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日本共産党

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64、共謀罪廃止・盗聴法拡大・刑訴法「改正」問題

 

2021年10月

もの言う市民を監視し萎縮させる憲法違反の共謀罪は廃止を――特定秘密保護法、戦争法と一体に廃止を求めます

 共謀罪法案(組織的犯罪処罰法改正案)は、国会での審議が進めば進むほど、国内外から不安や懸念の声が広がる中、2017年6月15日、自民、公明が委員会の審議を無理矢理打ち切り、本会議での「中間報告」という〝禁じ手〟で強行成立させました。同年7月11日に同法は施行されています。

 我が国の刑法は、犯罪の既遂や未遂の処罰を原則とし、結果発生の危険性がある予備行為を例外的に処罰しています。共謀罪は、結果発生の危険性はない合意(話し合い)を処罰する点で、我が国の法体系と相容れないものです。

 安倍政権による特定秘密保護法や戦争法の強行と一体の「憲法破壊、戦争する国づくり」への暴走の一環であり、人々が何を考え、話し合っているか、警察権力が内心とプライバシーに踏み込んで監視し、介入し、処罰する憲法違反の治安立法です。日本共産党は共謀罪法の廃止を求めます。

共謀罪は何をしたら罪になるのかがまったくあいまいで、警察次第

 共謀罪は、「2人以上の者が話し合って犯罪を合意」し、「計画を実行するために準備行為をした場合」に処罰するものです。「準備行為」とは、「犯罪現場の下見をする」「犯罪実行のための資金を用意する」などであり、「花見や散歩」「ATMでお金を下ろす」といった日常行為と外見からは区別できず、警察次第で「準備行為」とみなされることになります。金田法相(当時)が「花見であれば、ビールや弁当を持っているのに対して、下見であれば、地図や双眼鏡、メモ帳などを持っている(2017年4月28日衆予算委)」などと答弁したように、「何をしたら罪になるのか」があいまいにされたまま、捜査機関が人々の話し合い、内心に深く踏み込んで捜査し、介入し、処罰するものです。

 ひとたび思想や内心を処罰する法律を作れば、その濫用に歯止めはかけられません。それは戦前、治安維持法の下、戦争に突き進んだ日本社会の痛苦の反省であり、共謀罪は、だからこそ定められた憲法19条(思想信条の自由)、21条(表現の自由、結社の自由)、31条(適正手続きの保障)を侵害する憲法違反です。

組織的犯罪集団といっても警察のさじ加減ひとつ

 政府は、環境保護団体や人権保護団体であっても、「隠れみの」なら共謀罪、組織的犯罪集団の構成員でなくても、関わり合いのある「周辺者」なら共謀罪、としています。隠れみのかどうか、周辺者かどうかは警察が判断するため、広く一般市民を日常的に監視することになります。2014年、岐阜県警大垣署による、共謀罪の先取りとも言える監視事件が明るみになりました。岐阜県警は、風力発電所に反対する市民運動を監視し、情報を中部電力子会社に流していながら、謝罪も反省もせず、「適正な業務の一環」と開き直っています。犯罪と無縁の市民が、警察のさじ加減一つでプライバシーをひそかに侵害され、なぜ調査対象になったかも分からないまま重大な人権侵害にさらされる危険があります。

国際人権条約に違反

 2017年5月18日、国連人権理事会が任命した特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は、「法的明確性の原則は、刑事的責任が法律の明確かつ正確な規定により限定されなければならないことを求め、もって何が法律で禁止される行為なのかについて合理的に認識できるようにし、不必要に禁止される行為の範囲が広がらないようにしています。現在の『共謀罪法案』は、抽象的かつ主観的な概念が極めて広く解釈され、法的な不透明性をもたらすことから、法的明確性の原則に適合しているようには見えません」、「捜査当局や安全保障機関、諜報機関の活動が適法であるか、または必要でも相当でもない手段によりプライバシーに関する権利を侵害する程度についての監督についても懸念があります。この懸念の中には、警察がGPS捜査や電子機器の使用の監視などの捜査のために監視の許可を求めてきた際の裁判所による監督と検証の質という問題が含まれます」と厳しく批判する書簡が安倍総理(当時)に届けられました。法案が国際人権基準に反するという厳しい指摘です。ところが、日本政府は、ケナタッチ氏から寄せられた質問に一切答えないまま、「強く抗議する」という問答無用の態度をとりました。これは、特別報告者と建設的な対話への協力を誓約した国連人権理事会の理事国としての国際公約違反です。

