しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2025年3月28日(金)

破綻する関西万博(1)

安全性 護岸浸食・ガス爆発…

 4月13日に開幕予定の大阪・関西万博。ガス爆発の危険や大赤字の可能性など致命的問題点を抱えたままで開催しても国民との矛盾は避けられません。無法なカジノ開設のために、自公政権と維新、財界が国民無視で大阪市の夢洲(ゆめしま)に誘致し、破綻の淵に立たされている万博の現実を検証します。


地図

 万博開催が目前に迫っているのに会場は未完成で数々の問題に見舞われています。その最たるものが建設費344億円をかけた「大屋根リング」の下の護岸が約600メートルも浸食されていた問題です。協会は内水面予定部分への注水後、風の影響で波の高さが想定以上に高くなってしまったと説明しますが、浸食は注水開始(2月17日)の2日後にすでに確認されています。ところが発表されたのは3月10日。万博協会副会長の吉村洋文大阪府知事(日本維新の会代表)は「リングの安全性に問題はないが適切に対応したい。(工事は)大がかりにはならない」(11日)と火消しに懸命でした。

脆弱な人工島

写真

(写真)万博用地・第1交通ターミナルの歩道付近に立ち並ぶガス抜き管=23日、大阪市此花区・夢洲

 夢洲は台風で多数のコンテナが吹き飛ばされるほどの被害を受けてきた地域。この程度の風波を「想定していなかったこと自体がずさんだ」。日本共産党の辰巳孝太郎議員は19日の衆院経済産業委員会でこう批判しました。

 そもそも夢洲は地震など自然災害に脆弱(ぜいじゃく)な人工島です。陸路は夢舞大橋と夢咲トンネル(道路と地下鉄)に限られています。協会も、帰宅困難となった来場者約15万人が3日間、会場内に取り残されることは想定せざるをえなくなっていますが、そんな危険な場所に人を集めて万博を開くこと自体の是非が問われます。

危険性指摘も

 万博協会のずさんな対応の最たるものが、昨年3月に会場建設現場で発生したメタンガス爆発事故です。会場西側の夢洲1区に埋め立てた廃棄物由来のガスの危険性がかねてから指摘されていたのにまともな対策を講じず、事故後は情報を小出しにして事故を矮小(わいしょう)化しようとした万博協会の姿勢が市民から強い批判を受けました。協会は6月にようやく対策を発表。夢洲1区の施設で換気設備の整備を進め、11月には爆発が起きた東トイレの地下ピット(空間)で初めてメタン検知なしを記録しました。ところが12月に今度は東トイレ付近や西エントランス広場付近の地下ピットで爆発濃度を検知。対応に追われています。

1日3トン メタン発生

写真

(写真)万博会場整備中の夢洲。写真奥が夢洲1区。手前右側はコンテナターミナル=22日、大阪市

 会場のうち夢洲1区は現役の廃棄物処分場です。大阪広域環境施設組合の昨年12月の調査では、83本のガス抜き管から、ここ数年で最も多い1日あたり約3トンのメタンガスが発生しています。万博会場にはすでに埋め立てが終わったエリアを使用するとはいえ、地下からのガス発生を止めることはできません。

 「基本的には飲食店舗は火気厳禁で募集している」。昨年4月、万博協会の幹部は1区に関してこう強調していました。ところが条件を付けてプロパンガスの使用を認めています。

 当初、万博協会が「ガスの発生はない」と主張していた夢洲2区、3区の会場でも、大催事場地下ピットなどすでに10カ所以上でメタンが検出されています。協会は、約200台の携帯型ガス検知器を各施設管理者らに貸与する方針ですが、想定外の場所にたまる恐れは否定できず、そんな危険な場所で開くこと自体が問われています。

 さらに、夢洲1区では万博開催中も会場外で廃棄物の焼却残滓(ざんし)の埋め立てが続けられます。辰巳孝太郎議員が国会で「こんな区域で巨大イベントが行われた例はあるのか」とただすと、中田宏環境副大臣は「把握していない」と答えざるをえませんでした。

 万博協会はいま国内外から約3千万人の来場を見込むイベントを、現役の最終処分場を含む会場で半年間も開催するという「前代未聞の実験」を強行しようとしています。(つづく)


pageup