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2011年11月11日(金)

TPP表明持ち越し

民主党内で矛盾拡大

「戦々恐々」「突き上げ受けてる」

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 「1日ゆっくり考えさせてほしい」。政府・民主党三役会議で、10日の会見で予定していた環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加についての表明を突如延期する考えを示した野田佳彦首相。その背景には、急速に広がる反対世論を反映して、党内でも「反対」や「慎重」論が拡大するなど、国民との重大な矛盾があります。

 国会周辺では、農業生産者らが連日徹夜の座り込みを敢行。8日にはJA全中などの農業団体や消費者団体などが東京・両国国技館で6000人規模の国民集会を開き、日本共産党の志位和夫委員長はじめ超党派の国会議員が応援に駆けつけるなど、TPP交渉参加反対の国民世論は大きな盛り上がりを見せています。

 9日夜開かれた民主党の経済連携プロジェクトチーム(PT)の総会でも、「みんな戦々恐々としています。どうやって説明すればいいのか」「地元で“この国の行く末がどうなるのか”という不安が出ている」「私たちは地域から突き上げを受けている」など、反対世論に押された発言が続出します。

 なかには「国民の9割がTPPとは何かわからない状況のなかで、これに突っ込んでいくのは不誠実だ」との声もありました。

 同PTの役員会は、「時期尚早・表明すべきではない」という発言が「多かった」として、政府に「慎重に判断」するよう求める「提言」を総会に提案せざるをえなくなりました。

 総会は提言を一部修正のうえ全会一致で採択。「慎重対応」を求めた議員たちは、国会周辺の路上で深夜の座り込みを続ける農業者に“成果”を誇りましたが、「なんで断固反対すると書き込めなかったのか」という声を浴びました。「慎重」では納得しない世論の高まりが、野田政権や同党議員らの想像をはるかに超えていることを示した瞬間でした。

 10月4日から23回にわたったPT総会では、延べ500人以上が発言したとされます。「9割近く」が反対や慎重対応の意見で占められました。賛否を明らかにしていなかった議員からも、「反対で(腹が)固まってきた」の声が出始めるほどでした。

 また、TPPをめぐる対米交渉の開始の90日前までに米政府が連邦議会に通告する必要があるだけでなく、それ以前に連邦議会側との事前協議の期間が必要だという外務省の内部文書の存在も明らかに。志位委員長が1日の衆院代表質問で、「混合診療」の「全面解禁」が迫られていると追及すると、PT提出資料に政府が「全面解禁」の可能性は「排除されない」とする項目をこっそり追加。PT総会では、政府に対する不信感をぶつける場面も相次ぎました。

 野田首相は11日にも交渉参加を表明する姿勢です。しかし、党内合意を受けて外遊前に参加を表明しようという野田首相の当初のもくろみは、アジア太平洋経済協力会議(APEC)出席前に早くもつまずいたことはたしかです。 (林信誠)


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