2024年11月6日(水)
主張
COP29の課題
大幅な削減目標を掲げるべき
地球温暖化対策について各国政府が議論する国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が11日から22日までの日程でアゼルバイジャンのバクーで開かれます。
「地球沸騰化」ともいわれる地球温暖化による気候危機は、すでに世界各地で熱波、豪雨、巨大台風、干ばつ、山火事などの自然災害を引き起こしています。日本でも、能登をはじめ線状降水帯による豪雨被害、猛暑による熱中症の増加など国民の命が脅かされ、農業や水産業にも大きな被害を与えています。
■猶予期間は数年間
フランスのパリで2015年に開かれたCOP21で、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して、2度を十分に下回り、1・5度を目指す枠組みが作られました。21年のCOP26の「グラスゴー気候合意」では、1・5度が事実上の目標となりました。
国連環境計画(UNEP)は10月24日、世界の温室効果ガスの排出量は増加を続けており、対策が現状のままなら、産業革命前からの気温上昇が最大3・1度に達するとの報告書を発表しました。気温上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標達成に向けた猶予期間は数年以内と指摘し、各国に即時かつ大規模な温室効果ガス削減を求めました。
報告は1・5度の目標達成は技術的には可能だとし、再生可能エネルギーの活用で抜本的迅速な排出削減が期待できるとしました。
■石炭火力の廃止を
昨年、アラブ首長国連邦のドバイで開かれたCOP28では、温室効果ガスを19年比で30年に43%減、35年に60%減らすことで合意しました。日本は世界第5位の温室効果ガス排出国です。現在、政府の掲げる30年度に13年度比で46%削減という目標は、国連の1・5度目標に整合していません。削減目標を見直し、国内の温室効果ガス排出量を大幅に、できるだけ早く削減すべきです。
今年4月、イタリアのトリノで開かれたG7(主要7カ国)気候・エネルギー・環境相会合では、“排出削減対策のない”石炭火力発電を35年までに段階的に廃止することに合意しました。
ところが、日本はアンモニアの混焼など二酸化炭素の削減効果が乏しい技術を用いる石炭火力へ投資を振り向けるGX(グリーントランスフォーメーション)で国内の石炭火力を温存するだけでなく、アジアに広める方針です。グリーンウオッシュ(環境配慮をしているように装いごまかすこと)だとの批判の声が上がっています。
国連が繰り返し「先進国は30年までに石炭火力を段階的に廃止を」と求めたのに対し、日本はG7で唯一、石炭火力からの撤退期限を示していません。
COP28では30年までに再生可能エネルギーの容量を3倍にし、世界の平均年間エネルギー効率を2倍にすることに日本を含めて合意しています。
石炭火力からの速やかな撤退とともに、原発への固執をやめ、再エネの普及をすすめるべきです。1・5度目標と整合のとれた野心的な温室効果ガスの新たな削減目標とその裏付けとなるエネルギー基本計画の策定が求められます。