20、保育
保育基準、保育士の処遇を抜本的に引き上げ、規制緩和から拡充路線に転換します
2021年10月
保育所は、コロナ禍の中でどのような事態であっても、社会的インフラを支えるため開所を続け、保育が果たしていえる社会的役割が浮き彫りになりました。保育所は、マスクの着用が難しい子どもたちが多く、密が避けられない環境です。保育士たちは感染対策と子どもの発達をどう両立させていくか、行事や保育内容を見直すなどそれぞれの園が様々努力をおこなってきました。
しかし、今年の夏にはこれまで感染しにくいといわれてきた子どもたちへの感染が急拡大し、全国の保育所でクラスターが発生し、休園や登園自粛が求められ、働く父母にも大きな影響を与えました。政府からはまともな対策が打たれず、「これ以上どんな努力をすればいいのか…」と現場は疲労感が増しています。休園や登園自粛などの対応が必要となる事態が起きると、保護者が働きに出られない、有給休暇がなくなる、収入が大きく減るなど厳しい事態を引き起こしています。
長年自民党政権は「基準緩和」と「詰込み」で、公的責任を投げ捨て民間・企業頼みの安上がりな保育を推進してきました。2015年からは「子ども・子育て支援新制度」(以下「新制度」)を導入し、市町村の保育の公的責任を後退させ、規制緩和と企業参入を拡大してきました。ビルの一室、園庭・ホールのない保育園が増え、保育園内での事故が増加するなど、保育の質の低下が大きな問題になっています。さらに政府は今年度から始めた「新子育て安心プラン」に、クラス担任を非正規でもよしとする新たな規制緩和を盛り込みました。この間、認可保育所より基準が低い小規模保育(0~2才対象)を促進し、認可外の企業主導型保育は7万人分も作られました。公立保育所の統廃合・民間委託を促進し、認可保育所が足りない地域でも進められ大きな問題になっています。コロナ禍で業務量が増えるなど、保育士の負担は大きくなっていますが、根本的な配置基準の引き上げはなされず、賃金の底上げも進んでいません。
感染対策の面からも、子どもたちの成長・発達の面からも、保育士が安心して保育ができるゆとりある保育基準をつくることがどうしても必要です。これまでの自民党政治が進めてきた規制緩和中心の安上がり保育から、保育拡充路線に転換します。
保育所でのコロナ対策を、国・自治体の責任で徹底します
感染拡大を防ぐために、迅速な行政検査と定期検査をおこないます
―――保育所等で感染者が確認されたら、迅速にすべての子どもと職員を対象に行政検査を行います。
―――保育所等での定期的な検査を、施設の費用負担なく実施できるようにします。
―――保育所等を通じて家庭に検査キットを配布し、子どもの体調不良時にすぐに検査が行えるようにします。
―――在所中の体調不良への対応として、保育所等にも検査キットを配ります。
保護者が安心して休めるように所得補償を確実におこないます
子どもの中での感染を抑えるためには、子どもの体調が悪いときはもちろん、休園や登園自粛となったときに、保護者が安心して休めることが不可欠です。
―――確実に休暇をとれるように、休暇申請・休暇取得をした労働者への不利益な取り扱いが行われないようにします。所得保障を国の責任で行います。
―――未就学児の保護者を含め、小学校休業等対応助成金(自営業者等には支援金)制度の所得保障を従来の制度の問題点(事業所を介さない個人申請と個人給付のさらなる活用。保育所等を通じた制度の周知。自営業者、個人事業主への額の引き上げ)を改善し実施します。
―――休園・登園自粛等に伴う保育料、副食費などの自己負担を返還免除します。
―――保護者が感染した際、子どもを保護する体制を自治体が確保できるようにします。
―――保護者がどうしても休暇取得が困難な場合、代替保育を自治体の責任で行います。
保育所等の感染対策を自治体や国の責任でおこないます
―――衛生資材の購入、消毒など感染対策に必要な経費の補助を増額します。
―――休園の場合も国からの運営費は減額されていません。保育労働者の賃金削減とならないよう指導を強めます。すべての保育労働者に慰労金を支給します。
―――子どもの感染拡大によって、保育労働者が休まざるをえない事態も生じています。その一方で業務負担は増大しています。全ての保育所等を対象に、臨時に保育士を雇えるよう給付金を交付します。
―――人員確保を施設だけの責任とせず、自治体からの人の派遣等も行います。
感染症対策の観点から、直ちに最低基準の見直しに踏み出します
―――現在の保育所の面積基準、人員配置基準は、「密」が避けられないものとなっています。現在行われている面積基準緩和の検討をただちにやめ、感染症の専門家の知見をえて、早急に改善を実行します。
国と自治体の責任で、公立保育所を中心に当面30万人分の認可保育所を増設し、待機児童を解消します
自民党政治が推進してきた保育の「規制緩和」「詰め込み」「企業参入」促進をやめ、公立保育所中心の保育所建設へ国の財政支援を強めます
今年はコロナの影響もあり、毎年増加していた入所申込者数の減少がありました。昨年の出生者数が大きく減り、仕事を辞めた人、育児休業の取得・延長を選択した人が増えた影響があります。しかし、依然待機児童数は5,634人(2021年4月時点)となり、隠れ待機児童数は約8万人とも推計されます。待機児童が多い都市部でも、人口減少地域でも公立保育園の廃止・民営化が進んでいます。全認可保育園の60%を占めていた公立保育所は、35%にまで減少しています。
公立保育所は、コロナ禍でその役割を大いに発揮しました。感染拡大で休園になった園の子どもたちを近隣の公立保育所が受け入れ、保育士の派遣が要請されれば、公立保育所の保育士が応援に入るなど、地域の保育を守る役割を担いました。
