58、学術、科学・技術
官邸主導の軍事・イノベーション偏重から、「学問の自由」を保障する学術、科学・技術振興策に転換します
2021年10月
菅義偉前首相による日本学術会議会員候補者 6 名の任命拒否は、法の支配、学問の自由、基本的人権を侵害し、表現、言論、信教の自由の侵害にもつながる重大な問題です。違憲・違法の任命拒否を撤回し、その全容を解明し、こうしたことを二度と起こさない政府をつくる必要があります。
科学、技術は、国がその多面的な発展をうながす見地にたって、研究の自由を保障し、長期的視野からのつりあいのとれた振興をはかってこそ、社会の進歩にひろく貢献することができます。とりわけ、基礎研究は、目先の経済的利益につながらなくとも、科学、技術の全体が発展する根幹であり、ここにこそ国の十分な支援が必要です。基礎研究が枯れてしまえば、政府がいうイノベーション(新しい社会的価値や技術の創造)も望むことができません。
学術総動員体制づくりをやめ、科学、技術の多面的な発展をうながす
ところが、自民党政府は基礎研究を軽視し、目先の経済的利益につながる研究に集中投資するための「選択と集中」を推進してきました。科学技術基本法が制定された1995年以降、科学技術関係予算は、1.5倍になりましたが、増えたのは国が審査し、配分先を決める競争的資金です。予算に占める割合は6%から15%に2.5倍になりました。一方、公的研究機関の研究開発費は6%増にとどまり(2019年度)、国立大学の運営費交付金は04年の法人化後、約1,470億円を超えて削減されました。その結果、自然科学系の学術論文のうち注目度が高い上位10%の論文数の日本の順位は、20年前の4位から10位に後退し、研究力の低下に歯止めがかかりません。
自民・公明政権は、こうした失政を改めるどころか、科学技術基本法を改定し、研究機関と大学を財界の求める「科学技術イノベーション政策」に総動員するための体制をつくり、研究のあり方をさらに大きく歪めてきました。
大学・公的研究機関を軍事研究の下請け機関へ変質させる防衛省の「安全保障技術研究推進制度」を2015年に創設するなど、「海外で戦争する国づくり」の一環として、「軍学共同」の動きを急速に強めています。自民・公明政権が、学術界全体を国策に動員しようと介入を強める中で、その強権的体質があらわになったのが、日本学術会議への人事介入です。
日本共産党は、官邸主導による学術総動員体制づくりをやめさせ、科学、技術の多面的な発展をうながす振興策へと転換し、研究者が自由な発想でじっくりと研究にとりくめる環境をつくるために力をつくします。
日本共産党は提案します
日本学術会議の独立性を守り、「学問の自由」を保障します
日本学術会議は、科学者が軍事研究に総動員され、科学の独立を維持できなかった戦前・戦中の反省のもと、「わが国の平和的復興と人類の福祉増進」のために、日本の科学者を代表する国の機関として設立されました。これまで新型コロナ等の感染症対策やジェンダー平等、東日本大震災の被災者救援と復興、気候変動、環境対策、原発、エネルギーなど社会が直面するさまざまな課題について、科学者の英知を結集して、政府への的確な助言・提言を行ってきました。まさに、「科学者の社会的責任」を果たすための組織として、国民生活や権利の向上に貢献してきました。
ところが、自民党政府は、こうした科学的な助言・提言に耳を傾けず、政権に「従順」な審議会をつくるなどして、学術会議の影響を削ぎ、学術会議そのものの変質を策してきました。
菅政権に至っては、学術会議の人事に介入し、「科学者の社会的責任」を果たすうえでの要である独立性を奪おうとしました。自民党は、時の政府の「政策」を推進するための「シンクタンク」への変質を迫っています。
日本学術会議が独立性を失い、政権に忖度する組織に改編され、学問の自由が奪われるなら、科学は政治の下僕となります。そのことによって、国民に災厄がもたらされることは、科学を無視する安倍・菅政権が新型コロナ対策で失敗し、国民の命が危機にさらされていることからも明らかです。
