2000年3月9日「しんぶん赤旗」
【解説】現行日米安保条約の調印のために、岸首相は、一九六〇年一月十七日〜二十一日に、ワシントンを訪問した。安保条約は、一月十九日に調印され、またこの日に、事前協議にかんする条約付属文書として、「岸・ハーター交換公文」および「藤山・マッカーサー口頭了解」が合意された。
アメリカ国務省は、訪問の終了後に、安保条約改定交渉についての資料「岸首相のワシントン訪問(一九六〇年一月十七日〜二十一日)」を作成した。この資料には、一九五八年九月から一九六〇年三月まで、交渉の全過程について、一連の関連文書とあわせて、「日誌」が記載されている。そのなかの「訪問前の行動」の部分に、一九六〇年一月六日、日米間で、「条約の秘密部分」についての合意が達成されたこと、この「秘密部分」とは、「事前協議」と「朝鮮国連軍に対する武力攻撃の際の取り決め」にかんするものであることを明示した次の記述が、含まれている。
▼一九六〇年一月六日
事前協議および朝鮮国連軍に対する武力攻撃の際の取り決めにかんする条約の秘密部分について合意を達成した討論記録および安保協議委員会(SCC)の第一回会合のための覚書
【解説】前記資料で示された「条約の秘密部分についての合意」をしめしたものと思われるのが、一九六〇年一月六日、東京での藤山外相との協議の内容を、ハーター国務長官に報告した一九六〇年一月六日付のマッカーサー駐日大使の電報である。
この電報によれば、この日の交渉で、それまでの交渉過程での議事録その他の取り扱いにかんする討論がおこなわれ、両者が、三つの文書に署名したうえ、双方でこれらの文書を「秘密」扱いすることに合意しあった。
その三つの文書とは、次の諸文書である。
(1)事前協議方式に関する討論記録、
(2)〔地位協定〕第三条および第十八条第4項に関する合意議事録、
(3)条約発効後に開かれる安全保障協議委員会第一回会合のための覚書(この第一回会合は一九六〇年九月八日におこなわれた)。
アメリカ側では、(1)の文書は「秘」、(2)は「部外秘」、(3)は「極秘」扱いとすること、日本側では、(1)は「厳秘」、(2)は「秘」、(3)は「厳秘」扱いとすることが、合意された。
秘密扱いとされたこれら三つの文書のうち、〔資料1〕での記述にてらしてみると、(1)の文書が「事前協議」にかんする秘密の取り決めを含む文書、(3)の文書が「朝鮮国連軍に対する武力攻撃の際の取り決め」にかんする秘密の取り決めをふくむ文書だと、推測される。
「秘」
受信 一九六〇年一月六日午前十時三十六分 発信地 東京
宛先 国務長官
番号 2147 一月六日午後九時
藤山氏と私は本日、以下のそれぞれについて、二つの英文の原本に頭文字署名し、取り交わした。
・協議方式に関する討論記録(二つの原本は「秘」指定され、日本が保持する複写は後で「厳秘」指定されることになっている)。
・〔地位協定〕第三条および第一八条第4項にかんする合意覚書(日本が保持する複写は「秘」指定され、われわれが保持する複写は「部外秘」指定)。
・安全保障協議委員会第一回会合のための覚書(アチソン・吉田)(二つの複写とも「極秘」指定。日本が保持する複写は後で「厳秘」指定されることになっている)。
アメリカ政府が保持する頭文字署名された三つの原本は、それぞれ二通の複写とともに、われわれの永久記録のため、国務省北東アジア部あてに送られる。
【解説】マッカーサー駐日大使は、安保条約と関連文書についての作業状況にかんする報告を、一月七日、ハーター国務長官に電報で送った。そのなかには、一月六日に合意した「条約の秘密部分」の諸文書の取扱いが含まれている。かなり長文のものなので、訳文は関連部分にとどめ、他の部分については、項目だけをあげて、内容は略した(太字は編集部)。
「秘」
受信 一九六〇年一月七日午前十時四十一分
発信 東京
宛先 国務長官
番号 2169
国務省の確認とコメントに続くのは、条約を構成する文書群にかんする未終了の行動についての外務省とわれわれの了解。国務省電報1544に対応する。
マッカーサー
【解説】マッカーサー駐日大使は、一月九日、安保条約と関連文書を整理して、その全リストを国務長官に報告した。ここには、一月六日の藤山・マッカーサー会談で秘密扱いとすることで合意された三つの文書は、すべて、安保条約を構成する「条約文書」の一部をなすものとして公式に扱われることが、明記されている。(太字は編集部)
発信 東京 受信 国務省
番号2206 一月九日 午後二時
岸訪問―条約文書
われわれが承知している条約文書の全リストは以下のとおりである。
マッカーサー
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