―――待機児童問題を解決するために、民間任せでなく自治体が公立保育所建設をすすめられるよう国が責任を果たします。
―――公立保育所に対する新たな財政支援制度を創設し、保育所の建設や分園の配置・改修への補助、運営費の国庫負担分の復活などを行います。
―――民間の認可保育所の建設等に対しても、助成の拡大、利子補給などの支援措置を行います。0~2歳児が入所できる受け入れ先を自治体の責任で確保します。
都市部の土地確保への国庫助成制度をつくります
―――都市部の土地確保の問題に対して、国有地の無償提供や、国庫助成制度の緊急創設を求めます。
人口減少地域でも自治体が責任をもって保育を保障します
人口減少地域では保育所運営が困難になり、統廃合がすすむ事態があります。身近な保育園がなくなり、遠方まで通わなければいけない状況は親にとっても子どもにとっても負担です。
―――過疎地の保育を担っている公立園への補助を復活させます。
―――民間の保育所も、小規模でも安定した保育を維持できるように財政支援を強め、どの地域でも必要な保育を保障します。
保育士の賃上げ、処遇改善をすすめ、保育士不足を解決します
保育士の給与は全産業平均より月10万円低く、どの調査でも賃金引き上げを求める声は圧倒的です。日常的に時間外労働や不払い賃金が広く横行し、平常時から業務量の多さが問題になっていましたが、さらに新たな感染対策の業務が増え、ストレスも増しています。専門職でありながら、保育は子守の延長として考えられまともな賃金が保障されず、正規から非正規の置き換えも進み改善は急務です。コロナ禍で登園自粛期間中、少人数保育を経験した保育士からは「子どもたち一人ひとりに寄り添った保育ができた。こういう保育をしたかった」と声が上がり、少人数保育の良さが実感されています。保育士がやりがいをもち、働き続けたいと思える保育制度への転換を進めます。
保育士の賃金を全産業平均並みに引き上げます
―――公定価格を見直し、ただちに5万円引き上げ、急ぎ全産業平均並みにします。
―――賃金の上昇が11年で頭打ちの国基準を見直し、経験年数に応じ賃金が上昇するよう改善します。
配置基準の見直しで、処遇改善をはかります
―――他の主要国と比べても低すぎる国基準を改善し、保育士を増やし、保育士の負担を軽減します。
―――8時間労働、週休2日が保障される保育士が配置できるようにします。
―――「産休等代替職員設置費補助」をつくり、産休・病休等の代替職員の雇用経費を保障します。
―――保育士を増やし、労働時間の短縮を図り子育てしながら働き続けられる労働環境を整備します。
配置基準の見直しで、保育士の業務負担を抜本的に改善し、非正規保育士の正規化を推進します
国の施策により、公立も民間も保育士の非正規化は急速に進み、低い処遇で正規の保育士と同等の仕事をしている状況も少なくありません。非正規保育士が増えることで少ない正規保育士に負担が集中しているため、それを敬遠してあえて非正規保育を希望する保育士もでてきています。
―――配置基準の見直しなどによって保育士の業務負担を抜本的に軽減します。
―――非正規保育士の正規化を進めながら、正規と非正規の均等待遇をはかります。
―――正規の保育士を基本に運営ができるよう、現場の実態に即した公定価格への見直しをすすめます。
子どもたちが安心して過ごせる保育環境を整備します
日本の保育所の面積基準は、戦後直後に整定されてからほとんど改善がなく、欧米諸国に比べて極めて遅れたものです。保育園での子どもの死亡事故は毎年繰り返し発生しており、死亡に至らない骨折などの重大事故が急増しています。感染対策の面からも、密を避けるためにゆとりある面積が必要です。保育の安心・安全が脅かされる事態が進んでおり、早急に解決が求められています。
面積基準緩和などによる待機児童対策は中止し、当面「新制度」以前の基準に戻し、面積基準引き上げに踏み出します
―――面積基準の緩和ではなく認可保育所建設をすすめ、「詰め込み」を解消し、施設や職員配置の基準を計画的にひきあげます。
―――小規模保育などの基準を引き上げます。
―――地域によっては子どもの数が減り統廃合が進められる園や、定員が埋まらず運営が厳しくなっている園もあります。面積基準を引き上げ、一つの園の子どもの数を減らしながらゆとりある保育環境をつくる方向に転換します。定員が割れても運営に支障がでないよう財政支援を強めます。
―――保育士が6割でよいとされる「地方裁量型認可化移行施設」など、特区を活用した新たな緩和策をゆるしません。
子どもが思い切って遊べる園庭、ホールなどの確保をすすめます
保育園児等の園外活動の安全対策が大きな問題になっています。園庭があるところもないところも、園外へのお散歩や遊びは子ども達の日常の活動で、子どもの成長・発達のうえでも欠かすことができません。しかし、東京を中心に新設される保育園の園庭は十分に確保されているところが少ない状況です。
―――園庭やホールの確保に、自治体や園が積極的に取り組めるようにします
無認可保育所が認可保育所に移行できるよう施設整備、保育士確保などの支援をすすめます
―――無認可保育所にたいして施設整備の負担軽減、保育士確保や資格取得などの支援をし、認可化をすすめられるようにします。自治体が実態把握、指導・監査を適正に行うための体制を強めます。
幼児教育・保育の無償化をすすめます
現在の無償化は、対象が3~5歳、住民税非課税世帯の0~2歳児に限られています。給食費が実費徴収になり、自治体や保育施設の事務負担が増し、新たな負担となった保護者もいます。
―――消費税に頼らない別の道で、幼児教育・保育の無償化をすすめます。ゼロ歳児~就学前のすべての子どもの給食費も含めた完全無償化を進めます。
学童保育については、84、学童保育をご覧下さい。