国際組織犯罪防止条約は共謀罪を必要不可欠としていない

 国連の「立法ガイド(2004年)第51項」は『もともと共謀罪や参加罪の概念を持っていなかった国が、それらを導入せずに組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることも条約上認められる』としています。国際組織犯罪防止条約は、犯罪人引き渡しや捜査共助の円滑化のため、加盟国同士で共通の犯罪を実質的に処罰可能としておくことを求めるものです。我が国は、凶器や銃器、麻薬等の所持そのものを禁止するなど、他国と異なる法体系で犯罪を予防し、世界有数の安全な国を実現しています。共謀罪の創設なくして条約を締結できたのは明らかです。

テロ対策は口実であり、国際組織犯罪防止条約はマフィア等の経済組織犯罪対策

 政府は、「(国際組織犯罪防止条約の)国内担保法を整備し、本条約を締結することができなければ、東京オリンピック・パラリンピックを開けないと言っても過言ではありません(2017年1月23日衆本会議・安倍首相(当時))」とし、2017年3月21日、「テロ等準備罪」と称して国会に提出しました。しかし、本条約はマフィアなどの国際的な経済組織犯罪の取締りを目的としたものであり、日本政府自身が、G7各国とともに、「テロリズムを本条約の対象とすべきでない」と主張していたのです。条約の国連立法ガイドを起草したニコス・パッサス教授(米国)は、「条約はイデオロギーに由来する犯罪のためではない、犯罪の目的について、金銭的利益その他の物質的利益を得ることとあえて入れているのはその表れだ」と指摘をしています。安倍政権が「テロ対策」というのは口実です。憲法違反の弾圧立法は絶対に許されません。

盗聴法拡大・部分録画・司法取引など刑事訴訟法改悪を許さず、撤回を求めます

 金田法相(当時)は、「テロ等準備罪の捜査、公判活動についても、他の犯罪と同様に、刑事訴訟法に基づいて適正に行われる(2017年4月28日衆法務委)」と答弁しました。これは、2016年に盗聴法を拡大し、司法取引などを導入した改悪刑事訴訟法を適用しようとするものです。

 日本共産党は、一般市民や団体の活動を盗聴したり、第三者の虚偽供述を利用して、「えん罪事件」をでっちあげることが可能になるなど、国民監視、憲法違反の治安立法であるとして断固反対しました。

 冤罪被害者救済を求める声を聞かず、政府は、2018年6月1日に司法取引、2019年6月1日に盗聴拡大と部分録画を次々施行する一方、証拠の全面開示や再審法の抜本改正は先送りし、検討状況すら『答えられない』としています。

警察による「盗聴の自由化」――盗聴法は廃止しかない

 盗聴の本質は、犯罪に無関係の通信をも根こそぎつかむ盗み聞きであり、憲法35条の令状主義、31条の適正手続きの保障を侵害する、明白な憲法違反です。盗聴拡大により、盗聴対象は窃盗、詐欺、恐喝、逮捕監禁、傷害等の一般刑法犯を含む極めて広範囲に拡大しました。このことは、広く一般市民が盗聴の対象となる危険があります。さらに、通信事業者の立ち会い義務を外すことにより、警察署内で第三者の監視もなく盗聴が可能になります。こうして得た情報は、共謀罪の捜査を含め、あらゆる警察活動に利用され、国民監視の社会に変質させる危険があります。この「盗聴の自由化」というべき拡大は、携帯電話、メール、SNS等をも対象とし、広く国民のプライバシーを侵害し、憲法21条2項通信の秘密、13条プライバシーの権利を著しく侵害する違憲立法に他なりません。盗聴法は廃止するしかありません。