日本学術会議会員の任命拒否を撤回させ、独立性を守り、予算・体制を充実―――違憲・違法の任命拒否を撤回させ、学術会議の独立性を守るとともに、任命拒否に至った全容を明らかにし、再発を防止します。日本学術会議の自主的改革を尊重し、予算や事務局体制を欧米のアカデミー並みに増額・充実させます。
ピア・レビューの尊重を厳守―――政府に批判的な研究者を「反日学者に科研費を与えるな」とバッシングするなど、右派勢力による教育や研究内容に対する介入が続いています。「学問の自由」への侵害であり、許されません。教育・研究・科学・文化・芸術の領域におけるピア・レビュー(専門家集団による公正な評価)を行政が尊重し、政治的な介入の影響を受けないように国会、地方議会での監視を続けます。
官邸主導から研究者の総意をいかした振興策に転換します
研究者の声を反映させ、官邸主導のイノベーション政策を抜本的に転換する―――研究力低下の本質は、研究者が自由な発想でじっくりと長期的視点に立って研究にとりくめる環境が急速に失われ、学術の裾野を形成する研究者の活動が弱まっていることにあります。大学教職員、女性研究者、ポスドクなどの任期付の若手研究者、専任非常勤講師、大学院生の声と実態を、国会に定期的・継続的に反映させます。研究者の自治が保障され、ボトムアップで政策が立案されるように、科学技術・イノベーション基本法や同基本計画、総合科学技術・イノベーション会議などを抜本的に見直します。内閣府の「司令塔」機能を廃止し、科学・技術政策を経済政策に従属させて、官邸主導で策定するやり方をあらためます。日本学術会議をはじめひろく学術団体の意見を尊重して、行政と学術界がコンセンサスを図れる場を作り、科学・技術の調和のとれた発展をはかれるように転換します。
イノベーション支援の重点を中小企業、地域に移す―――科学・技術の研究、開発、利用への国の支援は、非軍事とともに「公開、自主、民主」の原則にたっておこない、大企業優遇ではなく、平和と福祉、安全、環境保全、地域振興など、ひろく国民の利益のためになされるべきです。大企業のためのイノベーションから中小企業を中心にした多面的なイノベーション、地域に密着したイノベーションに支援の重点を移します。
科学・技術の総合的な振興計画を確立する―――国の科学技術関係予算の配分を全面的に見直し、人文・社会科学の役割を重視するとともに、基礎研究への支援を抜本的に強めます。また、防衛省の軍事研究費、高速炉開発など原発推進予算、大企業への技術開発補助金、戦略的イノベーション創造プログラムなどの露骨に大企業を支援する産学連携支援策など、不要・不急の予算を削減します。
研究者が自由に使える研究費(大学・研究機関が研究者に支給する経常的な研究費)を十分に保障するとともに、任期制の導入を抑え、安定した雇用を保障する制度を確立するなど、研究者の地位を向上させ、権利を保障します。欧米に比べても極端に少ない研究支援者を増員するとともに、その劣悪な待遇を改善します。そのためにも国立大学法人・独法研究機関の人件費を増額します。
「安全保障技術研究推進制度」を廃止し、科学・技術の軍事利用をやめさせる―――大学や公的研究機関に対する軍事機関(防衛省や米軍など)からの資金提供や研究協力をはじめ、科学・技術の軍事利用は、憲法の平和原則に反し、「学問の自由」を脅かすものであり、禁止すべきです。防衛省の「安全保障技術研究推進制度」を廃止し、偵察衛星など宇宙の軍事利用もやめさせます。科学・技術の研究開発は、非軍事・平和目的に限定し、その成果を暮らしと産業の発展のために広く活用します。軍事機密を理由にした研究成果の公開制限や秘密特許の導入に反対し、宇宙基本法や原子力基本法の「安全保障」条項を削除します。
国立の研究機関の雇用を安定化させ、長期的な基礎研究重視に転換します
国立や独立行政法人の研究機関は、国民生活の向上、産業振興、民間企業が担おうとしない基礎研究など、国民の要求にこたえる研究機関としての役割を発揮することが求められています。
ところが、自民党政治のもとで公務員削減がつづき、国民的、社会的に必要とされる分野が切り捨てられています。定員削減により国立感染症研究所の機能が弱体化してきたことは、その典型です。
