2011年11月2日(水)
亡国の政治に反対貫く
志位委員長が追及 衆院本会議
衆院本会議で1日、野田内閣の姿勢をただした日本共産党の志位和夫委員長の代表質問。復興増税、環太平洋連携協定(TPP)、普天間基地問題―三つの焦点での追及は―。
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TPP―四つの大問題
震災復興へ最大の妨げ
志位氏は、政府が交渉参加に突き進む環太平洋連携協定(TPP)について、四つの大問題をただしました。首相はどの問題でもまともに答えられず、TPP参加の大義のなさが浮き彫りになりました。
第一は、大震災からの復興への最大の妨げになることです。
志位氏は「TPPによる米価暴落で地域農業はつぶされる」「復興への気持ちがくじかれる」など被災地の声を突きつけ、「被災地の主要産業である農林水産業への打撃をどう考えるのか。いまなすべきはTPP参加ではなく、農林水産業のインフラ復旧に全力をあげることではないか」と追及しました。
首相は「農林漁業の再生は、TPPへの判断にかかわらず進めていく」と述べるだけでした。
食料の安定供給を壊す
第二は、食料の安定供給を土台から壊すことです。
農水省試算では「関税ゼロ」になれば、食料自給率は40%から13%に急落。志位氏は「自給率50%」に引き上げるとする政府の計画(昨年3月)と「どうやって両立できるのか」と追及。10月にうちだした農業「再生」計画で、今後5年で平均耕地面積を20〜30ヘクタールに「大規模化」するとしたことをあげ、たとえ20〜30ヘクタールにしたところで、平均200ヘクタールの米国、3000ヘクタールの豪州との競争は不可能だと指摘しました。
地球的規模で食糧危機と飢餓が広がるなか、「自給できる力を持ちながら、外国からの食料に頼ることは、世界にも顔向けできない行為だ」と迫りました。
首相は「高いレベルの経済連携と農林漁業の再生や食料自給率の向上との両立を実現することが重要だ」とごまかしました。
米国の要求 日本に強要
第三は、暮らしと経済のあらゆる分野が交渉対象とされ、米国の対日要求が強要されることです。
志位氏は、米通商代表部の報告書などに明記された対日要求で、食の安全、医療、官公需発注など幅広い分野について、規制緩和や米国企業の参入などを求めていることを示し(別表参照)、「交渉対象とならない保証はあるのか。一つでも『ノー』といえるものがあるのか」と迫りました。しかし、野田首相は「対応が求められる可能性は完全には否定できない」とのべ対日要求を否定できず、「ノー」といえるものも一つもあげられませんでした。
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内需縮小と衰退への道
第四は、TPPに参加すれば、「世界経済の成長を取り込む」(首相)ことができる保証があるのかという問題です。
志位氏は、日本にとってTPPは「例外なしの関税撤廃を原則とする日米FTA(自由貿易協定)締結と同じことだ」と指摘。それがもたらすのはアメリカへの輸出ではなく、一方的な輸入拡大と失業者の増大であり、家計と内需の縮小がいっそう深刻になると強調しました。そして、「成長を取り込むどころか、アメリカの対日輸出戦略に日本が取り込まれるのが真実の姿だ」とのべ、「亡国の政治には断固反対を貫く」と力を込めました。
それに対し、首相は、まともに答弁できなかったにもかかわらず「早期に結論を出す」と交渉参加への意欲をにじませました。
復興財源
庶民増税は法人減税で消え財源は1円も生まれない
「復興のための財源は1円も生まれず、借金が増えるだけ」―。志位氏はこう述べ、“庶民には増税、大企業には減税”という逆立ちした復興財源を批判しました。
志位氏は、政府・与党案では15年間で庶民には11・2兆円の増税を押し付ける一方、大企業には「課税ベースの拡大」を含めても12兆円の法人減税を実施する内容になっていると指摘(図)。「庶民増税は大企業減税の財源づくりが目的だ」と迫りました。
首相は、指摘には答えられず、「復旧・復興のための時限的な税制措置と恒久的な税制措置は分けてとらえるべきもの」とごまかしました。
志位氏は、一般の復興財源と原発災害対策の財源を立て分けて確保するよう提案。復興財源は歳出・歳入の見直しなどにより15年間で約30兆円を確保できると提起しました。また、原発災害対策の財源は「原発積立金(19兆円まで積み立て予定)」の活用などを行うよう求め、「古い枠組みを聖域なく見直し、大胆に財源を確保する姿勢が強く求められる」と強調しました。
首相は、復興財源については古い政治の枠組みに切り込む姿勢をみせませんでしたが、原発積立金については「活用の是非」を検討する姿勢を示しました。
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普天間基地
歴史の累積を認識してるか
政府は、米軍普天間基地に代わる新基地建設にむけ、年内に「環境影響評価書」を沖縄県に提出する計画です。志位氏は、「『県内移設反対』の沖縄県民の総意を無視し、県民の頭ごしに進めようという強権的姿勢だ」と批判。「『日米同盟』のためなら手段を選ばぬ『強権国家』」の批判にどう答えるのかとただしました。
野田首相は、「現在の日米合意は現状に比べると沖縄の大きな負担軽減につながる」などと開き直り、沖縄に負担を押し付ける姿勢をみせました。
志位氏は「県内移設反対」の県民総意の根源には、戦後66年にわたる重い歴史の累積があると強調。米軍基地が国際法も無視してつくられ、“銃剣とブルドーザー”で拡張された歴史、その後も6歳の少女が暴行され殺された“由美子ちゃん事件”など県民の心に刻まれている数々の事件・事故――志位氏はこうした事実を示し、「新基地をつくることは許さないとの総意は、こうした歴史の痛みと苦しみの累積の上につくられたものだ。そういう認識が少しでもあるなら、アメリカに命じられたまま使い走りのように新基地を押し付けることなど愚かな行動はとれないはずだ」と迫りました。
野田首相は、「基地の形成過程についてはさまざまな議論がある」とのべ、国際法違反との指摘を否定できなかったものの、新基地建設に固執し、沖縄県民の痛みを感じない冷たい姿勢をみせました。
志位氏は、「解決する道は一つしかない」と指摘。辺野古「移設」の日米合意を白紙に戻し、普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と交渉することを強く求めました。