27、財源提案
社会保障などの財源は、消費税にたよらずに確保できます
2021年10月
コロナ禍が暮らしと経済に深刻な影響を与え、コロナ対策に多額の財政支出を余儀なくなれた結果、国と地方の長期債務残高は、21年度末に1,189兆円、2年前に比べて127兆円も増える見込みとなっています。こうした中で自公政権は、「財政健全化が必要だ」ということを口実にして、社会保障をはじめとした暮らしの予算のいっそうの削減をねらっています。「社会保障の財源確保のために消費税は必要だ」などといって、消費税減税を求める国民の声に背を向け続けています。
しかし、消費税を増税しても、社会保障は良くなりません。自公政権の9年間で消費税は5%から10%に引き上げられ、13兆円もの増税が国民にのしかかりましたが、その一方で、年金給付の削減、高齢者の医療費窓口負担増、生活保護の削減など、9年間で6兆円もの社会保障の改悪が行われきました。
そもそも、日本の財政が悪化した主な原因は、社会保障予算のせいではなく、自民党政権が大企業や富裕層への減税をくりかえしてきたからです。消費税が導入されてから今年度で33年、その税収は448兆円にもなりますが、ほぼ同じ期間に法人三税は323兆円、所得税・住民税は286兆円も減ってしまいました。
軍事費も増加の一途をたどっています。この間9年連続の増加、7年連続で史上最高を更新しています。
こうした税のあり方、予算のあり方を変えれば、社会保障や教育を拡充するための財源は、消費税にたよらずに確保することができます。
コロナ対策に緊急に必要な経費は、国債発行によって賄います
財源問題を考える場合、コロナ危機への対応など、緊急かつ臨時的に必要となる対策の財源と、社会保障や教育などの予算や、恒久的な減税措置などに要する財源とを、区別して考える必要があります。
コロナ対策のためには、ワクチン接種や大規模な検査、病床の確保、休業や時短営業への補償、生活が大変な世帯や事業者への支援、コロナで落ち込んだ消費の回復などに、多額の費用が必要です。日本共産党が先日公表した「新経済提言」に盛り込まれた、今後実施すべき措置だけでも、20兆円を超える規模になります。しかし、これはいくら多額だとはいっても、これから毎年ずっと必要なわけではなく、あくまでも臨時的な支出です。一方、緊急性を要する支出です。「コロナ対策は財源を確保してから」などといっていても、ウイルスは待ってくれません。コロナ対策の支出は、国債発行で賄います。
ただし、「コロナ対策」という看板をかかげれば、何でも構わないというわけではありません。たとえば、自公政権が今年1月に成立させた20年度の第3次補正予算は、歳出の追加総額21.8兆円のうち、医療や検査などの「感染拡大防止策」は4.3兆円にすぎず、残りの多くは、大企業への補助金や公共事業で、おまけに自衛隊の装備に0.3兆円も計上するなど、「コロナ便乗予算」というべきものでした。コロナ危機を乗り越えるために本当に必要な予算なのかを精査し、便乗予算を認めないことが必要です。
富裕層や大企業への優遇をあらため、「能力に応じた負担」の原則をつらぬく税制改革や、歳出の浪費をなくす改革をすすめます
社会保障や教育予算の拡充、消費税の減税など、一時的ではなく、コロナ収束後も恒常的に必要となる財源は、安易に国債増発に頼るのではなく、恒久的な財源を確保する必要があります。日本共産党の「新経済提言」では、消費税の税率5%への減税をはじめ、コロナで浮き彫りになった医療・保健の脆弱性の克服、ケア労働の待遇改善、高等教育の学費半減、中小企業や農業への支援など、あわせて毎年19兆円程度の財源が必要となる提案をしていますが、この財源は、富裕層や大企業への優遇をあらためる税制改革や、歳出の浪費をなくすことで確保します。
大企業への優遇税制をあらためます
安倍政権以前は1兆円だった企業向けの「租税特別措置」(租税特別措置法による優遇措置)が、いまは毎年2兆円に倍増しています。中でも「研究開発減税」は毎年6,000億円前後にのぼりますが、トヨタ自動車1社だけで7年間に6400億円もの減税を受けるなど、その恩恵は一部大企業に偏っています。租税特別措置以外にも、他の企業や海外子会社から受け取った配当の一部を非課税にする「受取配当益金不算入制度」や、グループ間の損益を相殺して税金を減らす「連結納税制度」など、もっぱら大企業が利用する優遇税制が多数存在します。こうした優遇税制を廃止または大幅に縮減すれば、4兆円以上の財源を生み出すことができます。
法人税減税のばらまきを中止し、安倍政権以前の税率に戻します