さらに、安倍・菅政権のもとで、理事長などの役員人事への官邸の影響が強まり、軍事研究とイノベーション創出に偏重しています。
国立研究開発法人における防衛省「安全保障技術研究推進制度」の採択は、7研究機関のべ39件にのぼります。軍事研究の下請け機関へと変質する危険が強まっています。
国立研究開発法人では、国策にもとづいたプロジェクト研究を政府の都合で自由に編成できるように、非正規雇用が野放図に拡大しています。とりわけ国研で最大規模の理化学研究所は、8割弱が非正規雇用で、研究センターやプロジェクトチームの再編のたびに大規模な解雇や雇止めが横行しています。短期的な成果主義が蔓延し、優秀な研究者が米国、中国などの研究機関、企業に流出する事態が起きています。
国民生活、産業振興、基礎研究に係る重要な分野は研究者を増やし、正規雇用を基本にして、任期付き雇用は限定するべきです。
国立研究開発法人制度を見直す―――国立の研究機関の大半は、2001年に独立行政法人化され、国策にもとづくトップダウンが強まり、様々な問題が噴出しています。2015年に国立研究開発法人制度が導入されましたが、独法制度の枠内です。理化学研究所、産業技術総合研究所、物質・材料研究機構は、特定国立研究開発法人となりましたが、成果が上がる見込みのない場合は責任者を解任できるようにするなど、政府による統制を強化し、研究所の自主性・自律性を奪うものとなっています。国立研究開発法人制度全体を見直し、研究者が独創性・創造性を発揮できる研究環境をつくります。
有期雇用を限定し、無期雇用を基本にして、雇用を安定化させる―――欧州では、研究者も期間の定めのない労働契約が原則とされ、流動性は、研究者が専門家としての能力を高めるための手段として位置づけられています(欧州委員会「研究者採用行動規範」2005年)。政府は、「流動性を高めるため」として任期付き雇用を拡大してきましたが、雇用主の都合で研究者を「使い捨て」にできるようにするだけで有害です。人間の尊厳を傷つけるような雇用のあり方は一掃しなければなりません。有期雇用は限定し、欧州のように無期雇用を基本にするために、人件費を増額します。研究機関が期限のある国の資金でプロジェクト研究を行う場合に、その資金で有期雇用される研究者や職員を期限終了後も雇用するための国の財政支援を実施します。
雇止めをやめさせ、有期雇用の5年・10年経過後の無期転換を促進する―――無期転換権の発生を特例で10年に延長している有期雇用の研究者・職員が大量に雇止めとなる危険が1年半後に迫っていることを踏まえて、国に調査を実施させます。
有期雇用の職員、研究者に契約更新5年・10年の上限をあらかじめ求めることは労働契約法改正の趣旨に反する脱法行為であり、やめさせます。有期契約が反復されて5年経過した雇用を無期契約に転換した場合に、国が研究機関に対して財政支援する奨励制度をつくります。
筑波研究学園都市の研究施設整備をはかる―――「筑波研究学園都市」の発展をはかる見地から、研究者とりわけポスドクなど非正規雇用を含めた若手研究者が安心して研究に打ち込めるよう、「筑波研究学園都市建設法」にのっとり国の責任で研究施設の整備と宿舎の確保などの条件整備をすすめます。
博士・若手研究者の支援を充実させます
任期付き雇用を限定し、若手研究者の待遇改善をはかる―――ポスドクなどの若手研究者がいだく不安は、雇用の不安定です。大学教員、研究員の任期制は任期制法の廃止を含めた見直しを行い、任期付き雇用は限定し、欧州のように無期雇用を基本にします。大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合は、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに充実させ、期限終了後の雇用先の確保を予め義務づける制度を確立します。そのために必要な経費は国が責任をもちます。ポスドクの賃金の引き上げ、社会保険加入の拡大をはかります。
