関係を法的に推定すると定めます。
ところが、日本の労働基準法の「労働者」の判断基準は、いくつかの要素を例示して「総合的に判断」とするのにとどまります。この判断基準は40年近く前につくられた限定的なもので、労働者性を狭くとらえています。識者からも「もはや時代遅れ」と指摘されています。
日本共産党はフリーランスとギグワーカーなど非正規ワーカーを保護する「非正規ワーカー待遇改善法」を発表(23年10月18日)し、国際的動向を踏まえて▽労働者性についての判断基準を見直し、より広く認めて、実態は労働者なのに労働者性が認定されない事態をなくす▽企業が保険料負担も含めて労災に責任を持つ仕組みをつくり労災補償を実現・拡充▽労働組合を結成して団体交渉とストライキの権利を保障し報酬の最低保障や休業手当の支給などを制度化する―ことを提案しています。
どのような契約であっても、すべての働く人たちに「ディーセント・ワーク(人間らしい労働)」を実現するために引き続き全力をあげます。