9年前には実質28%だった法人税率が、自公政権のもとで何度も引き下げられ、23.2%まで下がってしまいました。アメリカのバイデン政権は法人税率の21%から28%への引上げを提案しています。日本でも、中小企業を除いて法人税率を元の28%の水準に戻せば、地方税をあわせて3兆円以上の財源が生まれます。
大株主などの富裕層に、せめて欧米並みの負担をもとめます
富裕層の所得税の負担率が低いのは、富裕層の所得の多くを占める株の配当や譲渡益が分離課税とされ、住民税を含めても20%と低い税率になっているからです。アメリカ(ニューヨーク市の場合)32.7%、ドイツ26.375%、フランス30%などと比べても低すぎます。株式配当については、少額の場合を除いては分離課税を認めず、総合累進課税を義務づけます。これによって、富裕層の配当所得には所得税・住民税の最高税率が適用されます。株式譲渡所得に対しては、当面分離課税としますが、高額部分には欧米なみの30%の税率を適用します。
所得税の最高税率を引下げ前の水準に戻します
所得税・住民税あわせた最高税率は、99年に65%から50%に下げられ、その後5%上がりましたが、現在55%となっています。これを元に戻し、富裕層(10万人前後)の課税所得3,000万円超の部分には、65%の税率を適用します。
「富裕税」の創設など資産課税を改革します
高額な株式や不動産などの資産を保有する富裕層に対して、毎年課税する仕組みの新しい資産課税として「富裕税」を創設します。中間層の負担増とならないよう、自宅用不動産や農地等には特例措置を講じたうえで、純資産で5億円を超える部分に低率で課税します。対象となるのは1,000人に1人程度の富裕層だけですが、株式資産などが増加しているもとで、1兆円以上の財源が見込めます。
相続税の最高税率は2003年に70%から50%に引き下げられ、現在は55%です。中間層の負担増にならないように基礎控除額を引き上げるなどの措置をとりつつ、最高税率を元に戻します。
為替取引税を創設します
多額の為替取引に対して低率で課税する「為替取引税」を創設します。東京外為市場の取引額は年間推計94兆ドル(19年)で、この21年間で3倍近くに増えています。投機マネーによる取引が増加しているからです。これに0.01%程度のごく低い税率で課税すれば、1兆円を超える税収になります。税率が低いので、通常の貿易や金融取引には影響がありませんが、短期間に多数回の取引を繰り返す投機マネーには負担となり、行き過ぎた投機の抑制にもつながります。
軍事費を大幅に削減します
自公政権のもとで、軍事費は9年連続で増額、7年連続で過去最多を更新しました。1機100億円以上のF35戦闘機100機以上もの購入を約束したのをはじめ、オスプレイ、滞空型無人機グローバルホークなど、アメリカの軍事企業の高額な兵器の「爆買い」が続いています。アメリカへの「思いやり予算」や米軍再編経費(あわせて年間4,000億円)を廃止し、正面装備費(毎年6,000億円前後)や自衛隊の海外活動予算などを大幅削減します。
大型開発中心の公共事業を、生活密着・安全対策優先に切り替えます
三大都市圏環状道路や国際コンテナ戦略港湾などの大型開発に多くの予算が使われています。リニア新幹線など、大型開発の浪費計画にも、財政投融資などによる公的資金注ぎ込まれています。こうした大型開発を削減し、生活密着型の事業や、老朽箇所の改修など安全対策優先に切り替えます。農業予算も公共事業中心から価格・所得補償中心に切り替えます。
福島第一原発の事故後も、国の原子力関係予算は減らず、4,000億円前後の高い水準を維持したままです。安全対策や除染対策などを除いて、原発推進の予算は全額削除して、再生可能エネルギーなどの予算に切り替えます。
暮らしの充実と財政危機打開の両立をはかります
税制や歳出の改革で財源を確保しながら、社会保障や教育予算の拡充をすすめれば、消費税増税にもたよらず、国債発行を今以上に大きく増やすこともありません。さらに、経済成長による税収増があれば、国債発行額を減らすことも可能になります。
もちろん、これだけでは、毎年の財政赤字をゼロにすることはできませんし、当面はコロナ対策のための国債増発が必要です。自公政権は、「骨太の方針」で「2025年度までに基礎的財政収支の黒字化」を目標にしていますが、これには反対です。そんなことを強行すれば、消費税の減税もできず、社会保障の削減がさらに進められて、暮らしも経済も破壊されてしまいます。財政は暮らしを支えるためにあるのであって、暮らしを犠牲にして財政をまもるというのは本末転倒です。
日本共産党は、消費税減税を実現し、社会保障や教育の財源を「消費税にたよらない別の道」で確保するため、国民の暮らしをまもり、日本経済の未来をひらくために奮闘します。