博士課程院生への経済支援を強化する―――政府は、今年1月の第3次補正予算で、博士課程院生への経済支援の対象を2割まで拡大しました。しかし、大学ファンドの運用益が出るまでのつなぎという位置づけで、対象も「破壊的イノベーション創出を目指す」分野に限定される懸念があります。不確実な運用益を当てにするのではなく、安定した予算で措置し、分野を限定せず、さらに拡充するべきです。大学院生に対する給付制奨学金を創設します。
博士が能力をいかし活躍できる多様な場を社会にひろげる―――公務員の大学院卒採用枠を新設し、学校の教員職や科学に関わる行政職、司書や学芸員などに博士を積極的に採用します。博士を派遣や期間社員で雇用する企業に対して正規職への採用を促すとともに、大企業に対して博士の採用枠の設定を求めるなど、社会的責任をはたさせます。
学術分野での性差別・ハラスメントをなくしジェンダー平等を推進します
学術分野でのジェンダー平等を推進することは、個人の尊厳が大切にされる社会をめざすうえでも、学術研究の発展を保障するうえでも大事な課題です。日本の研究者に占める女性の比率は16.2%、大学教員では24.8%(国立大学は17.2%)と世界のなかでも極めて低い水準にとどまっています。大学では昇格するにつれて女性の割合が低くなる一方、専業非常勤講師のような不安定雇用職では女性の割合が5割を超えるなど、女性研究者は男性に比して劣悪な地位におかれています。家事・育児・介護など「家庭への責任」の大部分を女性が担っていること、出産・育児期間後の研究への復帰が困難なこと、採用・昇進などで男性が優先されやすい評価体制など、女性にとって不利な条件は数多くあります。これらを解決し、大学・研究機関においてジェンダー平等と男女共同参画を抜本的に推進します。そのために、以下の政策を推進します。
① 大学・研究機関のなかで、ジェンダー平等や性差別についての教育、研修、啓もう活動を促し、性差に対する「無意識の偏見」を払拭していきます。女性差別撤廃条約が求める「家庭及び子の養育を男女及び社会全体が担うべき」という考え・意識をひろげます。
② 大学・研究機関が、教員、研究員、職員の採用、昇進にあたって女性の比率を高め、機関運営における意思決定過程に女性参画を拡大するなど、目標の設定、達成度の公開をふくめていっそう強めることを奨励・支援します。男女格差是正のための暫定的措置(ポジティブ・アクション又はアファーマティブ・アクション)の活用、ワーク・ライフ・バランスのとれた就業形態を推奨し、女性研究者のキャリア形成を支援するプログラムの形成も抜本的に増やします。
③ 大学・研究機関が、性差別やセクシャルハラスメント・アカデミックハラスメント・パワーハラスメントなどの人権侵害を防止する専門家を専任で配置し、苦情をうけた場合の公正な対応と懲戒の手続きを確立するよう支援を強めます。被害者が安全に通報でき、安心してカウンセリングを受けられる制度を確保できるようにします。
④ 大学・研究機関のなかで、女性差別やLGBTQ+(性的マイノリティ)差別をなくし、個人の尊厳とSOGI(性的指向・性自認)に関する多様性を尊重する環境をつくります。女性研究者へのメンタル面のサポート体制、LGBTQ+への相談・支援の態勢(就職活動支援や性についての専門相談員の配置など)をつくるとりくみを支援します。
⑤ 出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮や研究支援の充実、育児休業による不利益あつかいの禁止、育児支援資金の創設をはじめ休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関で働き・学ぶすべての者が利用できる保育施設の設置・充実など、研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備促進に力を尽くします。文科省が実施している女性研究者支援のための補助事業を大幅増額するとともに、採択枠を文系・理系を問わずすべての分野に拡大し、保育所の設置・運営なども経費負担に含めるなど現場の実情に即して柔軟に利用できる制度に改善します。非常勤講師やポスドクについても出産・育児にみあって採用期間を延長し、大学院生に出産・育児のための休学保障などの支援策をひろげます。