冤罪を広げる日本版司法取引を廃止する

 日本版司法取引は、他人の罪を密告して、自分の罪を軽くしてもらう制度です。日本でもこれまで、他人の罪を語ることで、自分の罪を軽くしたいとの動機でウソの証言がされて、多数の冤罪が作り出されてきました。取引として制度化・合法化されると、「自分の罪を軽くしたい」という動機がこれまで以上に強く働き、捜査機関もそれを利用しようと考え、捜査が誤りやすくなります。しかも、証人の氏名等の秘匿措置が悪用されて、密告者の氏名住所を公判において被告人や弁護人に隠されれば、被告人の弁護が十分になされないまま判決に至る事態になりかねません。これでは、裁判においても冤罪を防ぐことがきわめて困難になります。また、共謀罪は、他に有力な物証がなくても、共犯者の供述のみで有罪とされかねない法律です。日本版司法取引と結びつくと、第三者によるウソの供述によって意図的に冤罪が作り出される危険があります。司法取引制度は百害あって一利なしです。このような冤罪を広げる危険なしくみは廃止すべきです。

部分的な録音録画を許さず、全事件全過程の例外無き取り調べの可視化を

 法改悪により、捜査官の判断で、取り調べの部分的な録音録画を可能にし、有罪立証のための実質証拠とすることが可能となりました。取り調べの録音録画は、憲法38条の黙秘権の実効性を保障するため、全事件の全過程を義務づけるのが当然です。ところが政府は、対象事件を裁判員対象事件と検察官独自捜査事件という、全事件のわずか3%に限定し、さらに、任意同行下での取り調べや、別件逮捕中の取り調べは、録音録画義務の対象にはならないとしています。これでは、違法な取り調べが抑止できないばかりか、逆に自白偏重の部分録画だけが証拠として重視されることになり、新たな冤罪を生み出すものです。

 日本共産党は、捜査機関の裁量による取り調べの可視化の例外を認めず、任意同行下での取り調べも含め、全事件、全過程の取り調べの可視化を実現するために力を尽くします。

公判中心主義にかなう刑事手続きに向けた抜本的な刑事司法改革を

 そもそも刑事司法改革の出発点は、足利事件、布川事件での自白強要、郵便不正事件(村木事件)での証拠改ざんなど、検察・警察による違法・不正な捜査が暴かれる中、我が国の刑事司法に問われてきた根本問題である冤罪を根絶するには、全事件、全過程の取り調べの可視化、検察の持つ証拠の全面開示などが不可欠であるとして始められたものです。

 布川事件をめぐる国賠訴訟において、2019年5月27日の東京地裁判決は警察官の取り調べについて、「虚偽の事実を伝えて自白させたほか、記憶喚起の限度を超えた誘導があった」として、違法と認定しました。検察官についても、弁護人から具体的な証拠の開示請求を受けた場合、合理的な理由がない限りは「開示義務を負う」と判示し、「結果に影響を与えた証拠を開示しなかったことは違法」と判示しました。控訴審である東京高裁は2021年8月27日、警察と検察が違法な取り調べを行う「共同の不法行為」があったとして約7,400万円の賠償を命じました。8月10日が上告期限でしたが、国と県は上告せず、判決は確定しました。検察と警察の違法な取り調べと証拠隠しは断じて許されません。

 また、裁判所の再審決定に対して、異議を唱える検察の抗告権は、冤罪事件で検察の道理のない抗告によって裁判が長引かされている実態があります。検察官の抗告権は、廃止しなければなりません。

 2019年5月20日には、冤罪の再発防止や被害者救済を求める「再審法改正をめざす市民の会」が結成されました。冤罪被害者や弁護士、支援者らが全面的な証拠開示、再審妨害(不服申し立て)の禁止など刑事再審法改正の必要性を訴えています。

 日本共産党は、再審段階でそれまで公判に提出されていなかった未提出証拠の開示ルールをつくること、再審開始決定に対する不服申し立てを禁止するなど、再審法の抜本改正を強く求めます。

 我が国に求められる刑事司法は、憲法に規定された公判中心主義にかなう刑事手続きであり、盗聴法、司法取引の廃止、留置施設での人権侵害や不当な扱い、違法不当な取調べの温床である代用監獄の廃止や、被疑者の長期拘禁を防ぐための起訴前保釈の導入、検察による証拠隠しを許さない証拠の全面開示、捜査機関の裁量による例外を認めない全事件、全過程の取り調べの可視化、取り調べに弁護人の立会いを認めるなど、冤罪を生み出す刑事司法の根本問題を徹底的に検証、究明した抜本的改革です。

 日本共産党は、国民のための司法・警察制度に改革します。

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