⑥ 医科大学での女子受験生の減点が問題になったことをふまえ、入試などでの女性差別を根絶します。女子学生、大学院生が生活や勉学・研究をしやすい環境整備を積極的に支援します。
⑦ 民間企業の研究者における女性の比率は9.6%でとくに低いことから、企業に対しては、研究・技術職に女性を積極的に採用すること、採用・昇進・昇格・仕事内容において性差別をしないことを求めるとともに、採用面接でのセクハラを禁止します。
公正で民主的な研究費配分を行い、研究における不正行為の根絶をはかります
科学・技術の振興に光をあてる―――政府は2019年度から「科学技術予算」が“過去最大になった”と宣伝しています。しかし、これは、①「科学技術を用いた新たな事業化」などの予算を2016年からさかのぼって集計する、②先進技術を活用した公共事業などを「イノベーション転換事業」として2018年度から計上する、二重のかさ上げによるものです。いずれも国際比較される政府研究開発予算には入らないものです。政府が発表する「科学技術予算」は、科学技術の事業化・活用に偏重し、海外とも過去とも比較できなくなっています。科学・技術の振興そのものに光をあてる予算編成に転換します。
科学研究費補助金を大幅に増額し、配分の偏りを是正する―――国が大学や研究者などに交付する競争的資金は、この10年余で倍増しましたが、大幅に増えたのは新技術に直結する研究への支援や、一部の大学への巨額の資金投入などです。一方で、基礎研究を支援する科学研究費補助金は、安倍政権以降2.5%増(2013年度比)の2,377億円(2021年度予算)にとどまっています。科学研究費補助金を大幅に増額し、採択率を抜本的に引きあげます。
また、研究費の配分がより公正で民主的になるように、審査のあり方を改革します。(1)人文・社会科学を冷遇したり、旧帝大系など一部の大学に集中したりするような資金配分の偏りを是正し、研究のすそ野を思いきってひろげます。(2)業績至上主義の審査ではなく、研究計画も十分考慮した審査に改めます。(3)科学者で常勤の審査員を大幅に増員し、将来性ある研究、萌芽的な研究を見極める「目利き」のある審査、公正な審査を充実させます。
過度の競争を是正し、研究における不正行為を根絶する―――研究における不正行為は、科学への社会の信頼を裏切る行為です。不正事例は、競争的資金の重点配分や任期制など競争的環境が強まった2000年前後から急増しています。不正の根絶をはかるために、科学者としての倫理規範の確立を促すとともに、不正の温床となっている業績至上主義とそれを助長する過度に競争的な政策をあらためます。大学・研究機関における外部資金の管理を厳格におこないます。
産学連携の健全な発展をうながします
産業と学術が連携し、協力しあうことは、互いの発展にとって有益なことです。同時に、福島原発事故で明るみにでた原子力産業と一部大学との癒着にみられるように、大企業の利潤追求に大学が追随するような連携は、大学本来の役割が弱められ、研究成果の秘匿や企業との癒着などの弊害がうまれるため、制限すべきです。
産学連携の健全な発展のために、国からの一方的な産学連携のおしつけでなく、大学の自主性を尊重し、基礎研究や教育など大学の本来の役割が犠牲にされないようにします。また、産学連携を推進する国の事業(共同研究への補助など)は、地域や地場産業の振興にも力を入れ、中小企業の技術力向上への支援を拡充します。
大学と企業との健全な関係をむすぶため、以下の点で国のきちんとしたガイドラインを作成します。(1)企業との共同研究の際、学会などでの研究成果の公開が原則として保障され、だれでもひろく使えるようにする。(2)共同研究や委託研究での相当額の間接経費や、共有特許での大学の「不実施補償」を、企業側が負うようにする。(3)企業から受け入れた資金は、大学の責任で管理、配分し、公開することを原則とし、研究者と企業との金銭上の癒着をつくらない。
以上